BROKEN's Advanced Vehicle Laboratory

3rd ROBO-ONE リポート

6.第3回大会の技術動向

ここでは第3回大会の技術動向について見てみましょう。

出場者数 / エントリー数

まずはエントリー数と出場者数の変遷についてです。これまでの大会毎のエントリー数、出場者数、出場率は表1のとおりです。

表1 出場者数
エントリー数 出場者数 出場率
第1回 38 29 76.3
第2回 72 50 69.4
第3回 93 56 60.2

表1をみると、エントリー数が毎回+30台のスピードで増えていることがわかります。しかし、エントリーした人が全員無事出場できているわけではなく、大会までにロボットの開発が間に合わず出場を断念した人もいます。

エントリーした中で予選に出場できた人の割合を出場率として見ると、エントリー数が伸びるにしたがって出場率が落ちており、第3回大会ではエントリーした人の6割しか予選に出られなかったことがわかります。これは、ROBO-ONEの魅力に引っ張られてロボット作りをまったく経験したことのない人が多数応募していることを意味しているのではないでしょうか。

しかし、初心者が増えたからといって大会のレベルが下がったわけではありません。出場者数が確実に増えていますし、第1回では歩行できなくても予選を突破してしまっていたのが、今回(第3回)は予選で(私が数えた限りでは)28台が歩行できています。これは出場するロボットの半分はまともに歩けることを意味し、もはや歩くだけでは予選突破はできなくなったことがわかります。

予選順位と決勝トーナメントの成績の関係

では、どれくらいのことができたら予選が突破できるのでしょうか。また、予選でどれくらいの点数を取れていれば決勝で良い成績を残せるのでしょうか。次はそれを見てみましょう。

表2に今大会予選の最高得点、最低得点、平均点、中央値、予選突破最低得点を、また、予選得点の度数分布を右グラフに示します。
表2 予選得点
最高得点 475
最低得点 28
平均得点 227
中央値 222
予選突破最低得点 321

 まず、表2を見ると予選突破最低得点が321点になっています。これは18位のAAR-2の得点までを予選突破としています。予選1位は今回も吉村さんのR-Blueで、5人の審査員がほぼ満点に近い点数を与えていたことがわかります。 予選での評価項目と得点配分は開会式の時に口頭で説明がありました。これをメモできなかったため正確なことはわかりませんが、確か、歩行、屈伸、横歩きで100点中の60点になっていたように記憶しています。審査員が5人いて各自持ち点が100点ずつですから、歩行、屈伸、横歩きが満足にできて60x5=300点となります。これにデザイン点、技術点、新技などのおまけをつけて、ようやくを予選突破できる計算になります。 繰り返しますが、今回は予選を突破するには歩行(5歩)、屈伸、横歩きができていることが必須条件だったようです。

つづいて予選得点の度数分布のグラフを見てみましょう。大きな傾向として、大きな山が2つあることがわかります。1つ目の山は50〜100点の区間で、2つ目の山は300〜350点の区間です。1つ目の山は、大会までにロボットが完成しなかったがロボットは持ってきてお披露目をした、無理を承知でリングにあげたけどやっぱり歩かなかった、のどちらかでしょう。もしかすると、完成させてもってきたのに無線の調子がどうにも悪くて身動き一つしてくれなかった人もいるかもしれません。事実、Petapy APは予選得点こそ100点に満たない点数ですが、ROBO-ONE Doorでは堂々たる歩行を見せてくれました。 2つ目の山は予選突破予備軍で、歩行、屈伸、横歩きはやったつもりだけれど、いまいち評価が低くて予選を突破できなかったグループといったところではないでしょうか。 今後の予選得点分布は、予選突破予備軍を中心とした分布と歩行できなかったグループを中心とした分布の重ねあわせになっていくのではないかと予想しています。

無線について

ROBO-ONEではルールで「ロボットを手動操縦する場合は、無線操縦とする」と定めています。 第1回大会では赤外線リモコンによる操縦を試みた多くのロボットが、スポットライトやフラッシュ撮影の影響で操縦不能に陥ってしました。 そのせいか、今大会では赤外線をつかって操縦するロボットは(私が見た限りでは)まったく見られず、多くのロボットが微弱無線を利用していました。

今大会では、(数は把握していませんが)多くのロボットがこの無線によるトラブルに悩まされました。最もトラブルが深刻だったのは、アイオーデータのWNA-RS(x2)(2.4GHz帯)を使用していたロボットのようです。多くのロボットが同じデバイスを使用したため、事前に大会事務局側で周波数管理を行なわない状態では混信が生じやすく、ロボットがまったく動かないということが続出したようです。最も入手が容易であったWNA-RSが3チャンネルしかもっていなかったことがトラブルの要因だったのではないでしょうか。

予選での悲劇を繰り返さないよう、決勝トーナメントでは事務局側が控え室で全選手に使用している無線の種類と周波数の調査を行い、周波数管理を行ないました。おかげで、決勝トーナメントでは無線のトラブルは少なくなっていました。(原因が無線かどうかは不明なトラブルはありましたが)

しかし、今回2.4GHz帯で起きたトラブルが、周波数管理をすれば解決するとは思えません。なぜなら、まったく同じデバイスでなくても、近くでIEEE802.11b準拠の無線LAN(2.4Ghz帯)を使用している人がいれば混信する可能性があるわけです。 解決方法として事務局側が周波数管理を行なうのはもちろんですが、参加者側も(多少入手性の悪いデバイスになるかもしれませんが)チャンネル数の多いデバイスを選択するよう心がける必要があるでしょう。 この無線に関する問題についてはROBO-ONE公式ページのBBSでも議論されていますので、今後ROBO-ONEに参加する予定の方はぜひ目を通しておくことをお勧めします。

ちなみに、ラジコンで使用される27MHz帯、40MHz帯で混信したロボットはなかったようです。

操縦方法について

今度はロボットの操縦方法について見てみましょう。 ROBO-ONEに出場するロボットは、自律型でも操縦型でもどちらでもよいことになっていますが、第1回大会から通していまのところ100%操縦によってロボットが動いています。この操縦方法の主なものをまとめると、表3のようになります。

表3 操縦方法
A:完全ラジコン操縦方式 ラジコンプロポ -> -> 無線通信 -> マイコン -> ラジコンサーボ
B:プロポによるコマンド送信方式
C:PCによるコマンド送信方式 PC ->
D:ゲームコントローラによる
  コマンド送信方式
ゲーム用コントローラ -> PC
E:マスタースレーブ方式 マスターアーム -> マイコン
注1 赤外線リモコンによるコマンド送信方式と、音声入力によるコマンド送信方式は、今大会では使用されていません。
注2 これが全てという訳ではありません。

A,B,C,Dの操縦方式は第1回大会から見られましたが、今回、Eのマスタースレーブ方式が新たに登場しました。マスタースレーブ方式による操縦が採用されたのは、滝沢さんのAdamant-3rd (No.60) と、津藤さんの剛王丸 II (No.31)の2台で、予選では(規定演技はもちろん安定してこなした上で)新しい技術が評価され、それぞれ382点、389点と高い評価を受けています。

ここで、それぞれの操縦方式の長所と短所について考えて見ましょう。まずはAの完全ラジコン操縦方式からです。

Aの完全ラジコン操縦方式は、人間がラジコンプロポで操作した分に比例してロボットの関節が動作する操縦方式で、ロボットの強さはほぼ操縦者のテクニックによって決まります。すばやい動きが可能になる反面、操縦者が操作を間違えればロボットは簡単に転びます。また、プロポ操作でコントロールできる関節数には上限がありますから、完全ラジコン操縦方式をとったロボットは関節数が比較的少ない構成になるようです。マイコン制御は敷居が高いとおもっている方にお勧めの操縦方式です。

ラジコンプロポでMetallic Fighterにコマンドを送る森永さん

Bのプロポによるコマンド送信方式は、ラジコンプロポのスティック操作の組み合わせによりロボットに対して動作コマンドを指令する方式です。森永さんのMetallic Fighterはこの方式で操縦されています。(第1回ROBO-ONE conference で森永さんからこの方式の説明がありました。) PCを使ってロボットの制御を行なおうとすると、PCの立ち上げに時間がかかって試合進行を遅らせてしまったり、コマンド送信時に手元を見てしまってコマンドを出すべきタイミングをはずしてしまったりします。 しかし、プロポによるコマンド送信方式を用いれば、立ち上がりも瞬時に終わり、コマンド送信もプロポ操作ですばやく行なうことが可能となり、堅牢で応答の速いシステムを構築することが可能となります。 ただし、プロポ操作に割り当てた操縦コマンドを覚えていなければすばやい操作はできませんから、操縦の練習は欠かせません。

CのPCによるコマンド送信方式は、PCのキーボード操作やマウス操作によって選択された操作コマンドをロボットに送り、マイコンがこれを受けて動作を行なう操作方式です。数を把握していないのではっきりとはいえませんが、この方式を採用しているロボットが最も多いのではないでしょうか。 大越さんのPetapyはこの方式で操縦されています。 コマンドの作り方はいろいろありますが、最もシンプルな方法はPC側に一連の動作に必要なモーションデータを用意しておき、必要に応じてロボットにモーションデータを送信する方法でしょう。 この方法をとれば、ロボットに搭載するマイコンにかかる負担が小さくて済みますから、制作費を抑えることができます。 もう少し高度な方法では、前進後退、旋回、パンチなどをコマンドとしてロボットに送り、ロボットに搭載したマイコンでコマンドを解釈する方法です。 この方法をとれば、将来ゲームコントローラに切り替えるなど、システム構成を変更するときに柔軟に対応できるでしょう。

Dのゲームコントローラによるコマンド送信方式は、Cの方式をもっと直感的に操縦できるように改良したものです。ゲームのコントローラの仕様がどのようになっているのか私は知らないので、簡単なのか難しいのかわかりませんが、今大会をみていてこの方式でロボットを操縦している人を結構見かけたので、ネットで調べるか、コントローラをばらしてリバースエンジニアリングするかすれば、なんとかなることなのでしょう。この方式なら、TVゲームの中でロボットを操縦しているのと同じ要領でロボットを操縦できていいかもしれません。

いよいよDのマスタースレーブ方式です。この方式は、マスターアームを人間が手で動かすと、スレーブアーム(ロボットの腕)がマスターアームとまったく同じ動きをするという操縦方式です。 下半身の動きはマスタースレーブに入っていません。 今大会でマスタースレーブ方式を採用したAdamantも剛王丸も、下半身の動きは指先のボタンおよびアナログコントローラでコマンドを出していました。 上記のB,C,Dの方式はいずれも上半身の動きをコマンドで作りますが、そうするとロボット同士の殴り合いの微妙なタイミングやパンチの軌道をうまくコントロールできません。細かい軌道修正が瞬時にできないので、なかなかパンチがあたってくれないのが実情です。それに対してマスタースレーブ方式では、操縦者が目で見て当たるように常にアームの動きをコントロールできるので、微妙な位置あわせや狙い通りのタイミングでのパンチが可能になります。(わずかながらタイムラグはありますが。) しかし、マスタースレーブ方式も良いところばかりではなく、マスターアーを装着する必要がるため、操縦者側の装備が煩雑になってしまったり、よほどしっかりした歩行ができないと上半身の動きで歩行が乱れて転倒する危険性もはらんでいます。

剛王丸IIの製作者、津藤さん。救命胴衣のようなベストにマスターアームがついている。電源は外部供給。決勝トーナメントでは優勝したA-Doに敗れてベスト8。 Adamant-3rdの製作者、滝沢さん。マスターアームは腰で止めてある。最終成績は堂々の第3位。

総括してみると、手っ取り早く動くものを作りたければAかCの方式、戦況を見ながらタイミングよくコマンドを発したいのであればBかD、ROBO-ONE Doorに参加することを予定しているならEの方式を選択するのがよいのではないでしょうか。

バッテリについて

ロボットを自立させるためにはバッテリが必要不可欠です。 出場したみなさんが、どんな電池で、どれくらいの電圧、容量のものを使用していたのか、充電はどうしていたのか、予備のバッテリは何本用意したのか、非常に興味のあるところです。 ここでは、私が見聞きした範囲で書いてみます。

まず、バッテリの電圧ですが、3名ほどの出場者の方に聞いてみたところニッケル水素電池で4.8V, 6V, 7.2Vという回答をもらいました。容量は650mAhから8000mAhまで極端に幅が広く、この極端な容量は私が聞いた人(のロボット)だけだろうなぁと推測しています。バッテリ容量を抑えることが出来れば電池の数が少なくて済みますから、機体の全備重量を減らすことが出来ます。しかし、減らしすぎるとスタミナ切れを起こしやすくなり、場合によっては最も電流が必要となる起き上がりができなくなる可能性があります。 1パックあたりの容量を減らして1ラウンド毎に交換するという手もありますが、バッテリの充電も頻繁に行う必要がでてきます。ニッケル水素電池の場合、1C充電で急速充電しても満充電までに1時間半はかかりますから、4本充電するには6時間かかることになります。 ですから、充電器を複数個用意してバッテリを複数個同時に充電するようなことをしなければ、決勝トーナメントでは充電がまにあわなくなる危険性があります。(2C充電で1時間で済ませた人もいるようですが、温度管理をしっかりやらないと危険ですよね。ラジコンの世界ではニッカド電池で3C充電をするとパンチが効いたよい充電が出来るんだとか・・・)

(注) C = (定格容量)/(1h)。 たとえば、定格容量が1600mAhの電池で「2C放電が可能」と言った場合、「この電池は3200mAの電流を放電する能力がある」という意味。

バッテリ充電器は多くの出場者がラジコン用の充放電器(YOKOMO YZ-144 A/D とかラジコンショップで市販されているもの)や、秋月のキットを使用していました。急速充電には比較的大きな電流(たとえば、1800mAhの電池を1C充電するなら1.8Aとか)が必要になるため、選手控え室に用意してある100V のAC電源で(PCや半田ごてもあるので)同じ延長ケーブルを数人で使う場合には、電流が延長ケーブルの許容量を超えないように気をつける必要があります。また、急速充電器の中には13VのDC電源を必要とするものもあります。この手の急速充電器を使用する場合は、自動車用のバッテリを自前で用意する必要があります。

バッテリはロボットの力の源です。同時に、単品で最も重い部品でもあります。ロボット全体で消費電力がどれくらいか、ピーク時に消費される電流がどれくらいになるか、何分間持てばよいか、どうやって充電するか、充電にかかる時間はどれくらいか、バッテリを何本用意するかなど、トータルで考えて準備をするとよいでしょう。

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