ENGINE
前項へ目次へHOME へ次項へ


動弁機構の変更検討・加工
EJ20H 前期

 EJ20H 前期型のエンジンは、バルブクリアランス調整にダイレクトプッシュ型 HLA を使用している。  メンテナンスや静粛性を考えればベターなのだろうが、高回転時におけるバルブの追従性等を考えるとソリッド調整式に変更したほうが良い。  そもそも 8000[rpm] 以上回そうとするエンジンに HLA は重過ぎる。
 また、バルブ自体も中実で重い上、熱的にも問題がありそうなので、EJ20KEJ20R 用の中空 (ナトリウム封入) バルブを使用したい所である。
 カムシャフトも、社外のハイリフト・大動作角のものとは言わないが、最低限、ソリッド調整式用のプロフィールを持つ物に変更しなければならない・・・・HLA 用のものとは開き始め・閉じ終わりのカーブが異なり、そのまま使用するとバルブ周りに悪影響が出る可能性がある。  まぁ悪影響には目を瞑るにしても、バルブクリアランス分リフト量が減るのには我慢ができない。

 以上の事を考慮して、動弁機構を変更するための検討を行なった・・・・使用部品等、結論が出るまでの過程については [掲示板] 上での、北海道の 「まこと」 氏とのやり取りを参照していただきたい。  氏の協力なしには導き出されなかった結論である。

変更検討

HLA - 10.3[KB] HLA 重量測定 - 21.7[KB]  EJ20H 前期型ヘッドの HLA を廃止する場合に最も簡単な方法は、GC8EJ20G RA 用ヘッドの機構をそのまま移植する事である・・・・が、この方法はコストがかかる。
 インテークバルブが一本 \4,480、エキゾーストバルブが一本 \4,840、バルブクリアランス調整シムが一個 \3,390 である。
 バルブはしかたがないとしても、バルブクリアランス調整シムの値段が高いのは困る。  一つだけシムを購入し、何度もカムシャフトを付け外ししてクリアランスを測定するのは、カムキャップボルトをスタッドタイプに変更したとしてもやりたくない作業である。
 こうなったら他社パーツで使えそうなものを探すか、バルブクリアランス調整シムを作るか、ソリッド化をあきらめて STI バージョン用の HLA で我慢するか・・・・と考えていたところ北海道のまこと氏から、「EJ20K のインナーシムタイプの物はリテーナにシムが収まる形状になっていてシムも安い。 もし EJ20G 用のリフタに入るなら使えるかも」 といった情報をもらった。

バルブ周辺パーツ - 21.9[KB]  バルブ周りの部品を仕入れて調べたところ、GC8EJ20G RA 用のバルブリフタ、EJ20K (EJ20R) 用のバルブ、EJ20K STI (EJ22G) 用のバルブクリアランス調整シム・バルブスプリングリテーナ・バルブスプリング等を使えば、未加工では済まないにせよどうにかなる事が判明した。
 また、この組み合わせならインテークバルブが一本 \4,070、エキゾーストバルブが一本 \4,400、バルブクリアランス調整シムが一個 \410 となり、バルブの値段はそれほど変わらないもののバルブクリアランス調整シムの値段が大幅に安くなるため、金銭的負担がかなり小さくなる。
バルブリフタ - 10.7[KB]  しかし、「未加工では済まない」 と書いた通り、バルブリフタ上面の肉厚が EJ20K STI 用の物に比べて 1[mm] 程厚いため、バルブリフタを加工しないと一番薄いバルブクリアランス調整シムを使用してもバルブが閉じない事になる・・・・耐磨耗性や強度を考えるとバルブリフタの加工は避けたいのが正直なところである。
 ちなみに、EJ20H 前期型ヘッドに使用できるソリッド調整用のバルブリフタは、その直径の関係から GC8EJ20G RA 用のものだけである・・・・それ以降のものは使用できない。
 バルブリフタの直径は、EJ20H 前期型用が 30[mm]EJ20H 後期型・EJ20REJ20K 用が 33[mm]EJ207EJ208 用が 35[mm] となっている。

EJ20K STI 用バルブスプリングリテーナ - 9.4[KB] バルブ (EJ207・EJ20K) - 13.0[KB]  「バルブリフタを加工した後、表面処理で強度を出すか・・・・」 などと考えていた時に EJ207 のパーツを手に入れたのだが、バルブを見るとバルブコッタ上の長さが EJ20K 用の物より 2[mm] 程短い。
 当然の事ながらバルブのセット長も短くなるのでバルブリフタを加工しなくてもバルブクリアランスが取れる計算になる。  また、幸いにもバルブコッタ下の長さはほとんど同じなので、バルブスプリング等は EJ20K STI の物が使用できる。

 問題はバルブコッタ上の長さが短くなった分、バルブクリアランス調整シムがバルブスプリングリテーナに潜ってしまう事であるが、バルブスプリングリテーナのバルブスプリングが当たる部分の肉厚は 4.5[mm] もあり、また、バルブクリアランス調整シムが入る部分の深さも充分にあるのでバルブスプリングリテーナの加工に問題は無いと判断し、EJ207 用のバルブを使用して組む事にする。
 まぁ、すでに手元にあるのでチェックして使えないバルブを買い足すだけなのだが、インテークバルブが一本 \1,970、エキゾーストバルブが一本 \2,530 となっており、仮に新品で揃えるとしても、EJ20K 用のバルブを購入するより大幅に安く済むのは嬉しい事である。

 カムシャフトについては、EJ20H 前期型ヘッドに使用できる純正品中、動作角とリフト量が最も大きな EJ20K 前期型 (EJ20R 前期型も同じ) の物が入手できたのでそれを使用する。
 動作角 [deg] とリフト量 [mm] は、インテーク側 246 - 8.2、エキゾースト側 248 - 8.3 となり、それぞれ 6 - 0.68 - 0.7 の増加となる・・・・この程度の増加なら、ヘッド側にカムノーズ部分の逃げ加工を行なう必要はないと思われる。

 一応、使用部品が決まったので部品表、及び、重量対比表を掲載する。  なお、重量対比表において、バルブスプリングの重量については 1/3 が実効値となるのでそれを、バルブクリアランス調整シムの重量については 2.00[mm] 厚の物を、また、バルブスプリングリテーナについては加工済みの物の重量を記載している。
 また、重量測定には [島津製作所] の電子天秤、[BL2200H] を使用した・・・・こんな十万円近い高価な秤を購入する財力はないので当然のことながら借り物である。
 おかげで、普段使用している [タニタ] の電子式クッキングスケールが、グラム単位でならそこそこ正しい事も判明した・・・・No.1140 という 0500[g] の分解能が 1[g]、〜 1000[g] までの分解能が 2[g] の製品だが、オンラインカタログには記載されていない。

部品表
部品名
品番
単価
備考
インテークバルブ
13201AA510
\1,970
EJ207
エキゾーストバルブ
13202AA520
\2,530
EJ207
バルブリフタ
13228AA000
\1,760
EJ20G RA
バルブクリアランス調整シム
13218AD***
\410
EJ20K STI (EJ22G)
バルブスプリングリテーナ
13209AA081
\230
EJ20K STI、要加工
バルブスプリング
13217AA160
\310
EJ20K STI
バルブスプリングシート
13227AA050
\60
EJ20K
カムシャフト、インテーク右
13032AA240
\20,500
EJ20K (EJ20R) 前期
カムシャフト、インテーク左
13038AA240
\21,500
EJ20K (EJ20R) 前期
カムシャフト、エキゾースト右
13035AA240
\20,500
EJ20K (EJ20R) 前期
カムシャフト、エキゾースト左
13053AA240
\21,500
EJ20K (EJ20R) 前期

重量対比表
部品名
変更前
変更後
重量差
インテークバルブ
48.3[g]
47.8[g]
- 0.5[g]
エキゾーストバルブ
48.3[g]
46.6[g]
- 1.7[g]
バルブリフタ (HLA)
53.8[g]
30.0[g]
- 23.8[g]
バルブクリアランス調整シム
-----
1.6[g]
+ 1.6[g]
バルブスプリングリテーナ
11.5[g]
12.1[g]
+ 0.6[g]
バルブスプリング (1/3)
10.3[g]
15.7[g]
+ 5.4[g]
合計
172.2[g]
153.8[g]
- 18.4[g]

バルブリフタの加工

バルブリフタ (未加工) - 11.0[KB] 傷取り - 14.0[KB]  バルブリフタ上面 (カムノーズとの接触部分) は、フリクション低減のために鏡面加工を施す。  切削痕が深めなので、まずは 8001000 番程度のサンドペーパで傷を取る。  次に、定盤上にコンパウンドを塗布したコピー用紙を敷いて鏡面仕上げを行なう。
バルブリフタ (加工済) - 14.5[KB] 鏡面加工中 - 13.5[KB]  この、コピー用紙を使用する方法は掲示板常連の 「ナオキ」 氏に教わったのだが、平面度を損なう事なく簡単に磨ける・・・・使用する定盤は、本物の定盤よりも 「プライベータの定盤」 として定着している (であろう) 厚ガラス板の方が使いやすいかもしれない。

面取り部分 - 8.5[KB] 曲面仕上げ - 8.0[KB]  また、バルブリフタ側面の上部と下部は面取りがしてあるのだが、かじり防止のためにサンドペーパとコンパウンドを使用して面取りの角を落とし、滑らかな曲面に仕上げる。
 側面自体も、その寸法が変わらない程度に磨くのは無駄ではないと考え、コンパウンドを使用して磨き上げた。

カムシャフトの加工

カムシャフト - 15.8[KB]  カムシャフトの加工・・・・と言っても大げさなものではない。  曲がりをチェックした後、ベースサークル・カムノーズを含むカムシャフトのカム部分を青棒とコンパウンドを使用して磨き上げる。  カム部分にはバリが残っているので、リュータで削り取った後に磨いた方が良いだろう。
 ジャーナル部についてもコンパウンドで磨き上げる・・・・綿の紐かウエスを細く切った物を巻きつけて磨けば楽なのだが、カム部分より材質が柔らかい様なので、あまり深追いをせず、適当につやが出たら切り上げた方が良いだろう。
 これらカムシャフトの加工は、フリクションの低減、バルブクリアランス調整時の作業性向上等に多少なりとも効果がある。

バルブの加工

バルブの加工 (2) - 17.9[KB] バルブの加工 (1) - 16.9[KB]  バルブの笠部分・・・・バルブシートと接触する面以外に鏡面加工を施す。  ドリルにバルブを装着してサンドペーパを当て、コンパウンドで磨き上げれば簡単につやがでる。
 笠部分燃焼室側はリュータに砥石を装着し、識別マークを削り取った後にサンドペーパを当てる。  砥石を使用するのは掲示板常連の [富永] 氏が提供してくれたアイデアである・・・・切削刃だとバルブが硬いためにうまく行かない。
バルブ加工済 (燃焼室側) - 15.4[KB] バルブ加工済 (ポート側) - 14.0[KB]  バルブの鏡面加工は、カーボンの付着防止、ヒートスポットの減少につながるのだが、劇的な効果があるわけではないので、面倒なら無加工でもかまわないと思う。  私自身は、何かで読んだ 「エンジン本体のチューニングとは、一円玉を集めて千円 (一万円ではない) にする作業である」 という文章が頭に残っているので加工したが・・・・。

2001年10月5日 追記

識別マーク切削 - 22.5[KB] ダイアモンド砥石 - 19.7[KB]  「富永」 氏が提供してくれたバルブの燃焼室側識別マークの切削方法だが、「ドリルにバルブをセットして回しながら、砥石を装着したリュータを当てて削り取る」 というのを書き忘れたので追加する。
 その際、ダイアモンド砥石を使用すると短時間で削れる・・・・16 本のマークを削るのに要した時間は 30 分程度であった。
 このダイアモンド砥石はホームセンターで見つけたのだが、二本組で \680 と安い上に寿命も長いようである。

バルブスプリングリテーナの加工

バルブスプリングリテーナ - 11.0[KB]  この加工だけは専門の業者に委託する必要があるだろう・・・・旋盤やフライスを所有している人はいるかも知れないが、表面処理を行なえる設備まで所有している人は稀だと思う・・・・私は [NAPREC] にお願いした。
 バルブクリアランス調整シムが入る面を 2[mm] 程度切削した後、タフトライド処理を行なってもらう。  切削後もバルブクリアランス調整シムが入る面の肉厚は充分に残るのでタフトライド処理は不要なのかもしれないが、後々問題が発生すると面倒なので、保険の意味も兼ねて処理を行なっている・・・・一個あたり数百円の処理代を惜しんで数万 〜 数十万円以上の出費を強いられるような愚行は避けたいものである。

装着状態 (加工済) - 8.4[KB] 装着状態 (未加工) - 8.4[KB]  なお、左側の写真が EJ20K 用のバルブに未加工のバルブスプリングリテーナとバルブクリアランス調整シムを組んだ状態。  右側が EJ207 用のバルブに加工済みのバルブスプリングリテーナとバルブクリアランス調整シムを組んだ状態である。
 バルブクリアランス調整シムの厚さは、どちらも 2.00[mm] となっている。



前項へ目次へHOME へ次項へ
ENGINE