home
『山川草木』抄




口上

 ながらくこの欄を閉じていました。これからまた拙い文をつづります。
以下、『山川草木』抄と題しますのは、
今秋刊行予定の『山川草木(仮題)』(白山書房 写真家三宅修氏と共著。
内容は写真50葉、小文50章で構成)の「T春の章」「U夏の章」からの抄録であります。
よろしく御笑覧ください。





T  春の章  たんぽぽ


きれいに さいた        まど・みちお

たんぽぽ さいた
きれいに さいた
ひばりの ことばで
ひばりが ほめた
ぴいぴぴ
たんぴぴ
きれいだね

たんぽぽ さいた
きれいに さいた
たにしの ことばで
たにしが ほめた
ころころ
たんころ
きれいだね

「たんぽぽ さいた」(『まど・みちお全詩集』平成四)




 
たんぽぽや折々さます蝶の夢  加賀の千代女
 明るい春の日をあびて、そこいら道端や空き地に咲くたんぽぽ。「鼓草(つつみぐさ)」の異名があるが、たんぽぽという名前も鼓を打つ音から名づけられたそうな。誰だかが書いていた。たんぽぽの語感じたいに、その昔の汽車をシュシュポッポといったような子供っぽさを感じると。だからだろうその花を目にするとしぜんに幼い日にかえってしまう。千代女の蝶はというと羽をたたんで惰眠を貪る。
 たんぽぽは楽しかった。洟垂れガキのじぶんに金色の花の勲章をつけて大将になって胸張ってえばったり。またあの花が終わったあとの白い冠毛のついたたんぽぽの絮(わた)がそうだ。こいつをてんでに息を吹きかけて風に飛ばし追っかけこをしたり。たんぽぽは笑えてくる。
 たんぽぽを褒めたいなと。まどさんは呼びかけるのだ。みんなして褒めようよと。
 すると春の空で「ぴいぴぴ」と騒ぐ「ひばり」さんは、ほめる。「ぴいぴぴ/たんぴぴ/きれいだね」と。つづき春の水に「ころころ」と遊ぶ「たにし」さんは、ほめる。「ころころ/たんころ/きれいだね」と。

                    



contents library contents home