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2003年 8月
: 兼題 「酒」 & 自由題

 

Benちゃん'S Pick Up

  八月の路地のみどりよ開店日   KIZU

われらがWELL開店挨拶! みどりのカンバンよ、永遠に。   by べん

  夏来り酒蒸しとなるろくでなし   ナカハラ

酒飲みであれば、よーく理解できます。   by べん



●佳句 13撰 〔撰者 : べん〕 (☆) & コメントが寄せられた句

【 酒 & 酒周辺 】
KIZU:
  朝顔と酒めぐりあう事故現場   (☆)

ナカハラ:
 
  夏来り酒蒸しとなるろくでなし   (Benちゃん'S pick up)
《 夏の飲んだくれを酒蒸しといい放つ。自嘲とも取れるこの句は、そのことで旨みをよくひきだしていて、おお、こっちに来たか料理長という感じです。いいですね。 ……kizu 》

  氷温の火酒 匿ひし刃を鍛ふ   (☆)

《 ナカハラさんにありがちな(スイマセン、たぶん僕だけ)よくわからんけど強く惹かれた句。匿名の匿ってなんて読むんだと思わず調べてしまった一句。うーむ、と腕を組みました。 ……N(えぬ?) 》

点:
  盆の夜酒場で雨に耳すます   (☆)

miyata:
  また夏が酒飲み忘れたふりをする

《 「冷素麺…」(03年6月参照)の句と同じ不思議感を覚える句です。「ふしぎだなあ」としか言えず申し訳ないが、何がふしぎなんだろうと、立ちどまらせてくれる艶が、この句にはあります。 ……kizu 》
  午後十時定位置親父芋焼酎   (☆)

《 こんなことを言っていいかどうか、この句を写そうとしたら、「定位置」が笑山さんの名前に変換されて、一転野趣ある句に。 ……kizu 》

U2:

  酒飲める気が付いたのは三十七

〈 miyata君に続いて、俳句を。生まれて初めてです。 〉
《 俳句デビューおめでとう。「酒飲める」を「」で括ってもいいですね。 ……ナカハラ 》
《 僕もあまり酒に親しんだくちではないけれど、このごろの酒は楽しいです。そして、この句は二十歳の若者が酒を飲んで、気がついたら37だったという、ちょっと浦島伝説のようにも読めますね。いや、そう意図されたか。U2浦島論。 ……kizu 》


N(えぬ?)

  朱儒踊る我の頭でスイカ割り   (☆)
  内縁に酒と言われて走る夏   (☆)

M佳:

  風鈴の音に響きや二日酔い   (☆)

岳:
  新入生歓迎コンパで蝉のまね   
(☆)
  ほろ酔いが長く続けば幸せだ

《 ほんとうにそう。そして、そうはいかない。岩石の話や、生物の話や、女や、政治や、もう無際限に話しあってわいわい下山した、そんな少年時代が僕にはあった。夕星がでて、眼下に京都の町あかりが見えはじめ、そのとき友人が「この道がいつまでも続くとええねえ」と言った、その言葉が今も耳に残っています。 ……kizu 


【自由題】
KIZU:
  缶けりの魔物ゆうべは白い靴   (☆)
《 KIZUさんのこれ。かなり大好きです。暗誦してしまうほどに。正座、しました。 ……N(えぬ?) 》
《 僕もこの作品、好きです。やっぱり「夢派」、ですね。 ……ナカハラ 》

〈 夢派といわれ不快です(笑)。やはり人を派閥で分類するのはやめようと、独りごちています(酒)。〉

《 「夢派」、だめですか(苦笑)。「夢派」ではなくて「仰臥派」という言葉をつかって、KIZUさんの句論を書こうかと思っていたのに…(煙草)。 ……ナカハラ 》
〈 ナカハラさん。「仰臥派」はもっと不快ですが(笑)、批評とは自
由なものだから、何派でもいっこうに構いません。たのしませてください(暑)。 〉
ページ末に、ナカハラ氏によるKIZU句評「アンダースローされる意識 ―KIZUさんの句について」と、KIZU氏の「「アンダースロー…」を読んで」を掲載しています。
  ひと夏の影絵となりて水の音   
(☆)

U2:
  恋やまい闘病生活続く夏
   (☆)
〈 現在の個人的な心境です。 〉

N(えぬ?):
  炎天下耳に悲しい痴話喧嘩   (☆)

woyzeck_79:

  フィルムの影の光の彼女たち   (☆)


 アンダースローされる意識
     
    ― KIZUさんの句について   ナカハラ

  春の地震(ない)黙読の書を胸におく
  われが寝て角瓶立ちて雨季の国

詠人は、身を横たえている。雨が降っている。
酒を呑み、書物を読みながらも、彼は、酒と書物に向かう意識とは別のもうひとつの並行した意識を持っていて、それは同時に、外界へと向かっている。
外界へ向かう意識の出発点は、詠人が身を横たえている、地上数十センチほどの物理的位置である。

詠人はやがて眠る。

  道の夢ばかり見ていし菜種梅雨
  春眠やあす発つ宇宙船(ふね)を検べおり
  青い基地にかえる子供の日の昼寝
  缶けりの魔物ゆうべは白い靴

今までに何度も見た夢。いや、そう思うことも実は夢で、今日初めて見た夢なのかも知れない。
子供の頃の、冒険、畏れ・・・。
しかしそれらの記憶は、本当に子供の頃のものだったのだろうか。

雨は止んだようだ。
詠人は、外に出て、道を歩き始める。
昨夜見た「道」の路傍になにがあったか、記憶は既におぼろげ。

  校長の訓辞もきかず土筆わく
  朝顔と酒めぐりあう事故現場

詠人は立ち、歩いているが、意識はやはり数十センチから発している。
見下ろすわけではない。
そしてその意識は、同じ高さの行く手を持つ。
見上げるわけではない。
意識は視覚的対象で一旦たちどまり、さらにその向こう側へと、ゆっくり進んで行く。

そして、詠人もさらに歩みを進めて行く。これを、「旅」と呼ぶのかも知れない。

  きえてゆく春の
雲あり線路みち
  ワムワムワムとかかれて走る春の貨車

透視画法上の消失点に向かって収束し、消えて
行く線路は、実際には消えはしない。
ゆらゆらと立ち上るかげろうは、そこに在り、同時に、そこに無い。
詠人の意識も、線路に沿ってアンダースローされてゆく。

  
卒然ととぎれる轍春の霧

少し疲れた。腰をおろそう。

  
あたたかなつめたさになる石の上

またしばらくしたら、立ち上がって、歩き出すだろう。
いや、ひょっとしたらずっとこのまま座っているかも知れない。
いずれにしても、意識は投げられる。低く、ゆっくりと。
そしておそらくは、
空中の重力に負けて墜落する事もなく、地面との摩擦力に負けて停止することもない。



「アンダースロー…」を読んで     KIZU

 ナカハラさんの文章作品は、たぶんゼミ関係ではこれが初めてですね。句評というより創作になっていて、「これでイケル」「これでつなげよう」などという、筆のよろこびが伝わってきます。
 KIZU句の一面が描けているのは当然として、誰か見知らぬ男のことのようでもあり、しかし意外とナカハラさん自身を想起するものもあります。
 小品ながら主旋律がきっちりしているのは、音楽家の技だろうか。ここで「文学、という、定義もあいまいで答えも無いもの」というナカハラさんの言葉がうかび、逆に、音楽というのは構造そのものなんだなと思いましたが、まあそれは別の話です。
 「アンダースローされた」という表現は中原中也から取ったものと思いますが、地上数十センチで、見下しも、見上げもしない視線。俺ってそうだったのかと思いつつ読みました。句の出来は恥ずかしいです。


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