ぼんくら bonkura/2006/9/1 home 


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決闘江戸川河川敷 …松元泰介
鹿笛 …正津 勉
灘岡ゴルフ練習場 …竹下 力
山旅ノートから(連作) …上河内岳夫







決闘江戸川河川敷
     松元泰介


立ち食いそば屋のカウンターにある
一味唐辛子のことではない

タカの爪
それが
カタキの名

師は
タカの爪との果し合いの末
大木が静かに倒れるがごとく
息を引き取ったのだ

師の亡き後
道場に掲げられた
「江戸川いきいき体操クラブ」の
総檜造りの看板は叩き割られ
タカの爪が世界最強の
太極拳のつかい手になった

しかし
必ずやタカの爪を討ち
本懐は遂げる

決闘の場は
早朝の
江戸川河川敷

土手からは
天地の気を集め
自然そのものとなって
対峙する互いの姿が
朝露に濡れて
微風にそよぐ
二本のミズナラの木のように見えるに違いない

緊迫した
ミズナラの木立の間

そこを
ランニングシャツで
毎日散歩する爺さんが
通り過ぎていった


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鹿笛
           正津 勉


――ぴいと啼く尻声悲し夜の鹿 芭蕉


板間にどっかと胡座をかき
ヘッドライトの明かりひとつ
コッヘルの御飯に鮭缶などぶっかけ
ズブロッカを舐めるように

いまここに居るのはひとり
てまえの揺れる影があるきり
きのうの九合目避難小屋でもまた
おとついの朝から誰ともまるで

それが違うなんと嬉しいわ
ついさっき表へ小便に起つとなに
おちこち暗闇に目玉がぴかり
視るといやびっくり鹿

輪を縮めてくる鹿の小さなむれ
それで一歩前へチッチッと呼ぶように
すると向こうさんたら一歩後ろに
なんていう繰り返しのおかしさ

ずっとそれから小屋のすぐそこ
しきりと草や樹の葉を食するような
咀嚼のそれと爪音がしている
そしてその尻声もときおり


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灘岡ゴルフ練習場
       竹下 力



雨だ!
ザっとふって、カートのエンジンボッボってガァっとすぎて
僕の父さんボール拾い、280ヤード先のネット下でボール拾い、
せっせとボールひろってその目の前、母さんミズノの5番アイアン
ブンブン振って、雨がザンブザンブ降って、
振ったブンブンと腰、ピンと伸ばし手を前へ背筋をピン
横井レッスンプロの指導を、いいねーいいねー奥さん
なんて受けていたけど、横井さん母さんのスカートパラって
雷ゴゴゴ、鳴ったところに指をはわせて口息あらくフーフー
フーフー耳元、横井さん雷みたいな24金ネックレスパラって
ジャラジャラ、奥さんいいねーいいねーなんてジャラジャラ
母さんの人差し指に親指かさね横井さんグリップギュッと
そのまま腰を押して押しあて足を前に押しだし突きだした腰を
ももにももをかさね押しあて前に押しだしてギュッと
つねると母さんアソコから雨がジャラジャラ垂れて
垂れてるみたいでももがももを毛ジャラジャラ横井さんこすりつけ
こすりつける腰ザンブザンブ振って、いいねーいいねーなんて
いやいやいう母さん首をくねらせ横井さん腰に指をはわせて
横井さんアッハアッハいいながら、ボールうってた。母さん
もう……だめ……たぶん、だめ!

雨だ!
父さんカートのエンジンボッボ、レインコートザンブザンブ
ザブンザブンとハンドル握って300万個のボールひろいボッボ
ひろうボールはボッボと父さんのカートの籠にはいって、
アクセルザンブザンブ、フェアウェイゴゴゴと掘りすすんで
一階に124人、二階に32人、ブンブン腰振って
ボールうってビュンビュン飛んでネットにあたって
スライスだー、フックだー、ファー、ファーって
アクセルふかせてゴゴゴと雷、帽子パラっとレインコート
横井さん母さんの腰あて手を振り腰振り手をあてて、
ファー、ファー、フックだー、スライスだーって
いいねーいいねー奥さん、横井さん母さんのスカートヒラッて
ももに指をのせのせた指をももに雨でビチョビチョはわせ、
ビチョビチョスカートの襞の母さんのアソコの襞にボッボと
さわってくねった指ヒラッともも、ももからスカートピラピラ
いやいやと母さんでも、ハアハアいいながらスカートいじくって
アッハアッハと横井さんでも、いいねーいいねーいじくった腰
腰振って血管そっとももの毛を掴み髪に指入れ耳にフーフー
フーフー母さんいやいやとアハアハもう、母さんももから
雨ビチョビチョ垂らして、奥さん奥さんバーカ腰振って
父さんカートハンドル片手ボッボ、120番打席
みやるとあのバーカ、みやるとあのクソやろうなんて、
ハンドル握ってカートギュッ
ギュッにぎってレインコートパラッとゴゴゴと雷
雨ザンブザンブ重ねた母さん指を指のままグリップを
ハンドルみたいにブンブンふって、
スライスだー、フックだーなんて、
父さんそのまま、アクセル吹かせてゴゴゴとそのまま父さん
ビチョビチョ芝生を巻き上げて300万個のボール
パンパン弁天島花火大会みたいに打ち上げて、
一階120番打席に突っ込んだ。横井さん母さん
吹っ飛んでスターマインでこのやろうこのやろうなんて
父さん横井さん張り倒すとガキがなんていって父さん、
父さんガキって、ファー、ファーって横井さん
横井さんアッハアッハ、イヤイヤ母さん、このやろうって父さん
母さん張り倒した。横井さんを引っ張って父さん
母さんやめてやめてってこのやろうって父さん
横井さん張り倒して練習場に逃がしたら横井さん
鼠花火みたいにクルクル回って父さん
カートにのって追いかけてひき殺して横井さん
ひき殺したみたいだけど父さんひき殺したんだけど、
アハアハといいながら横井さん、背中はゴルフボールみたく
吸い上げられて背中、母さんがつくるカリカリドーナッツみたく
真ん中あなあいて、花火になって横井さん
横井さんの背中はスターマインで母さん倒れたまま
倒れたままピンみたいに口開けてアッハアッハ
父さん母さんの口ボールをおいてアッハアッハ
ファーファー、スライスかなー、フックかなーって
父さん3番ドライバーを構えた瞬間、母さんスカートハラッと、
ハラッとももから雨がビチョビチョ、ビチョビチョレインコート
父さんハラっとビチョビチョパンティーみやると父さん
母さんてめえこのやろうって振りあげてイヤイヤ母さん
ドライバー蛍光灯にキラリ泣き出した母さん
もう……ダメ……たぶん、ダメ!

雨だ!
2階の寝室の母さん、父さんのチンチン
スライスだーフックだーなんて
ザンブザンブと吸いこんで、オエッ、オエッなんて
腰振りももにももへ指重ね指重ねももへももへ腰振り
窓にカーテンヒラっと向こうがわ、雨がザンブザンブ
雷ゴゴゴ夕立、僕ファーファーって学校から帰ってザンブザンブ
母さん、吸って吸いこんで、父さん、吸いこんで吸われて父さん
ブンブンチンチンふってパンパンとうってた母さん
母さんダメェーダメェーなんて、バッキャロー父さん
パンパン母さんうって、鼠花火みたいに母さんパンパン回して
僕たえられなくて、母さんの口、父さんのチンチン鼠花火みたく
パンパンまわして、ボッボってザンブザンブ、もう聞きたくないよ、
たえられなくて僕、目塞いで、牛乳飲む台所に聞こえてきて
たえられなくて僕、耳塞いで、母さん父さんみえてきて、
もうみたくないよ、でも、僕のチンチン鼠花火みたくクルクル
たってきてクルクル僕まわりながら、やめてよー母さん父さん
父さん母さんもうやめてよー母さん父さん仕事だろーなんて
父さんの納屋から僕ミズノの5番アイアンもって、
階段ゴゴゴとかけてもうやめてよー、仕事だろー父さん母さん
母さんって、2階寝室ドア突っ込んでかけこんで母さん父さん
ゴゴゴとチンチンすって、雷だ! 雷だ! チンチンゴゴゴって
僕かまえたよ。かまえたんだ。父さん母さん仕事だろ帰ってよ
帰ってよ、母さん、父さん、帰ってよと首振って
振り上げてゴルフクラブ、かまえたんだ。かまえたよ。
その瞬間、父さん僕張り倒して、僕縛りつけた母さん、その瞬間、
僕みてたんだ。父さんミズノの5番アイアン振りあげるその瞬間。
父さんチンチンボッボ、母さんアソコビチャビチャゴゴゴゴ
地震だ! 地震だ! なんて、床は地震みたいに蛍光灯ハラハラ、埃落として目パチパチ、パチパチ目閉じて、開けると僕ハラハラ
たぶん泣くだけ。夕立ゴゴゴ、ゴルフクラブはキラリ、僕泣いた。
泣いたら、ゴゴゴと地震がやってきて、泣きつづけたよ。
母さん帰ってよ涙ため、ハラハラ帰らないで父さん、
父さん帰ってよ涙ため、ハラハラ帰らないで母さん、
もう……ダメ……たぶん、ダメ!


説明……雨だ! と叫んだときには、なにもかもが許されることがおこるようで、たとえば、僕が父さんに連れられて、和合カントリークラブにいったとき、練習場で父さんのとなり、121番打席でボールをうっていたどこかのバカが、バカみたいに、父さんがボールを打つたびに、その打球に、スライスだね、フックだねなんてバカにしていたので、父さんは近づいて、ゴルフクラブでぶん殴って半殺しにしたときも、雨がザンブザンブふっていて、周りにはまったくばれませんでした。六月のじめじめした日、父さんが母さんのアソコに指を折り曲げくねらせた指を突っ込み突っ込んだアソコが折れ曲がりくねらせた母さんの足がダメ! ダメ! と叫んでいるようだったので、僕は、部屋にはいって父さんと母さんを、ミズノのゴルフクラブでぶん殴ってやりました。雨だ! 雨だ! と僕は叫んでいましたが、ダメ! ダメ! と父さん母さんの120人の合唱のほうが大きくて、僕は思わず、泣き出してしまいました。僕はなにをやってもだめだなんだなって。でも、僕は声のかぎり、叫び続けていました。雨だ!


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山旅ノートから(連作)
  上河内岳夫

16

梅雨の
どんよりした空と
水分を多く含んだ空気が
私の気分を重苦しいものに
しているようだ
梅雨が明けたら
麦草峠に出かけて
午後のヒュッテで
コーヒーを飲みながら
立原道造の詩集を読みたい
と思った
あの学生時代の夏のように
今年の夏もセミの声が
そこを支配しているだろう


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