浜松市和合町町内会 竹下 力
T.和合町43−2、牧田明14歳、7月9日午前3時
父さん死んだ。父さん死んだ。
思うことなく、ほら。感じることなく、ほら。
父さん一升瓶かかえて、一升瓶くわえて父さん、
クソねって母さん、鉈でエイッ、一振り一振り一升瓶、
父さんのどつきぬけて、突貫工事みたいにのど穴あいて
二級酒『灘』コボコボこぼれて、僕それきいて、僕それみてた。
そうしようとしてた。
でも僕、布団抱えて寝てた。
父さん酒飲んでゲーゲーいって、母さんも僕も殴るし、母さん
トイレいれて僕の尻を鉈で叩くんだ。叩くから逃げて逃げたいけど
そうなっちゃうから、感じるし感じないけど、そうなって
母さん膿だらけの目をカッとひらいて、鉈エイッふって
酒瓶のどつきやぶって父さん
浜名湖のシシャモみたいにエラ棒通されて
えずいて酒コボコボこぼして、僕それきいて、僕それみてた。
たぶんそう。そうみてた。きいたんだそう。そうなった。たぶん。
でも僕、嘘いうと母さんトイレ押しこんでケツけって
父さん殴ってゲーゲーえずくから
僕エイッとゲロはいて布団に垂らすと母さんバタンきて火つけた。
思ってた。それはそうだと思ってた。よこ張られて
母さん、この子また、またよって、クソガキなんて父さん、
中学生のくせにって、でも父さん、死んでないけど、ないけれど
死んだことにしたし、でも母さんだって、そうだって
母さん、この子クソよなんて、クソやろうって、父さんの
チンチンすって父さんの一升瓶みたいに一振り一振り、
くわえてかかえてのど奥おしこんで、母さんゲーゲーはいて、
喉にシシャモの穴あいた。
思ってた。それはそうだと思ってた。
寝室からその声。その声、きかないよ。みないから、その声。
でも、父さん精液たらしてチンチン一振り一振りやってきて
クソガキ、みてたろ、きいたろ、クソガキ、
クソガキよこの子、この子はね、クソガキ
母さんもアソコから精液ビチャビチャたらして父さんに、
よこ張られてあんたのせいよって僕、
トイレに押しこんで鉈で殴って僕、
泣いてあやまって父さん、きいたろ、みたろ
はい、みてました。はい、きいてました。でも嘘だから僕、
きいてません、いいえ。みてません、いいえ。またよこ張られて
そうです。そうなりました。そうなっちゃいました。でも僕、
きいてるけど、みてないよ。みてるけど、きいてないよ。なのに、
父さん母さん僕なぐってトイレ押しこんだ。
ガタガタでていってかぎ掛けて、父さん母さんケツ叩いて
精液たれてた。ごめんなさい。便座すわって、精液たれて、
ごめんなさい、ごめんなさいって、トイレットペーパの芯、
かかえてくわえてエイッと一声、のど奥つっこんで、
芯が折れ曲がちゃって、のどつきやぶることなく窒息した。
そうなった。そうしたくないけど、そうなっちゃった。
父さん僕の声ききながら、ケツパンパン、僕みながら母さんを、
母さん僕ききながら、ケツパンパン、僕の声みながら父さんを、
感じることなく、ほら。思うことなく、ほら。
僕死んだ。僕死んだ。
ほら!
U.和合町45−8、横井隆14歳、7月8日午前7時
ほら父さん、洗面台でゲーゲーえずいて
ほら母さん、台所で卵焼きジュージュー
ほら弟、居間で静岡新聞朝刊読んで
ほら僕、たってた。たぶん、そこ。
ちょうてん、まんなか、はじっこ。ううん、そこ。そこのはず。
父さん『横井サッシ』2代目。
母さん『シンヨー・クリーニング』受けつけ
弟、城北小学校2年生。
僕、北部中学校3年生。でも、クソ。うそじゃなく、クソ。
クソって、みんないうから、クソって、
ゲロたれて父さん、ピャッピャ痰はいて笑いながら、クソ
クソって卵焼きにゲロはいて、フライパンジュージュー
ジュージュー母さん、クソ、ドグサレ、あんた、叫んで、
フライパン、ぶんなぐって、飛び散って卵焼き。
ジュージュー父さん、ギャッ、アバズレ、おまえ、叫んで、
くっついて、フライパン、煙ふいて父さん卵焼き。
弟ギャッギャと大笑い。僕たってた。たぶん、ここ。
はじっこ、まんなか、ちょうてん。ううん、ここ。ここのはずだよ。
父さん顔ジュージューはがれてずり落ちて、垂れたよたぶん、口。
垂れたよたぶん、鼻。垂れたよたぶん、目。垂れたよたぶん、耳。
僕、それ。それだって叫んで、父さんに抱きついた。それ、僕。
そう起こってた。そう起こってたから。でも、クソ。僕、クソ。
クソ、ガキって父さん、フライパンひきはがして、クソって
僕なぐって、僕、頭あなあいた。
あなあいた僕、ギャッギャ笑って弟ゆびさして、あいつクソ、
クソよあの子って、役立たずって母さんショッショ、
笑いながら痰はいて、卵焼きジュージュー、
ジュージュー頭、煙ふいて僕、やっぱりクソ、
クソ、たぶんそれ。それ僕。僕、脳味噌垂れて、それ。それ、僕だ。
たぶん垂れたよ、耳。たぶん垂れたよ、目。たぶん垂れたよ、耳。
垂れたよたぶん、口。そうなって、やっぱりそうなっちゃって、
父さん顔たれて骸骨のまま、
ギャギャッと笑いながらゲロはいた。あいつクソ、
うん、それ。それ、僕。僕そういって、僕たってた。
たぶんはじっこ、たぶんまんなか、たぶんちょうてん。
そう、起こってた。起こってたよ、そう。そう、僕。僕、それ。
それ、クソ。クソ、僕。
V.和合町43−1、鈴木政志14歳、7月7日午後3時
僕、父さんクソったれ思うんだけどというと、明、そりゃ同じだけど親父トイレに押しこんでぶん殴るんだよな、隆、そりゃまあそうであいつ毎朝洗面台でゲーゲーえずいてフライパンで殴んだよっていうと明、母親も同じだけれど財布から金パクれるから問題ないよねって隆、そりゃそうさって2人笑ってたけど、笑ってたけど僕、父さんに殴られたことないし母さんいないしなって思うだけ。思うだけで顔あげて鼻すすって空みあげたら、灘岡神社は青で。木々は静か。とっても。空のすきまを枝が埋めて、青空の暗いすきまから太陽がヒラヒラもれて、学校サボってやって、僕母さんいないし財布パクれないし父さん殴らないしなーなんて僕、小さくいうと300段の階段下、田んぼ道の畔、水の音がながれてとっても静か。ポツンポツン風ふいて神社の鈴がカランとなると僕、花火でもやろうやって、へえどこ?
と明。金子商店からパクッたんだと僕。おおって、そこ、米田ババアに追いかけられなかったって隆。あいつ垂れた乳自分ですってつっこみ過ぎてゲーゲーいってたから大丈夫さって僕。ギャッギャと笑って、僕、明、隆、紫の神社で花火した。ねずみ花火、せんこう花火、先端が赤く膨らんでジョジョっと垂れると僕の父さん、湖西の兼山鉄鋼所で夜勤で船作って帰ってこないんだって僕、小さくいうと木々のすきまからカラスがギャーギャーないて飛んでった。明、でっかい原爆らしいってそうみえちゃうんだよねみんな死ぬんだぜ、隆、まあまあそりゃいいすぎで親父の垂れた金玉、それ、たぶんそれなんて、僕、明、隆、そりゃそうさって、親父の金玉クソ金玉なんてギャッギャと唄って、唄うけど賽銭箱のぞいて痰はいて、鈴ジャラジャラならしてガムスチャスチャかんで、賽銭箱の裏にあった湿って腐った『投稿写真』開いて、いかんいかんたってきたって、僕。そんなこんな女で?
って、明。まあまあ、半立ちってところでさって、隆。僕ひだり、明みぎ、隆まんなか、いいよないいよな、麻貴に似てえそうみえるって明、2組のヨッチャンだよたぶんそれって隆、これ母さん?
って僕。よくみるとこれ、なんか母さんみたい、母さんみたいだけど僕いうと、明と隆、うーんうなって、うんうん、このモザイクが母さん?
市営団地にある写真にそっくり。そっくりだったけど、って僕首振りながら、僕母さんのパンティー嗅ぎながら1回、ナニしてまった。でも、お前の母さん? うん、出てった5年前。5年前出てったから今でも27歳。27歳なんだけどっていうと、うえ、この女27歳?
でも、俺はありだよなって明、ギャギャと笑ってゲロだよって隆、なんで?
ひでえ。ひでえ。なんで? いやって、僕。母さん桐ダンスのにおいした。アソコが虫食ってモザイクだった。モザイクだったけど、やってまったいうと、父さんも?
って隆。でも、やってまったいうと、父さんも?
って明。うん、トイレにそそってもってウンウンいってたっていうと、ギャギャとみんなで大笑い。僕モザイクピラピラいじりながら、これって母さんって思ってた。思ってたんだけど、僕残りの花火もいじくって、金子商店お買い得、100本ロケット花火ピラピラいじくってたら、階段から僕の夜勤明けの鉄鋼所帰りの父さんが、またか、お前ら学校はなんていうもんだから、殴られるって僕は火をつけて、殴るなって父さんに撃っちゃった。そんなわけないよって撃っちゃった。明に30本渡して、隆に渡して30本渡して、僕、明、隆、みんなでロケットうっちゃった。うっちゃったんだ。そうしたんだ。そうしちゃったんだけど、カラスがギャーギャー叫んで、ギャーギャー父さんも叫んで蜂の巣だった。どんどん、父さんこずかれ後ろさがって、そのまま300段の階段ころげ落ちた。落ちたみたいで、僕空みあげたら、100本ロケット空つき抜けて。音をたてて、木々のすきまをつきぬけて。青空は赤く弾けて、神社に少しだけ風がふいて、田んぼ道の畔。水の音がポツンポツンって。僕、明、隆、顔みあわせて、ギャーギャーいいながら、お前のせいだからなって、明が真ん中の隆をおして僕ふらついて、隆がまあまあって、階段下の父さん、腕が折れて。折れた首が後ろ向いて。まあまあ、僕ひだり、隆まんなか、明みぎ、うるせえ、お前のせいだからっていうと僕、俺の親父だぞって隆をおしたら、明よろけて僕ギャッギャ。てめえふざけんなって明、まあまあって隆、でも隆をおして僕ふらついて、フラフラして、鉄鋼所の溶鉱炉のバチバチ鉄で、線香花火みたいにフラフラゆれて、明もう1度おしたらギャって叫んで僕、落ちた。クルクル階段転げて僕、落ちた。腕折れて、折れた首。階段したの父さんとぶつかって僕、父さんこなごな。こなごな父さんと僕のよこ、ギャギャ笑いながら、明と隆、ざまみろって僕と父さん踏みつけて田んぼ道を逃げてった。そうなった。でもそう思ってた。父さんと2人、僕の首は父さんにくっついて僕父さんで、父さん僕だった。たぶん、そうだった。そうだったんだよ、たぶん。でも、死んだ。死んだみたいだから父さんと僕死んじゃった、死んだみたいだから僕と父さん、父さんのひん曲がった顔、僕の顔に噛みついて母さん母さん叫んでた。でもそれ僕の体だから僕がいってるのかわからないけど、僕ずっと泣いてた。泣いてたのは父さんの体だから父さんが泣いているのかもしれないけど、僕と父さん、ポツンポツンって笑い出した。笑い出したけれど田んぼ道、青空。木々の隙間からカラスがギャッギャって。すごい静か。畔がサララなって。ポツンポツン水が鈴から垂れて。賽銭箱の5円がジャラジャラ静か。すごい静か。静か。でも僕、死んだ。死んだから、僕。僕口パクパクさせながら、ポツンポツン静かにいったよ父さん。父さん死んだ。死んじゃったね父さん。
父さん死んだ。父さん死んだ。
説明……父さんが死んだのは、ちょうど、夏の暑い日でした。僕が夏休みに入る前だったと思います。僕が住んでいた、市営住宅4号棟の、ちょうど真向かいの3号棟の横井君の母さんと、階段を手を繋いで歩いているのをみていたら、走っておいついて、僕は後ろから父さんを押してしまいました。横井君のお母さんは、父さんに引っ張られるみたいに、一緒に階段を転げていってしまいました。父さんは舌を噛み切って、それが横井さんの顔にたれて、目と耳と鼻と口をなめているようでした。僕は、まだ離れないのかと思って、父のはいていた安全靴で横井さんの顔をけると舌が飛んでいって、横井さんが飼っていた雑種犬のランのエサ箱にはいりました。ランはにおいをかぐと、それに見向きもせずに、小便をたれたので、僕は笑いながら唄っていました。父さん死んだ。父さん死んだ。
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