亀さん
正津 勉
亀さんあんたは死んだんだね
かれこれ六七年もまえの昭和一七年師走
路傍に倒れて運ばれた持家の空き屋で
誰にも看取られず静かに事切れて
かねてから口外していたとおり
だんだんにものを喰うことをやめていって
するうちにそのときの刻がくるべくしてきていて
つまるところ餓死していたと
ことここに極まるさいご
いまわのきわ心にする何かあったか
いやそんな思うほどのことが何もなくてか
聞きたくもあるが詮ないことよな
人は死ぬとほかなく墓に入る
ほんとは野に朽ち果て獣に喰われれば
いいものだろうが何だかんだ難しくできていて
あんたの骨もここで眠っている
だけどその魂はいやそう
そんな「何処までも行つた人達は永久に
帰つて来ないのでした」という
「形のない国」を行くやら
亀さんあんたに何かいいたくて
平成一八年一月二六日午前一一時半
宮城県柴田郡大河原町繁昌院尾形家墓前
わたしはぼっと立っていたぼっと
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