ぼんくら bonkura/2006/1/15 home


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新年御岳詣―大塚山より …上河内岳夫
中年作家の嘆き …野々山幸平
冬河原 …正津 勉






新年御岳詣―大塚山より
            上河内岳夫

鹿除けの
ゲートを開ける
昼下がり

尾根に出て
鷹ノ巣望む
落ち葉かな

山上に
酒の香仄か
一人いて

宿坊の
湯船の中に
懐かしき
人々の声
聴く夕べかな
      (2006・1・13)

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作家の嘆き
       
野々山幸平

かつて太宰が住んだ
三鷹の裏町を歩き回る
酒とクスリの日々
だが俺は太宰にはなれなかった

午前二時に路地裏の酒場で
お湯割の焼酎に梅干を落として
割箸で何度も突付いた
おいしい酒などありはしない

ただ健康のために
地中海ヨーグルトを
食べ続けるのなら
焼酎を飲み続けて
脳溢血になっても
それはそれでいいじゃないか

「いまさら芥川賞なんか欲しくはないさ
女子大生と一緒にされたくないよ」
ポストモダンはわけが分からず
さりとてヌーボーロマンにも
関心がもてなかった

一九八四年四月
早稲田大学第一文学部に
入学したあのときの俺が
今の俺を見たら笑うだろうな

神を信じることは迷信だ
人を信じることは迷惑だ
いまさら自死について考えたくなかった
ひとりで情死することは
定義によりできなかったから
生き続けるより他に俺に道はなかった

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冬河原
             正津 勉

そこに郷里の町の名前がのる
豪雪で死者と躍る見出しの紙面から
ぼんやりと快晴の多摩川を車窓にしていて
ひょいと次の駅で降りていた

遠く団地の群や工場の影
ジョギングやゲート・ボールや
大声で走りまわる犬と子供どもたちや
ホームレスのブルー・シート

風はちょっと冷たくあるが
降りかかる陽ざしは穏やかそのもの
そこら汚いゴミやらナニやらが散らばる
流れはそこそこ川らしくもあるか

礫を投げたり空を仰いだり
もの淋しい気というか寄る辺ない
いおうようのない感情をどうしようもなく
溜息ついたり舌打ちしたり

ふっつり糸が切れてから
遠くずっとはるか空のどこだかを
吹かれてゆく凧よろしく
ふらり右へ左へふらり

そのときどう何をせんとして
わたしはというと突然わけがわからない
ちょうど頭の大きさほどある石に取りつくや
えいッやッと差し上げているのだ


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