翼の行方
戦いが始まった時、漠然とそれでも確信に満ちて、自分が生き延びることはないだろうと思っていた。
しかし、死にたがりの仲間を見つけ、一人々仲間が増えて行くに連れて、戦争は終盤に近づき、もしかして自分は生き延びてしまうんじゃないかと、思い当たってしまった。
今まで必死に生きてきた、でも人生80年として、まだその4分の1も生きていない、俺はいったいこれからどうすればいいんだーー!!
しばし、パニックに陥るデュオだった。
周りを見ると、みんな淡々と戦っている、先のことを考える自分は貧乏性って奴なのだろうか、、ああ、
デュオは、深く深く溜息をついた、もちろん誰もいない一人の部屋でだ。
貧乏性と言われても、卑怯者と言われても、物心ついてからスイーパーグループに拾われるまでの、路上生活には絶対戻らない!!
そのためには先立つ物が必要だ、戦いが完全に終わり治安が回復する前に、プロフェッサーから教えられていた口座から(部品だって弾丸だってタダじゃないのさ)慎重にパソコンを通じてお金を引き出す、ついでに少し減っても気付かれそうもないところからも、ちょうだいすることにした。
いくつかの口座を回し、名前を変えて(マネーロンダリングってやつね)天下のスイス銀行の自分の口座に入れる。
もちろん自分の腕だけで食べていける自信はある、でもお金はあるに越したことはない。
今までの24時間労働の労務費を考えると安いくらいだ。
こんなことは、戦いの最中には頭の隅にも浮かばないが、将来の心配がない事は安心感を与えていた。
そして、いよいよ、長くひたすら悲惨だった戦いは終わることになった。
後は政治家や権力者の卓上での駆け引きが主体となる、そんな物には興味はなかった。
どこに行こう、明日にはここからさっさと出ていくつもりだ。
どこでだって生活できる、あ、そうだ地球をさすらってみたいなあ、どこまでも続く海や草原を、ゆっくり楽しむのもいい。
暖かい雨に濡れて、歩くのも楽しそうだ。
ベッドの上で笑いながら考えている様は、満腹の猫のようだった。
ノックの音と共にドアが開く、鍵をかけるのを忘れてしまったらしい、慌ててベッドから降り立ち上がった。
「ど、どうしたんだ?」
狭い部屋にガンダムのパイロット全員がそろう、椅子を勧めようにも、一つしかない仕方なく立ち話になった。
みんな真剣な顔をしている、デュオは笑いを消して、顔を真面目に取り繕った。
「これからの事を話し合いたいのですが、」
カトルが先に口を開いた、げっやばい、金をちょろまかしたのがばれたのか、背中を冷たい汗が流れる。
いや、完璧に偽装したはずだ、、
「これからって、戦争は終わったはずだぜ、好きなことをすればいいんだろ、」
肩をすくめて笑って見せた、
「ヒイロの事なのです。」
一番後にドアに凭れて立っているヒイロに視線を向ける。
ヒイロが自分以外のガンダムのパイロットであることを知ったとき、一人じゃないんだと嬉しくてたまらなかった。
それに、任務ばかなところが危なかしっくて、不器用な生き方に口を出さずにいられなかった。
しかし返ってきた反応は冷たくて、任務任務で、なんてシャイなやつだろうと思ったのだ。
しかしそれは大間違い!!他のガンダムパイロットへの接し方は、当たり障りが無く、愛想がいいくらいだ。
俺はめちゃくちゃ傷付いて、もう絶対表面的なつき合いしかしない、かかわり合いにはならない、そう、深く深く決心していた。
「ヒイロがどうかしたのか?」
早く出ていってくれー、俺は明日のことを考えたいんだ、心の中でそう思っても、厳しい顔のカトルには言えなかった、くすん。
「だれ一人身寄りも行く当てもいないヒイロに、3人で居場所を提供しようと申し出たのですが、」
困った顔で首をかしげる。
ふーん、そりゃ俺だって同じだけど、どこでも生活できそうな雑草みたいな俺と、隔離されたところで育った、ある意味繊細で神経質なヒイロとは違うわけね、ふーん。
俺は内心少しいじける、みんながヒイロにはまっているのは分かっていた、人間離れした能力、なのに妙に危なっかしいところがある。
美人と言える顔、静かな頭のいい物静かな、、でも、俺は知ってる、そいつは二重人格なんだぜ、他のやつらにはちゃんと接するくせに、俺だけには、、あ、別に、傷付いているわけではない!絶対に、、きっと、
「へー、じゃヒイロの将来は安泰だな。」
俺はにこにこと笑って見せた、なのに3人から帰ってくるのは、苦虫を噛みつぶしたような顔、あれ??
「ヒイロは、おまえがいいそうだ。」
は!?言葉の意味が分からず、頭が真っ白になる。
ぽかーんと口を開けた顔は、自分でも間抜け面だろうな、と自覚はあっても顔の筋肉が動かなかった。
そんな顔を見て声に出さずに笑っているのは、一番後で閉じたドアに凭れたヒイロだけだった、他のみんなは悲しみに沈んだ顔をしている。
ちくしょーー、おまえは本当はそんなやつだよ!
「あ、えーと、それは嬉しいんだけど、(ここで迷惑だなんて本当の気持ちを言ったら、どんな仕打ちが待っているか考えただけでも怖い、)俺は金もないし、、帰るあてだって、、」
うう、みんなの視線が痛いよう、俺には珍しく口ごもってしまった。
「ヒイロが君がいいと言ったのですから、経済的な面は出来るだけ援助させていただきます。どこに行きたいか言ってくだされば、すぐにでも準備をしましょう。」
い、いやだよう、ひも付きの生活なんて、救いを求めて、他の連中に視線を向けた。
優しかったトロワも、ばかなことを言い合った五飛も、悲しみ半分憎しみ半分の顔で俺を見ている。
俺は、こんな茶番の恋愛ざたになんか巻き込まれたくないよーー。
逃げ場所を探して、視線を泳がす先に、愉しそうに成り行きをみているヒイロがいた、このやろーー!!どうせ、みんなに合うのも今日までなんだ、俺は、言ってやる!!言ってやるんだからな!
「俺はヒイロと暮らす気なんか、」
「しばらく二人で話し合いたい、」
俺の言葉をぶった切って、ヒイロが声をかけた。
俺の話は全然聞いてくれなかったくせに、あっさりと皆戸口に向かった。
「お、ま、待てっ、」
「ヒイロ、いつでも着たいときには連絡をくださいね、どこでもいつでも迎えに来ますから。」
「俺も、おまえのためだったら、いつでも時間も場所も開けているから、」
「携帯番号は変えていないから、いつでも連絡してくれ、」
「待て、おい、俺は、」
必死の俺を無視して、ヒイロに優しく微笑みかけて、俺をにらんでから出ていった。
しくしく、皆良い仲間だと思ったのに、恋愛が絡むと冷たい、、
シュッと扉が閉まり、ピッと甲高い音がドアがロックされたのを知らせた。
「お、おまえなんか、」
自分でも声が震えるのが分かる、情けない、一歩ヒイロが近づいてきた、思わず俺は一歩後に下がる。
「こ、この二重人格のブリッコ、一緒になんか絶対行かないぞ、俺は自由に地球で旅をするんだからな。」
ヒイロが踏み出すたびに、後に下がり、とうとう壁にぴったりと身を付けた。
人が見れば、無表情だと思うだろうが、ヒイロが面白がっているのは俺にはよく分かった。
「お、俺と一緒に行ったって、善い事は何もないんだからなっ!貧乏だし、家だってないんだぞ!行くあてだって無いんだぞ、」
言っていて自分でも情けなくなってきた。
お金だって、おーりょー(平仮名)したもんだし、、、
「あ、そうだ、俺はおまえに優しくしないし、キスしたり、抱いたりしようなんて、これっぽっちも思わないからな、」
ぜいぜいぜい、とこんなことで息が上がる、
そりゃそこらの女より整った奇麗な顔をしている、でも、だからって、無表情な何考えてるか分からない、男を押し倒そうなんて思うもんか!
それに身体だって、悔しいが俺より筋肉ついてるみたいだし、、と、とにかく、嫌なんだ!
くっと唇の端を上げて笑う、やなやつ!やなやつーーーー!!!!!!
「そりゃよかった、その点は意見が一致したな。」
「え、あ、えっと、どの点?」
ぼんやりと、どの点を言ってるのか、自分の言葉を反芻する。
と、身体がぐらりと揺れてなぜかベッドの上に仰向けに横たわっていた、ヒイロが乗り上げるように上にいる。
「ヒイロ?」
「おまえが俺を抱いたりしないって点だ、」
唇が降りてきて、舌が自分の唇の形をなぞるように動く、それでも、俺の頭の中は??だらけだった。
驚きで動けない俺から、さっさと上着のファスナーを降ろす。
「ま、待て、ヒイロ!!」
「俺がおまえを抱くんだから、」
口元で囁いてから、するりと舌が入り込んできた。
End
かりん様から戴きました。
小説を戴いたのは初めてです(^‐^)
デュオの慌てぶりと、ヒイロの余裕さが、楽しいです。
勝手にコメントしてしまうのも申し訳ないので、軽くご紹介まで☆
どうも、ありがとうございました。