10.1【医者が哲学を持たずにインフォームド・コンセントをすると…】

たしかに病気の持つ意味、なぜ自分がその病気にならざるを得なかったのか、それを納得することからも治癒のスイッチが入るものだ。さらに、病気の先にある死を恐れずに真っすぐに見つめ、それを受容することで、心が穏やかになり、それをきっかけとして治癒力が引き出されるということもある。がんの告知をする時など、医者がこうした哲学を持っているかどうかで患者の心理状態は大きく左右されることになる。
 最近、インフォームド・コンセント(告知に基づく同意)が盛んに取り沙汰され、それと共にがん告知時の余命宣告が当たり前のようになりつつある。いうまでもなく医者と患者で病気に対する理解を共有することは、治療を進める上でとても大切なことではある。が、しかし、そういった宣告をする医者が心のケアーについて十分に分かっていない場合は、患者の心をかえって死の方向へと呪縛してしまう危険性が高い。
たとえば、「あなたの命はあと六ヵ月です」と不用意に話してしまうと、患者はその期日に合わせるがごとくに亡くなってしまうことが多い。余命というのは、病気のステージに基づいて統計学的には95%が亡くなる、というデータである。なんの説明も、希望も、フォローもなく、ただその数値だけをむき出しにしていってしまうと、患者には強い暗示のよう働いてしまうのだ。それほど医者の言葉は強力で、それを受ける患者は無防備なのである。しかし実際は、本人の努力、周囲の協力、そして良い治療法に出合うことで、余命もQOLも全く違ったものになるのである。





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