「壇ノ浦サービスエリアで休憩します」
4月28日
北九州市内の停留所を経て、九州道から福岡都市高速へ―終着地は天神バスセンターです。
その前に博多駅交通センターを経由するのですが、都市高速の“博多駅東ランプ”は
駅から東福岡高校へ至る途中にあり、窓の外には登校途中の学生が数多く見られました。
天神にある中央郵便局前から、バスで西戸崎へ向かいました。
アビスパは練習スケジュールを事前に月単位で発表するのですが、
実際は、選手自身も寮に朝張り出されて初めて動けるという話なので、“空振り”は覚悟の上でした。
“空き地”の駐車スペース―その横には公衆トイレ―に車はありませんでした。
3月に訪れた時は赤味を帯びていた丘も、鮮やかな緑に塗り変わっていました。
土が見えるのは中央部分ぐらい―ここを練習で使っているものと思われました。
スパイクの跡を探しましたが、見つかりませんでした。強かったという朝の雨で流されたのでしょうか?
デコボコした感触だけは、変わりなかったのですが―脇にはシロツメクサが生い茂っていました。
遮るもののない環境ゆえか、葉や花の丈は低く、そのかわり横へ広がっています。
たとえるなら、それは白い斑点を散らした美しき緑色の絨毯。
Be in clover―クローバーは土地を肥沃にするので、英語では裕福さの象徴なのですが。
西戸崎駅に歩いて戻り、JRで雁ノ巣駅へ。レクリエーションセンターの球技場へ向かうと、
「前田、中しぼれ!」
31番と背に入ったシャツの上に黄色の3番ビブスをまとい、自陣後方に立つ隆さん。
到着したのが練習開始予定時刻から1時間半以上過ぎた後だったので、程なく終わってしまいました。
コーチの指示に従ってクールダウンした後は、みんなでゴールを片づけます。
フルコートを使わないので、片方のゴールはピッチの中央付近にあり、そこだけ芝がはげています。
そのまま放置するわけにいかないのです―ここはみんなの球技場ですから。
ぱらぱらと引き揚げる選手たち―ボールなど分担して運びながら―の後ろで、
隆さんは一人、いくつも重ねた赤いコーンを抱えて戻ってきました。
多くの選手がミズノのスパイクを履く中、ナイキを履いているのが目につきます。
阿江さんと田草川さんだけが残って、スタッフとランニングしています。
Aコート見学席の入口に、報道並びに見学者へのお願いという、前回見かけなかった看板がありました。
セットプレー練習中は、ビデオ撮影ならびにメモは遠慮してほしいとあります。
某J1クラブの監督がファンサイトの情報を重宝していると聞いたことがありますけど、
カメラをクラブハウス側へ向けているFBS同様、私も配慮しなければならないようです。
ふとそのクラブハウスへ目をやると、鏡の前で鉄アレイを上げ下げする背中が見えました。
14番―右膝の骨が欠けてしまった山下さんです。移動する時は、右足を引きずります。
ロッカーからは、氷が擦れ合う音や石けんの匂いが漂ってきます。
筋トレを終えた山下さんは、建物にある小さな窓を笑顔で開けたり閉めたりしていました。
トップの練習は、正午を過ぎても終わりません。
どうやらピッコリ監督は、山下さんの離脱した前線に不安を感じているらしく、
自分がFW出身だけあり、他のストライカーへマークの外し方を実演付きで教えています。
もう一人の「マエダ」―前田浩二さんは周回ランニングでタイムを測定中。
私の目の前、Aコートの出口付近では泰年さんと平島さんがリフティングで遊んでいます。
泰年さんの片足でボールをこね回したり、肩から肩へとボールを横断させたりする“模範演技”を見て
平島さんもトライするのですが、なかなかうまくいかず、先輩に笑われています。
結局、全練習が終了したのは12時半頃でした。
海の中道まで歩いて―いくら花盛りとはいえ炎天下の4kmはきつかった―戻り、ももちへ船で渡ります。
目的地は福岡市総合図書館。全国紙や地元紙に加え、スポーツ紙も3種類揃ってました。
「中日新聞」や「中国新聞」もありました―私はひたすら「西日本スポーツ」をコピーしました。
4月29日
隆さんがクラブハウスから外へ出てきたのは、一番最後でした―あまり慌てたりしてないんですが。
はじめはパス練習。隆さんは仲良しという小森田さんとのペアです。
ただボールを交換するだけでなく、互いにヘッドで競り合ったり、相手のボールを止めたりもしてました。
ダッシュの後は、試合前日ゆえかセットプレーを徹底的にやっていました。メモが取れません。
まずはCK。守備を想定した場面からスタートし、やがて攻撃のシーンへ。
隆さんはどちらでもゴール前にいます。CKでの得点も期待されているのでしょうか。
キッカーは浦本さんなのですが、一度、余程良かったのか「うわ、いいボール」と呟いたりしてました。
小森田さんと組んでのショートコーナーなど、右CKから左CKと、念入りにパターンを作っていました。
続いてFK。壁を作って守り、マイボールにしたらそれを起点に攻撃へ移る・・・のですが、
隆さんは壁ではなく、壁の選手へコーチが指導しているインターバルには、
落ち着きなくウロウロしていて、他の選手へやたら話し掛けたりしていました。
それが終わると、3人1組でボールを交換して攻め上がるシュート練習。
前田(隆)・小森田・浦本組に限った話ではないのですが、とにかく決まりません。
隆さんが右サイドへまわって上げたクロスはものすごく綺麗で、
それを頭で合わせた小森田さんが浮かしてしまった時は、嘆息してしまいました・・・。
最後はゴールを“例の位置”に運んできてのミニゲーム。
手を傷めている―前日そのことを小島さんに笑われていた―田草川さんはいなくて、
キーパーが阿江さん一人なので、そちらへ攻める形で始められました。
(ある程度時間が経つと、攻守が交替するのです)
前のメニューまでオレンジの1番ビブスを着ていた隆さん、黄色の6番に替えています。
そのプレーは落ち着いていると評すべきか、切迫感がないと書くべきか、よく分かりません。
あと5分とか、スタッフがとても時間を気にしていたんですが、その理由は周囲を見れば一目瞭然。
フィールド横には、次のユーザが控えていたのです。しかも、どうやらどこかの大学生チーム。
料金表を確認したところ、Bコートは2時間3000円、Cコートは同じく3600円で借りられるのです。
18歳以下のチームなら、更に半額―Bコートでは少年サッカーが行われていて、
その選手たちや父兄がCコートで練習する“Jリーガー”に熱い視線を送っていました。
ダウンを済ませ、円陣で話を聞いた後、またゴールを運んで打ち上げ。
引き上げの際、隆さんが逆にBコートの試合を眺めていました。
アビスパも、Aコートを2時間11000円で借りている一ユーザのようです。
ある意味、この距離はJクラブの理念に近いものがあるかもしれません。
そんなことをぼんやり思っていたら、隆さんと目が合い、頬が焼け焦げそうに熱を帯びました。