Hillock


丘の向こう、道路の反対側に、2つのゴールやビブスをまとった人影を
認めた瞬間の衝撃は、ちょっと言葉にならない・・・。

アビーの絵が描かれた車など、何台かが駐車された地点からグラウンド―草野球場?!―を眺めます。
見学ポジションの取り方を悩んだ末、“バックネット”横にあったベンチへ腰を下ろしました。
選手がボールを蹴っているあたりからは、結構、距離もありましたが。
ざっと見ると、選手10人に対し、コーチが1人で指導にあたっています。あと、スタッフが3名。
到着がかなり遅れたので、メニューはレッスン半ばといった感じ。
オフェンスの2人へディフェンスが2人がマークにつき、そのかけ方と外し方を練習中。

25番のオレンジビブスを着る前田さんは、もちろん守備側。
交代で指導を受け、残りの選手はインターバル、ピッチ脇をランニング―“軽く走る”のが
本来だと推測されるんですけど、前田さんはウォーキング、距離も短めです。
何より、その表情はリビングデッド―昨日楽しすぎた反動でしょうか、相当お疲れの模様。
両膝に手をついて、頭をガックリと下げられては、見ているこちらは心配せざるをえません。
コーチが前田さんをえらく怒っています。身振りから察するに、身体の入れ方に難があったようです。

出たり入ったりを繰り返した後、5対5のミニゲームに移りました。
アビスパにはGKが3人―小島さん・塚本さん・田草川さん―しか在籍しておらず、
同時刻にトップが雁ノ巣で練習しているので、ゴールを守るのはコーチとスタッフです。
前田さんは姿勢や歩き方が独特なので、遠くからでも割とよく分かります。
周りと見比べて、そう大柄でもない事実に気づいて、ちょっとビックリしました。
東福岡でも、他のDFより背が高かったわけではないのに、“大きく”見えていたのは
“存在感”ゆえだったのでしょうか―同期の高卒にCBが2人いますが、一番小さいのが前田さんです。
(もっとも、前田さん178cm/原さん179cm/加藤さん180cmで、大して変わりませんが)

前田さん、フィードをミスしてガックリしてます。パスの精度もいまいち。
一番の見せ場は、右サイドを駆け上がり、右足を振り抜き左サイドネットへ叩き込んだ
豪快な一撃でしょうか―聞けば、CBのみならず、右SBでも使われているとのこと。
クールダウンの後、輪になってコーチの話を聞き、練習終了。
ボールやコーンなど器具を集め撤収―ここには物をしまう場所や着替える箇所などありませんから、
汗をぬぐうのは、どこかへ移動した後になります。雁ノ巣でしょうか?

選手たちはグラウンド脇の斜面に座ってスパイクだけ履き替え、車3台に分乗します。
コーチに許可を取り―「俺とは話してくれないのか?」と笑ってました―前田さんを呼び止めます。
写真へサインをお願いすると、当たり前ですが 31 を添えます。
昨日と今日とで顔が変わるわけないのに、“違う顔”をしている・・・。
強引に現像した前日―卒業式での写真を渡すと、おっという表情を見せました。

追い出し試合の“目玉”―前田さんと山形さんのユニフォーム&ポジション交換の
提案者を尋ねると、例の甲高くかすれ気味の声で、さらりと答えてくれました。
「あ、山形です」
恭平さんに聞いたら、きっと隆と答える―なぜかそう思いました、即座に。

ベンチへ忘れ物を取りに戻った帰り、罪悪感も覚えつつ、唯一グラウンドへ残された
ゴールの片方へと近づき、前田さんたちが練習していた地面をじっと見つめました。
スパイクの跡が土に―毎日二部練習しているから草がはげてます―たくさん刻まれています。
何度かジャンプしてみると、足の裏からその硬さが伝わってきました。
刻まれていたのが固定式スタッド―硬いグラウンド用―の跡だったので、
ある程度は覚悟していたのですが、想像以上の感触に背筋が寒くなりました。

これが、J1クラブの、サテライトの選手が練習する“グラウンド”。


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