三宮から地下鉄に揺られること27分[360円]、降り立った西神南駅は
ニュータウンの中央に設置されていました。駅を中心に左右対称の区画が設定されているのです。
改札を左に曲がり、つつじの咲き乱れる人工的な住宅街を2.3km、ひたすら歩きました。
(行かれる方へ:駅前にしか店がないので、買い物は済ませてから移動しましょう。バスもあり)
球技場は“いぶきの森”のはずれ、道路を挟んで2面あります。
開始まで約2時間、片方のコートでスタッフがベンチテントやコーナーフラッグを準備していました。
ややあって、何台ものタクシーが到着しました。降車するのはスーツの集団。
その中で真っ先にミゲルを発見し、それがサンフレッチェご一行であること、ならびに
今日は出場メンバーの平均年齢が高くなることが分かりました。
雷鳴がとどろき、横殴りの雨が吹きつける中で、ヴィッセルがアップを開始します。
(雨具を持参せず、照明板に隠れて雨をしのいでいた私へ傘を貸してくださった
和歌山ナンバーのホンダ車に乗っていらっしゃった女性の方、どうもありがとうございました!!
あと、練習場の構造を私へ聞かれた関西弁の女性の方、嘘教えてしまいすみませんでした。
ファンもグラウンドをぐるりと一周できるとは知らなかったんですよ・・・)
親の車に乗せられて、ヴィッセルの下部組織の子が続々と到着。観戦するようです。
「山形くん出るかなぁ」
遅れて出てきたサンフレッチェの選手を見て、つぶやく女性ファン。
実際、彼だけをめあてに来ていた人も少なからずいたようでした。
欧州流を志向するサンフレッチェのアップは、全員が定められた動きをするシステマチックなもの。
黄色いビブス―そういえばトルシエジャパンでもアップでは組分けが―をまとった恭平さんは、
フィールドプレーヤーでは最初にピッチへ出てきました。今日もかなり元気です。
「あーっ」
パス交換でボールがぶれて足元へ収まらなかった時には、
そう声をあげて、スペアのボールをスタッフへ要求していました。
降りしきる雨で濡れたビブスとウインドブレーカーを脱ぎ、“戦闘装束”へ着替えに戻ります。
【サンフレッチェ】
ミゲル[32] 上野[15]
山口[9] 山形[25]
宮崎[30] 吉田[29]
森崎(浩)[22]
宮澤[2] 松下[26] 川島[16]
佐藤[21]
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【ヴィッセル】
薮田[20] 長田[7]
大塚[32] 瀬沼[19]
菅原[23] 森[28]
松尾[26] 藤原(Y)[12]
北本[27] 谷池[24]
掛川[1]
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キャプテンは広島が松下さん、神戸が掛川さん―どちらも円陣を組んでからキックオフです。
序盤から激しくやり合いますが、両チームともなかなかフィニッシュまで至りません。
ボールが大きくクリアされるたび、グラウンドを囲むネットを越えてしまい、
スタッフが一生懸命探しに行ってました―最後にはスペアボールが足りなくなる程でした。
主導権をつかんだのは神戸。右足にテープを巻いた薮田さんを中心に攻め込みます。
右の攻撃的MFで先発した恭平さん、前半は観客の目の前がプレーエリアです。
一週間前は動くごとに揺れたサラサラの茶髪へ、パーマがかかっていました。
松尾さんからボールを奪取し、十八番のドリブルを仕掛けます。
ファウルで止められると、リスタートでは素早く後ろへ下げました。
もっとも、まだまだ周囲との呼吸が合っているとは言えず―味方が預けたボールを簡単に失うと、
大声で言葉にならぬ苛立ちを吐き出し、舌打ちしてしました。
「おー、魅せてくれるね恭平くん」
試合中、終始辛口の論評―恭平さんにも―を続けた男性ファンが唸ったのは、サイドへのはたき。
他に、ミゲルや優作さんのポストプレーを生かして、二列目から飛び出そうとする動きが顕著でした。
脇へ抜け出そうとすればタッチラインを割り、中央から飛び込もうとすれば倒されていたんですが。
「いいぞー恭平!」
ベンチからも、持ち味を出そうとする姿へそんな声が飛びます。
ただ、相変らずポジションはチームメイトから常時修正されまくり、
CKのクリアに際してヘディングで競った時は、ボールを見失ったりもしていました。
とはいえ、先輩にも臆せず指を差し、負けずにコーチングを浴びせかけます。
傷んだ選手のために生まれたインターバル―給水している恭平さんの横へ、
ポジションの近い“オッツ”こと大塚さんが、同じく水分補給にやってきました。
ボトルを取り、喉を潤しながら互いを見つめ、微笑み合う二人。
恭平さんがこんなに“柔らかく”笑うのを、初めて見ました。
大塚さんは東福岡のライバル・東海大五からヴィッセルにトレーニーとして加わったのですが、
赤と黄黒という違う色のウェアをまとう前は、二島中で同じ白星を追いかけていたのです。
ゲームを通して、何度もマッチアップしましたが、意識しているように見受けられました。
先制したのは、押し込まれていたサンフレッチェでした。浩司さんのFKを押し込んだのは宮澤さん。
この前後、恭平さんが右サイドを進出した優作さんへボールを出し、
優作さんが落としたところへ山口さんが詰めるも決められなかったり、
左サイドを巧みに斬れ込んだ宮崎さんからパスを受けたミゲルが浮かしたり、
サンフレッチェにいくつかチャンスがありました―流れはつかめる時につかまねばなりません。
さもなくば・・・藤原くんのクロスを薮田さんが頭で綺麗に叩き込んで同点とされてしまいました。
「トシさん!」
恭平さんが大声でボールを求めますが、持ち過ぎた山口さんは奪われてしまいます。
「ああ・・・」
目測でゴールキックを受け損なった時はそうぼやいてましたし、実に分かりやすい人です。
幾度かドリブル突破を試みたのですが、プロの当たりにまだ勝てないようです。
薮田さんがボールを持って攻め上がってきました。DF陣とGK佐藤さんが対処に入りましたけど、
最終的に引き受けた佐藤さんが止められず、勝ち越し点を許してしまいました。
「下向くな、下向くな!」
松下さんがパンパン手を叩きながら、味方を励まします。腕章を巻いているだけはあります。
本職でないポジションなのに、カバーリングが板についているのは評価すべきなのでしょうか。
ハーフタイム、選手は一度ロッカーへ引き揚げるのですが、
佐藤さん・川島さん・山口さんの3人はコーチにつかまって何やら言われていました。
後半開始直後、恭平さんが自らドリブルで持ち込み、決定機を演出しました。
しかしシュートはバーの上―本人くるりとでんぐり返って悔しがり、私も思わずジャンプして絶叫。
優作さんは筑波大の後輩・谷池さんのマークに苦しんでいます。
谷池さん、大学時代に比べたら随分髪が伸びていて、近くに来るまで分かりませんでしたよ・・・。
サンフレッチェは吉田さんに代え、ユースの流田くんを投入。
後半は、左サイドの宮崎さんが何度か前線へ進出して攻撃の起点となっていました。
その宮崎さんが中央へ斬れ込み、恭平さんにいいパスを出したのですが、
ショットを打つ前に北本さんがはじいてしまいました。
「アンパン!」
山口さんの声が響きます―本当に松下さんは『サッカーai』に書かれていた通り呼ばれていたのです。
宮澤さんがかわされ、長田さんに致命的な3点目を献上してしまいました。
ヴィッセルは大活躍の薮田さんに代わり、ユースの新保くんを入れます。
恭平さんはゴールラインを割りそうなボールを追いきれなくなるなど、
スタミナが90分持続しないのか、消えてしまう時間が多くなってきました。
ただ、運動量は激減しましたけど、最後まで闘志だけは消えませんでした。
「優作!! 優作!!」
ボールを持って右へ流れた優作さんに対し、中央へ入ってものすごい大声を張り上げます。
中盤後方でボールを得た浩司さんにも大声でボールを求め、右のライン際でDFを抜き去っていきました。
しかし、スルーパスを通したミゲルの一撃はバーに当たってしまい、終戦となりました。
ゲーム後、誰よりも先にユニフォームを脱ぎ、レガースを外していた恭平さん。
イレブンはヒックマン・ヘッドコーチを輪になって囲み、お小言を頂戴したのですが、
二の腕をさらけ出して水を飲み干す座像は、なかなかの男前。
もちろん、フェンス際のファンにも怒号が聞こえるような場所で
高校サッカーみたいな説教タイムが設けられるぐらいですから、首脳陣の怒りは相当なもの。
「君たちにサンフレッチェのユニフォームを着る資格はない」
今季サテライトリーグ初黒星にヒックマンが口にしたのは、大半が精神面に関すること。
もし帰りに少しでも笑顔を見せたら後ろから蹴るとまで言うので、出待ちするこちらはビクビクです。
サンフレッチェがロッカーとした建物にはシャワーがないらしく、選手は別棟までわざわざ移動。
ロッカーへ戻りユニフォームを脱ぐこともできず、ファンにつかまる松下さんがやっと解放されると。
「裕樹、裕樹、タオル2枚」
ピッチではキャプテンでも、外に出れば新人―別棟まで持ってこさせようとしたのは、優作さん。
(にしても、松下さんの呼称は一体いくつあるんですか? ユース代表では「マツ」ですが)
ご一緒した方が、一浴び直後でニュアンスヘアの恭平さんを捕まえて、写真をお願いしました。
この後、ロッカーに戻り、上着と先週も持っていた黒いバッグを身につけて再登場したのですが、
止まっていた車の窓で髪を直してましたので、先程の写真は本人的にはNGなんでしょう(笑)
クーラーボックスに座り、着替えの遅いチームメイトを待つところへ、もう一度お願いしましたけど。
掛川さんが湘南ナンバーのベンツに、谷池さんが神戸ナンバーのゴルフに乗って帰っていきます。
サテライトの後は下部組織の子が芝を使うのですが、ちゃんと帰るトップの選手へ挨拶してました。
サンフレッチェは、またタクシーを何台も呼び寄せて帰っていきます。
歩き出した恭平さんが足を止め声をかけた先には、自転車をいじっている少年がいます。
後ろにつけたカゴを外す白いTシャツの主は、大塚さんです。
一応かっちりスーツを着込んだ方も、半袖のシャツをまとう方も、同じ18歳のJリーガー。
大塚さんは恭平さんより4日前の生まれですが、なんてコントラストだか・・・。
タクシーが出発し、ヴィッセルの選手も愛車に乗って帰っていく中、
一台の自転車が門を出たところでファンにつかまりました。
サドルにまたがるのは大塚さん、後ろに乗っているのは北本さんです。
写真のリクエストに応じると、なんと北本さんが立ち乗りして自転車は下り坂を爆走していきました。
まるで高校生―直後、雨が降り始めたのですが、二人は濡れずに帰れたのでしょうか。