和服のお手入れ

 和服の欠点は、シルク(正絹)は手入れがたいへんだということ。日本国内に住んでいる分にはいいのですが、海外に住むとなると、自分でお手入れできなくては困ります。もちろん、お金が十分にある人や、仕立てができる人はこの限りにはありませんが。

 ドライクリーニングは着物の丸洗いではないので、出すと悲惨なことになる可能性がありますし、特に、アメリカのクリーニング屋さんは決して、上手とは言えませんので出さない方が無難です。

『洗える着物』:木綿、麻、ポリエステル

 自分でお手入れのできる着物としては、ウールや木綿、麻の着物です。もちろん、単衣(胴裏や八掛と呼ばれる裏の生地をつけない仕立て方)で仕立てます。単衣だと自宅でウールマーク洗剤シャンプーで手洗いできます。

 特にウールには静電気防止作用が必要ですから、柔軟仕上げ剤は是非、しましょう。他の着物も冬場や乾燥地域では必要です。
 洗った後はそのまま着物ハンガーにかけて風呂場で乾かします。全館冷暖房で乾燥の強いアメリカの中部ではすぐに乾いてきます。なま乾きの状態でアイロンをかけるときれいに仕上がります。しじら織の木綿やちぢみ麻でしたら、ノーアイロンでもOKです。しぼりはアイロンをかけないように。


 麻は夏用ですし、サマーウール以外のウールは厚手ですので、単衣でも大丈夫ですが、木綿は単だけでなく、冬用に袷で仕立てることもあります(後で調べると、木綿の袷は普通ではないそうです)。綿の八掛や胴裏は今ではなかなか手に入るませんので、紬用の八掛といった絹製品になってしまいます。そうすると木綿でも部分洗いしかできません。食べ物が着いた部分を洗えるというだけでも大分メンテナンスに違いが出ますので、全部が絹よりは楽です。

 ポリエステルの裏という方法もありますが、静電気がひどくて乾燥する冬場は悲惨です。また、木綿は縮みますので、家庭で何度も洗っていると、裏と表がずれてきます。

 よそいきには東レのシルック帝人の大野ちりめんなど高級ポリエステルが便利です。インターネットで検索すれば扱っているお店はいくつもありますし、日本橋の三越本店や池袋東武をはじめデパートで扱っています。高級ポリエステルは金糸などが使っていなければ、自宅で洗えます。錦糸があるものはポリでも自分では洗えませんので、購入の時から注意したほうがいいと思います。
 絹でも手触りの悪いものからいろいろあるように、ポリエステルの着物にはランクが色々あります。高級ポリエステルは絹の安い着物以上に高価です。あくまでも海外生活のための投資と割り切って使っていました。

 ただ、化学繊維を化繊、代用絹とワンランク下に見る人も多いですが、化学繊維は絹の代用ではなく、絹以上の機能繊維を開発者/研究者は目指しているわけです。需要が高まれば会社の方も投資してくれますので、もっと手のかかる手法での製品も開発/販売が可能になります。工業製品の常として、大量に売れるようになれば単価は下がるのですから。また、今はポリエステルを上手に扱う職人さんは存在しませんから、あくまでも大量生産で、企業的採算を考えた商品しかありません。いつの日か、最高の機能繊維が商品化されて、それを扱える職人が出現して、新しい繊維文化が出現するのを願っています。
 ただし、高級ポリエステル繊維の着物の仕立てはどこにでも頼めると言うわけではありません。下手な仕立てでは洗うとつれてきたり、ろくなことになりません。絹製品だと中国やベトナムなど海外で縫うので驚くほど安い仕立て代のものもありますが、機能繊維は海外縫製には出すような安い仕立てのところでは頼んでは決してだめです。

 ポリエステルの仕立て上がりなら160cm(M)と163〜5(L)cmの2サイズが1万円〜で売っています。裄が68cmと長いのでみっともないですし、Sサイズは仕立て上がりではめったに見かけません。東京なら東武デパートと日本橋三越でいくらか見つけました。さすがに1万円以下のモノはそれ相応の品ですが、それなりの値段のものなら、ちょっと良いスーツやワンピースを買うことを考えれば、安いですし、日本人体型向きですから、海外で着るのには便利だと思います。(経験上、洋服はコーカソイドの着物ですから、勝負になりません)

『洗えるコート類』

 道行きや道中着などのコートはやはり自分で洗濯は難しいです。無松庵などから出ている洗えるコートや一般のドライクリーニングでできるという表示のものであれば、アメリカの乱暴なクリーニング屋さんでも大丈夫です。

 内陸などとてつもなく寒い場所ではウールやフリースのマント型のコートをはおればよいです。私はアメリカでネイティブアメリカンのマントを購入して、日本でも防寒に使っています。模様が着物にもマッチしています。娘には無松庵の大人用のショートコート/マント型を着せていますが暖かいようです。これらもクリーニング可能です。

『洗える襦袢』

 洗えるポリエステルの仕立て上がり長襦袢なら1万円以下で手に入ります。仕立て上がりで売られている長襦袢の多くは2部式なので着付けも楽です。反物から仕立ててもらう時にも2部式を頼んだ方が良いくらいです。ただし、静電気問題は残ります。ポリエステルでも、シルック素材のモノはかなり静電気も少ないです。しかも、シルック長襦袢は色柄と豊富で、お洒落着には素敵です。単衣用も夏用の絽目のモノもあります。


 海島綿という高級綿素材でしたら、絹に匹敵する手触りです。夏物長襦袢として便利です。柔らかものの単やうすものの絹着物でも下に着用可能なほどです。ただし、値段も高いです。

 綿のレース生地の長襦袢も袷の便利です。夏場は麻の長襦袢なら涼しくて、洗濯も簡単ですので活用できました。最近はあまり見かけませんし、見かけてもよほど上等なのか、洗ったらダメというものがあります。

 麻の襦袢も洗える定番の襦袢です。ただし、麻は縮むので、仕立てる前に水で十分に縮ませることが必要です。乾きが早いので、夏には重宝します。上布の麻であれば、かなりのしなやかさがあるので、春、夏から秋まではなんとか対応できます。ただし、そのような麻襦袢は3、4万から7、8万と正絹以上の値段がします。

『絹ものを洗う』

 刺繍や錦糸のない単衣ならシルクでも家庭で手洗いできるものがあります。水をたくさん(アメリカだとバスタブ)を使って、手洗い用の洗剤を使い、押し洗いをします。ごしごしはだめです。すすぎも手早く。軽く押して絞ったら、そのまま着物用のハンガーにかけて干します。アイロンをかけてできあがりです。

 ただし、絞りやしぼの大きいちりめんは収縮の後始末とアイロンがけは素人では難しいです。まあ、単衣や薄物では縮みやすい布や手入れの難しい布を使っていないとは思いますが、海外で着用&手入れを考えて、生地から吟味して購入した方が無難です。

 ソフトコースの洗濯機で洗える絹の着物もいくつかの織元から出ています。組帯で有名なひなやさんからは、サンムーンという商標で、ミシン仕立てで洋服のように縫った(縫い目がロックミシンになっている)単衣の着物、羅の帯、夏用絹帯締、夏用羅帯揚げのセットで10〜20万円ほどで手にはいります。

 ひなやさんの名に恥じない、染めの自然な美しさが楽しめます。しかもトータルで、小物も同じ糸から織ったものなんて贅沢が楽しめます。

【伊豆蔵さんって天才だなあと思います。私の顔を見て、一目でこれが私には似合うって決めていただいたのですが、ほんとうにぴったり】

 ただし、このタイプの着物は着物本来の良さである仕立て直しができません。サイズもワンサイズです。染めが美しいから海外で日本の草木染めの美しさを手軽に示すためにはお勧めです。(http://www.nichi-getsu.com/)

 アメリカでは家庭でできるドライクリーニング剤が売っていますから、袷でも自宅で洗濯が可能です。日本で売っている洗剤は洗濯機でおこなう「ドライマーク」洗剤なので不可です。あくまでも、アメリカで売っているような乾燥機専用のドライクリーニング用有機溶媒です。
 ただし、これは体脂汚れをとれるのですが、理論的に汗しみなど水溶性のしみは取れませんので、汗をたくさんかく単衣の夏着物は水で洗った方が良いです。

 長襦袢も洗えるシルク製品が既製品であります。装道などの会社から出ている、白、黄色、ピンク、ブルーの無地は礼装用にはぴったりです。ただし、永年きていると、形が崩れてきます(って20年もたてば、仕方がないかも)。

 注意すべきは、国によっては和服は避けた方がいいかもしれません。アジアでは、やはり戦争の記憶のある方がたくさんいらっしゃいます。
 韓国ならチマ・チョゴリを着れば日本人にも似合います。私はウールで仕立ててもらったので暖かですし、中に着込めますので、冬に重宝します。洗濯も箔がない生地で作ってもらったので、ドライクリーニングで大丈夫です。夏なら麻(日本の苧麻、韓国のモン)のものは涼しくて、上等なものであれば礼装にも使えます。日本国内でも大阪の鶴橋では誂えが可能です。東京も上野近辺でそういうお店があると聞きました。
 香港でチャイナドレスを仕立てるのもいいでしょう。ただし、シルクチャイナドレスも下手なクリーニングに出すとダメになるそうです。中国人の友だちがお気に入りのドレスをダメにされたと嘆いていました。

着物を購入する

 昔は出入りの呉服屋さんってものがありました。最近は廃業したり、代が変わってつきあいがなくなったり、お茶人向きのものしか扱わなかったりします。ましてや海外で購入は難しいです。
 でも、大丈夫、ネットで探せばは海外発送もやってくれる所もあります。ただし、郵便事情を考えると注意は必要です。郵便ならEMSかFEDEX、UPSがまだ安心でしょう。それでも、どうしてもという着物は、心のために郵送しない方がいいかもしれません。

海外からネットで買える着物のサイト紹介


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