Operation 18.0

涙の誓い(Cパート)

 

  部屋に戻ると、秀明と戸波ともう一つの布団に誰かが寝ていた。びっくりしてそっとめくってみると、布団を丸めた物やら何かのお面みたいなものが出てきた。どうやら点呼のカモフラージュで偽装工作をしたらしい。二人ともまだ寝ているようなので、着替えもせず、そのまま布団に潜り込んだ。ちなみに学生服ではなかったので、このまま潜り込んで寝ていても問題にはならないだろう。布団に入って5分と経たないうちに睡魔が襲ってきた。

 


 

 「こら、起きろ」

 布団に入ってからの初めて誰かに声をかけられたのは、この言葉だった。ゆっくり目を開いてみると、遮光カーテンも既に開けられていてまぶしかった。目が慣れてくると、目の前にいたのは秀明だった。

 「ああ、もう起きる時間か」

 「はやくしないと朝飯に遅れるぞ」

 「ああ」

 掛け布団は半分くらいはだけていた。たぶん暑くて寝苦しかったので、自分で剥いだのだろう。素早く布団を押し入れに押し込み、制服に着替え始めた。すると、一番奥はまだ寝ている。戸波だった。

 「彼は?」

 「寝てる」

 「・・・・・そりゃ、見ればわかるって」

 彼の布団を引っぺがした。

 「ひっ!・・・な、何するんだ・・・・・って有間君、いつ戻ってきたの?」

 戸波が慌てて飛び起きた。そして、僕の顔を見るや否や尋ねた。

 「もう忘れた。直ぐ寝てしまったので」

 実際、何時に戻ってきたのか確認する前に睡魔に襲われてしまったので、わからなかった。たぶん3時頃だったと思う。

 「何してたんだ?」

 戸波が何故か顔を真っ赤にして尋ねた。

 「秘密」

 と答えると、困ったような顔をした。

 「おまえね。そういう野暮な事聞くなよ。それよりおまえはどうだったんだよ。あの美少女マニアの桜とは」

 秀明がおもしろそうに言った。実際には俺と宮澤のことには触れないようにしてくれているのだろう。出かける前の重苦しい雰囲気が解消されたかどうかわからないのだから、当然かもしれない。

 「な・・・・なんにもない。俺達は健全なんだ」

 「それこそが不健全なんじゃねーの?健康な思春期の男女の言う台詞かねー」

 「う、うるさい!着替えて先に食堂に行ってるぞ」

 いつの間にやら着替え終わった戸波は布団も片づけずに逃げるように部屋を出て行った。着替え終わったというよりも、元々着替えないで寝ていたのではないかと思われる。

 「じゃあ、俺たちも食堂行くか」

 秀明はそれだけ言うと、立ち上がった。

 「秀明・・・あのさ・・・・」

 「ん?」

 立ち止まって次の僕の言葉を待った。真剣なまなざしを僕に向けている。

 「昨日のことだけど、宮澤、もう大丈夫だから」

 「ふーん・・・・・・大丈夫とは意味深な・・・・・・・」

 ニヤニヤしながら応えた。

 「いろいろ迷惑かけたな」

 「まあ、いいってことよ。気にするな」

 そういうと、僕の肩を2回叩いて部屋を出て行った。

 「ありがとう、秀明」

 彼が友人だったことを心から喜んだ僕だった。

 


 

 食堂は既にほとんどの生徒が来ていた。バイキング形式の朝食になっていて、和洋中好きな物を好きなだけ食べられる。とりあえずトレイをもって、列に並んだ。

 ≪トントン≫

 背中を叩かれた。振り返るとそこには宮澤がいた。

 「おはよう。有間君」

 「おはよう宮澤」

 そこまでは普通に会話できたのだが、宮澤は顔を真っ赤にして視線を不自然に反らした。確かに昨日のことを思い出してしまえば恥ずかしくもなるのだが、今は朝食に集中した方がいい。そうしないと補給不足で今日一日のスケジュールに影響しかねない。が、1つだけ気になることがあった。

 「宮澤、体は大丈夫?」

 昨日は歩くのも大変そうだったので、聞いてみた。今日もまだ調子が悪いようならやっぱり見学コースのルート変更なども考えなければならない。

 「だ、大丈夫、全然、その・・・無問題よ!ふぁいん・さんきゅーです」

 『何故に外国語連打(^-^;』

 ちょっと動揺気味の宮澤が心配になったが、とりあえず、食事でもすれば落ち着くだろうという安易な考えに落ち着き、適当にトレイに載せ始めた。

 「あ、有間君、私にもそのスープ取って」

 「ああ」

 自分もトレイに載せたポタージュスープらしいカップを宮澤のトレイにも載せた。続いてクロワッサンなどのパンやサンドイッチ、など、パン食中心のメニューで構成していく。ヨーグルトやオレンジジュース、和風ドレッシングのサラダ 、ベーコンエッグなどと、漬け物、梅干し、温泉卵なども小さなお皿に載せた。たまに宮澤が「私にもそれ」と言ってくるたびに載せてあげた。宮澤はご飯中心らしい。鮭の切り身やみそ汁(スープ飲むのに?)、海苔、豆腐サラダなどだ。スープとヨーグルトとオレンジジュースはご愛敬というところか。とりあえず、トレイがほぼいっぱいになる程度に載せ終えた僕らは、窓際の4人がけのテーブルに座った。

 「じゃあ、いただきましょうか」

 「そうだね。・・・・いただきます」

 「いただきます」

 宮澤は箸を使ってみそ汁から、僕はスプーンでスープから食べ始めた。お互い、言葉を交わすことはなかったが、眼があうたびに微笑みあう。たぶん第三者が見れば『何やっとるんだ、こいつら』と思われたかもしれないが、当人達はそんなことを気にしていなかった。

 「なんか秋だっていうのに暑いわねー。なんでだろう」

 「ひゃーっ!」

 宮澤の背後から忍び寄ってきた沢田が宮澤の耳元付近で呟くように言った。宮澤は突然のことに飛び上がって驚いた。

 「やっほ。ゆきのんダーリンと朝ご飯食べたいからって同室の私達をほったらかしにして行っちゃうなんて酷いんだ」

 「え?」

 そういえば、確かに一緒に宮澤は一人で食堂に来ていた。てっきり僕の場合のように先に行かれてしまったのかと思ったが、そうではなかったらしい。

 「そ、そんな。だって、みんな朝ご飯いらないから一人で食べに行ってって追い出したじゃないの!」

 「えー、そんな、朝は一日のエネルギーの源なんだから、抜きにするわけないじゃない。きっと有間と一緒に朝ご飯食べたかったゆきのんの妄想よ」

 「え?・・・・・・・そ、そうなのかな・・・」

 真剣に悩み始めた。瀬奈が困った顔をして沢田の脇腹をつついた。

 「バカいってないでよ。綾がゆきのんを先に行かせて有間君とラブラブなところを観察しようって言ったんじゃない」

 見事に作戦をばらしている。

 「あちゃー、理香、ばらしちゃだめでしょ。これからだって時に。まだ1杯のオレンジジュースをストロー2本で飲むところとか見ていないのに」

 「するかっ!」

 俺たちをおもちゃにしている沢田に抗議するが、まったく応えていない。

 「してよー。別に口移しでもいいけどさー」

 「アホーっ!」

 せっかくのいい雰囲気が台無しだ。気を利かせてくれた秀明達とはえらい違いだ。やっぱり、この辺が、男女の考え方の違いなのだろうか。

 「ここ良い?」

 伊沢が僕の隣の席を指さした。

 「・・・・・・別に良いけど」

 本当はほっといてほしかったが、社交辞令的に答えた。

 「全然良くないって感じだね。『ダメ』オーラが体全体から出てるよ」

 「じゃあ、ダメ。あっち行け、しっしっ」

 伊沢がからかおうとしたので、ストレートに追い払うことに決めた。

 「イヤよ。座るから。いいよね。由紀野」

 「え・・・いいけど」

 伊沢は気弱な拒否しかしなかった宮澤の言葉をその表面上の意味のみ有効にして、どかっと僕の隣に座った。

 「別に良いじゃない。みんなで食べた方がおいしいって」

 「そうだね」

 結局、隣のテーブルに桜や瀬奈、柴姫達も座った。それぞれ個性的なメニュー(桜の「パンと納豆」の組み合わせは驚いたが)だ。

 「宮澤、とりあえず、気にしないで食べよう」

 「そ、そうね」

 食事を再開した。隣に座った伊沢も食べ始めた。

 「有間、もう・・・・由紀野は大丈夫?」

 少し真剣な表情で聞いてきた。宮澤にも視線を向ける。僕が視線を向けると、宮澤はにっこりと笑みを浮かべた。

 「うん、もう大丈夫だよ」

 自信満々に応えると、伊沢も笑みを浮かべた。

 「そう。よかったね」

 桜や瀬奈達も笑みを浮かべた。みんな、僕と宮澤のことを心配していたのだ。心配していてくれたこと。そして、心配なくなったことを報告できたことが嬉しかった。

 「みんな、ありがとう」

 それは、ほとんど無意識に口から出た言葉だった。


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次回予告

花野「ラブラブ度が増したお兄ちゃん達は場所を京都に移して修学旅行をエンジョイしています」

月野「でも、次回予告っていっても、そのくらいしか決まってないんでは?」

花野 「そういうこといわないでよ」

花野、月野 「次回、カノカレ・・・・「未来への約束」=Iうおーっす!」

雪野 「・・・・・・・・ブツブツブツブツ・・・・・」

花野 「なんかお姉ちゃん機嫌悪いよ」

月野「細かいことは気にしない」


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