| -小説〔カレカノなクリスマス・後編〕- |
2000.12.29 |
「じゃあ、泊まっていけば?」
私が反論しようとしたときに、有馬から心臓が壊れてしまいそうなすさまじい言葉が飛び出した。
「と・・・・て・・・・な?」
頭の中真っ白とはまさにこの事だ。
「泊まっていきなよ」
頭の中で有馬の言葉がぐるぐる回っているような気がした。
● ● ●
「みんなも泊まっていけばいいよ」
『がくっ・・・・なんだ、そういうことか。』
何の事はない。有馬は私も含めてみんなを誘ったのだった。
「いえ、遠慮しておきます。邪魔しちゃ悪いですから」
花野が即答した。月野も頷いている。
「じゃ、俺が総一郎君と添い寝してあげる」
「いやだ」
あさぴんが再び靴を脱いで上がりこもうとしたが、それは有馬がきっぱりと断った。
「浅葉くーん。家まで送っていってください。怖くて帰れない・・・」
すかさず花野が目をウルウルさせながらあさぴんに懇願した。
「しようがないなぁ。メリーちゃんたちの頼みは断れないからな。有馬、悪いけど今日はいっしょに寝られないよ。ごめん」
「悪くない悪くない。だれがおまえと一緒に寝るか」
「もうっ、照れちゃってぇ。かわいいんだからぁ♪」
「気色悪い口調で言うな!」
有馬はあさぴんを玄関から締め出し、ついでに花野と月野はそれにくっついていった。本当に送ってもらうつもりらしい。
「ふっ、仕方がない。花野ちゃんの頼みでは断れないな。まっかせなさい。この俺が、どんな外敵からも守ってあげる。もちろん月野ちゃんもんだ。じゃあな」
3人は無事に(?)帰路についた。
「じゃあ、僕らも帰ります。行こうか、つばさ」
「うん!」
芝姫家の2人も仲良く帰っていった。
「じゃあ、宮沢、あたいらも帰るよ」
「あまり暴走しすぎて明日パーティ欠席なんて事にならないようにね。ひっひっひ」
「だめだよ。そんなことしちゃ。二人とも未青年なんだから。でも、ゆきのんに限ってそんな・・・・」
椿、亜弥、りかちゃんの3人がそれぞれ予測できそうな言葉をかけてきた。りかちゃんは何を想像したのか顔が赤い。
「宮沢、ほんとに泊まってくの?」
真秀が”意外”だ・・・という顔で尋ねた。
「泊まっていくっていうんじゃなくて、まだやり残していることがあるから、それを片付けてから帰るよ」
本当に残っているのだ。たしかに有馬と少しでも長くいっしょにいたいというのはあったものの、ビンゴゲームの準備やら、明日の進行についての詳細の打ち合わせとか、やることがいっぱいある。
「そう。わかった。じゃあ、邪魔しちゃ悪いから帰るわ」
「べ、別に邪魔とは言っていないじゃない」
「無理しなくていいって」
真秀はウインクすると、他の女子3人とともに帰った。十波も椿にくっついて一緒に帰った。
重厚な有馬の家のドアがバタンと閉まる。とたんに静けさが訪れた。
「じゃ、さっさと仕事片付けようか?」
「そ、そうだね」
有馬はいたって冷静だ。私はといえば、実はかなり落ち着かない。心臓がバクバク言っている。頭に血が上っているし・・・・・。
「ほらほら、宮沢、早く片付けないと」
『か、片付けないと・・・ってその後は・・・・ひぃーーっ!』
「そ、そうだねぇーーー。ははははっ・・・」
顔が引きつっていたに違いない。とにかく、居間に戻り、勤めて平静を装って残りの作業を終わらせることにしたのだ。
● ● ●
「終わったぁー」
結局、あれから2時間も準備に大忙しだったのだ。はっきりいって最初のそわそわなどどこかに吹き飛んでしまい。いつのまにか、いつもの学校の体育祭の準備のような状況になっていた。つまり、心臓バクバクなどといっている場合ではなくなってしまったのだった。まあ、私にとってはそれはそれでよかったのだが。
「ふう。こんなことならみんなに手伝ってもらえばよかったね」
有馬が伸びをしながら言った。
「そうだね。ま、終わったときの充実感があるから、それがせめてもの救いかな」
「さすが宮沢」
「へへ」
有馬が急に立ち上がった。
『ビクッ!・・・・・あ、有馬もやっぱ・・・男の子だし・・・・』
また、心臓バクバクモードになってしまった。頭にどんどん血が上っていく。
「宮沢、送っていくよ」
「・・・・・・・・そ、そうだね。ありがとう」
「あたりまえのことをするだけだよ」
考えてみれば、相手は有馬だ。そこらのナンパな男とは違う。ちょっとだけ拍子抜けをしたが、安心したのも確かだった。
「じゃ、遅くまでお邪魔しました」
「たいしたおかまいもしませんで」
私は有馬と共に彼の家を後にした。
● ● ●
駅までの道のり。既に22時を過ぎているので、人通りはまばらだ。車も少なく。冷たい空気だけが妙に強調されている。
「寒いね」
「僕はこの寒さは好きだよ。心が洗われるような気がして」
「・・・そうだね」
歩く速度が心なしか遅くなった。通り沿いには、ところどころクリスマスの飾りつけがされている家があり、イルミネーションが綺麗だ。その光が有馬の瞳にも映る。
「でも、有馬といっしょにいると、寒いっていうことを忘れそう」
「僕も。宮沢と歩いていると、このまま駅が遠くなればいいって思うよ」
有馬が立ち止まった。
「そういえば、みんなで交換するクリスマスプレゼントは買ったかい?」
「うん。まあ、安物ばかりだけどね。きちんと選んだつもり」
「そっか。僕も交換用のプレゼント買ったけど、宮沢には別のものも準備してあるんだ」
「えー!なになに!」
「それは、明日のお楽しみ」
「えーん、1日くらいいいじゃん」
「だめ」
「意地わるぅ」
「なんとでも言いなさい」
有馬は得意げに胸を張った。
そういえば、みんなでやるプレゼント交換のイベントのことばかり考えていて、有馬のプレゼントなんて考えていなかった。何たる不覚!今からじゃ、プレゼントを買おうにもお店は既に閉まっている。忙しさにかまけてなんて女なんだ。私は。
「ごめん。私、有馬用のプレゼント用意してなかった。・・・・・・恋人失格だよね」
「僕は宮沢がいてくれたらそれでいいよ」
うなだれる私の肩を、有馬がそっと抱き寄せた。
「有馬・・・」
「宮沢・・・」
有馬の暖かさが肩から伝わってきた。私も有馬の背中に手をまわし、抱きしめた。肩だけでなく、体全体で有馬の暖かさが感じられる。有馬のやさしい心臓の鼓動が感じられた。
有馬を好きになって本当に良かった。そう思った。
この日、私は今までで一番幸せを感じるキスをした。クリスマスのイルミネーションの中で。
● ● ●
有馬とラブラブな夜を過ごす・・・予定だった12月24日も終わり、翌朝のすずめの大合唱が耳に入ってきた。
「あ、頭が・・・痛い・・・・」
今日は12月25日。昨日のパーティの後半ははっきり言って覚えていない。別にお酒を飲みまくったつもりはなかった。後から知ったのだが、あさぴんたちがサービスと題して作った『デザート』に大量のお酒が入っていたらしい。確かに口に入れたとたん火を噴くような感覚が・・・・・ウォッカでも入れたのか?・・・・・とにかく、今度会ったら徹底的に事実を究明しなければ。
「そ、そんなことより、有馬のプレゼントは!」
私は慌ててバックの中をひっくり返して調べた。
「あったぁ!」
有馬が初めてくれたプレゼント。中身は何だろう・・・・。
「シャープペンシル・・・・ちょっと高級そうだけど」
いかにも有馬らしいプレゼントだった。ほっと肩の力が抜けた。と、プレゼントに貼り付けてあったメモが床に落ちた拾ってみる。さっと目を通す・・・・・・・。
『お酒はあまり飲まないほうがいいね。周りの人が大変なことになるから。なーんて冗談。でも、将来気味とお酒を飲みに行く機会があったとしたら・・・・ちょっと怖いかもね。二日酔いになっていないことを祈ってるよ。・・・・有馬総一郎』
「・・・・・・・・・・・ほほほほほ・・・・ま、済んだことはしょうがない。・・・・・・・ですむかぁ!」
あさぴんへの復讐を心に刻み込んだのだった。
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