聖杯のシン話

デザイニングポリシー
 RPG、ロールプレイングゲームは役割を演じるゲームである。
 言葉尻を捉えて無駄に拘るのも意味のないことではあるが、これがパーソナリティ(人格)プレイングゲームでもなければキャラクター(個性)プレイングゲームでもないことは示唆的に捉えてもいいのではないかと思っている。
 パーティという言葉が「冒険者一行」を表す言葉として定着したのはけっこう驚きなのだが、この個性の集合体であるパーティにおける「役割」はRPGの発生以来長いこと「能力」が重要な問題だった。つまり弱者には演じるべき役割が割り振られず、演じるにはまずある程度の強さが絶対条件だった。実際のところこの「個性」=「能力」=「役割」の構造が、草創期以来のRPGが抱える問題点の大半ではなかっただろうか。それっぽい言葉で言うと「戦力バランス」の問題である。
 そこで44DAなどのように数字が苦手なマスターは困ってしまうのだ。ちゃんと計算しないとドラマのクライマックスが迎えられないばかりか個性全部が全滅なんて悲惨な事態にも陥りかねない。かといってこれらの「悪夢」を回避するためにヒーローポイントやら神業やらの反則的救済策を多く取り入れる流れも納得のいかないところである。
 そもそも役割とはなにか。能力に従う役割は一種のランクであり資格であるとも言える。経済性のある大集団ならともかく、けっして一流なプレイヤーばかりとは限らない小集団で、「能力で決まる個性」をルールで規定することは正しい方策なのだろうか。
 役割とは能力よりも「適任」を「割り振る」ことに意味がある。能力の個性が集合になっても、組織を先に立たせる視点がないと役割は生まれない。リーダーシップをもつプレイヤーが誰もいなかったとしてもリーダー的なキャラクターは生まれ出てくる。必要な役割であるという認識が集団の中にあれば、「適任」が「割り振られる」からだ。
 だから、「できる・できない」の視点から外れた、「沿う・沿わない」の視点から役割を考えるゲームシステムを模索してみようと思い至った。なにより自分がマスタリングしやすいモノを、というのが前提ではあるけれど、野心的な試みになったのではないかと過剰な自負もあったりする。

キャラクターメイク
 大事なことはまずイメージである。どんなキャラクターをやりたいのかイメージを作ることから始めてほしい。細かいところを決めれば後々自分の行動を縛ることになる。ディティールは追々決めていけばいいことで、まずは漠然とでも顔や声、言葉や仕草など五感的なものを想像してみてほしい。
 そして次に判定値を決める。あえて能力値とは呼ばない。

判定値
 各キャラクターは次の五つの判定値を持つ。これはシナリオごとに数値を変えてしまってもいっこうに構わない。イメージに「沿う」ことがなによりも重要である。
 判定値は2〜12の間の自由な数字をあてはめる。判定には6面体ダイスを使うので基本的に整数だが、イメージが6.8なら迷わずその値にするべきだ。数字が高いからと言って必ずしも冒険に有利であるとは限らない。

1.得失 get/escape
 なにかを得る、もらう、学習する、成長する、仲良くなる、捕まえるなどの行動判定に使う。同時に、なにかが壊れる、無くなる、忘れる、怠ける、喧嘩をする、逃れるなどの行動判定にも使う。得失の力の根源は、万物を自分中心に集中させる求心力である。得失の判定に成功する限り、その行動がいかに愚かでつまらなくてもストーリーにおけるYESを維持することができる。

2.生死 stand/sleep
 行為の選択あるいは成功の可否が決定的な分かれ目となる行動判定に使う。それは転落への瀬戸際かもしれないし、あるいは復活の門扉を開くかもしれない。この行為判定の失敗は、死亡、退場、気絶、消滅、敗北へと直結する。一方で、甦りや予想外の登場、活躍、目覚め、ひらめきへと導くものでもある。

3.食産 eat/birth
 食べる、取り込む、魅了する、守る、溶かす、惑わす、あるいは生み出す、想像する、貯める、混ぜる、踊るなどの行動判定に使う。食産はパワフルでエネルギーに満ち、不可解でおぞましく扇情的でときに爆発する。

4.秘伝 dark/light
 「秘伝のたれ」などの意味ではなく、対立する「秘」と「伝」に起因する判定値である。知識や情報を操作して、必要な知識を知ったり伝えたりすると同時に、知ってはならないことを秘すような行動判定に使う。

5.逆転 reverse
 文字通り、白を黒に、寒さを熱さにひっくり返すような行動判定に使う。逆転は有利不利が重要なのではなく、価値がでんぐり返る痛快な革命が重要なのである。痛快さは「痛み」と「快さ」であり、必ず両義的である。

ロール
 キャラクターのイメージが定まり、数字も決めたのであれば、まず顔を上げて周りの仲間を確認しよう。このシステムの肝である「役の割り振り」の時間である。次の5つの役割はその場のプレイヤー人数によって割り振り方を工夫しなければならない。

C チャイルドあるいはクライストもしくはクラウン
 タイプCはキャラクターが自分自身をまだ把握していない、未分化な状態である。それはストーリーの進行とともにアイデンティティを獲得する能力に長けている、さまざまなものを得るからこその曖昧さでありそのための空虚さである。
 タイプCは自分自身のYESとストーリーのYESとを同化する力が強いため、もっとも高い確率で主人公の座を射止める。そしてストーリーのYESはしばしば幸福と同義であるためにタイプCは世界の救世者たりうる。そしてまたストーリーを象徴するYESを得ることによってそのストーリーの冠を得ることになるであろう。
 タイプCに対応する判定値は得失である。

S シャドウあるいはサーバント
 タイプSの役割はストーリーが(=タイプCが)YESと定義することによって捨てられてしまったものを拾い上げることである。タイプCが男性的に振舞うのであればタイプSは女性的行動で応えるべきだし、タイプCが陽気で開放的な性格であればタイプSは頑固で慎重な言動が役割となるはずだ。死せるNOを拾い上げて甦らせる行為の代理人であるタイプSはタイプC他主人公格キャラクターの従者であり、生と死の狭間に棲むものである。
 タイプSは光が強ければ強いほど形をはっきりと表し魅力的なキャラクターを形成する可能性を秘めている。またもっとも勇敢で悲劇的でもある。
 タイプSに対応する判定値は生死である。

M モンスターあるいはマザー
 ストーリーの推進力はしばしばとてもパワフルで貪欲で恐いもの知らずの特定のキャラクターに負うことがある。この濁流のような推進力の源となることがタイプMのキャラクターの役割となる。
 タイプMは好き嫌いなくストーリーのあらゆるものに食らいつき自らの行動の糧とする。その貪欲さからくるエネルギーは多感で多情でなおかつ多産である。女性的な優しさや豊かな芸術性、創造力もまたタイプMの重要な美徳であるが、一方で制御する力をまったく持っていない。
 タイプMに対応する判定値は食産である。

E エルダーあるいはエリート
 冒険とはすなわち知の探求であり文明化、支配下の道程である。タイプEは知識と権威を司り、冒険行においてそれが適切に行使され、もしくは抑制されているかを監視しなければならない。
 タイプEは傲慢で冷酷でかつ無力で役立たずである。だがタイプEは決して間違いを犯さない。それはタイプEが正しい知識を得ているだけでなく正しい禁忌を守っているからでもある。
 タイプEに対応する判定値は秘伝である。

T トリックスターあるいはトリッパー
 冒険は常に非日常であり、既成概念の破壊は退屈な日常を裏切る飛躍として歓迎される。
 タイプCは世界と一体でありタイプSの魂は不滅である。タイプMは無限のエネルギーを持ちタイプEはすべてを知る支配者だ。しかしタイプTはそのすべてに勝る力、逆転の専門家なのである。
 タイプTは大事な王錫を折ってしまう代わりにどこからか聖剣を盗み出し、悲劇的な死者を滑稽な生者へと変え、おしゃべりなおばさんを絶句させ、長らく常識となっていた古代文献の嘘を見破る。タイプTはその力の原点である破天荒さゆえに一つ所に留まらず、天性の旅人である。
 タイプTに対応する判定値はもちろん逆転である。

 まずCのロールは必ずひとり必要となる。残りのロールは適任者を探して割り振ることになる。
 割り振りは公平である必要はない。ひとりのプレイヤーがみっつもよっつも兼任するのは正常ではないが不自然ではない。割り振りからもれたプレイヤーはシャドウをあてがうのが良いだろう。

ペルソナ
 二つ以上のロールを兼任する場合、そのすべてのタイプを混融させたキャラクターを演じることは難しい。どのタイプを前面に出すかの切り替えが重要になるだろう。そのアイデアを助けるのが、ロールチェンジの契機を与えてくれるシンボルである。これを仮面、ペルソナと呼ぶ。
 タイプCの主人公が、変身の掛け声とともにペルソナを被り、タイプMとなって社会性を無視した正義の怪物として振舞うことはこの典型である。他にも、眼鏡をかけることでタイプEになったり、ピエロの化粧を施すことでタイプTになったりもできる。

プシュケの量(心の耐久値)
 ロールが決まったら、5つの判定値を2倍にした数値を書きとめよう。これがそれぞれの判定値の耐久力、プシュケの量となる。ただしこれは各人のロールに対応する判定値に限って3倍にすることができる。

グレイルの獲得
 キャラクターはヒーローとしての器の大きさによって、最大5つのグレイル<意識の聖杯>を持っている。5つのグレイルは判定値ごとにひとつであり、プレイヤーの勝手に増やすことはできないが減らすことはできる。

得失のグレイル
 ストーリーに対して固定的な意味を持つ援助を受けているキャラクターは得失のグレイルを持っている。もっとも典型的なものは魔剣、聖剣等の特別なアイテムや、絶対的な忠誠を誓ってくれる仲間や家族などである。財産や組織などの所有物もこれに含まれる。
 得失のグレイルに対応するスートはダイヤである。

生死のグレイル
 努力や鍛錬、あるいは肉体の欠損や犠牲、儀式や事件の目撃など、特別な経験で自らを変容させるショックを受けたキャラクターは生死のグレイルを持っている。このグレイルの意味するところは生まれ変わりであり、プシュケの一部もしくは全部が一度死に、そこから甦ることに相当する経験こそがあてはまる。
 生死のグレイルに対応するスートはスペードである。

食産のグレイル
 超自然あるいは無意識の領域から制御不能なパワーを得ている、もしくは得たことのあるキャラクターは食産のグレイルを持っている。恐怖、狂気、憤怒、激しい恋愛などの感情の爆発体験もこれに含まれ、芸術的なインスピレーションや宗教的な啓示、性交、出産なども立派な食産グレイルである。予兆、予感、不安、運命の予言なども該当する。
 食産のグレイルに対応するスートはハートである。

秘伝のグレイル
 禁忌の知識を得たり伝統の権威を継承したりすることで秘伝のグレイルを持つことができる。大事なのは単純に知識を得るだけではなく、それをコントロールする資格と責任をも受けていることである。そのため秘伝のグレイルは尊称や位階のような分かりやすい権威の誇示とセットになるべきであろう。
 秘伝のグレイルに対応するスートはクラブである。

逆転のグレイル
 基本的に逆転のグレイルは与えられない。例外はマスターの課す特別なペナルティ(それは悲劇的で致命的で滑稽で孤独でなおかつ理不尽なものだろう)を受け入れたときのみである。いわゆる「死亡フラグ」級の伏線などがこれにあたる。
 逆転のグレイルに対応するスートはジョーカーである。

以上でキャラクターの情報作成は終わる。
同一のキャラクターでもこれらの情報はセッションごとに改めてイメージどおりになるように作り直すべきである。

ミッション
 たいていのRPGではプレイヤーはなんらかのミッションを課され、それを達成することによって経験と言う報酬を得る。
 本システムでのミッションはドラマチックなストーリーを構築することであり、達成報酬はプレイヤーキャラクターがストーリー上で得たグレイルになる。つまり小さな経験を積み重ねることに意味は無く、貢献度が低くとも強いインパクトを受ける大きな経験だけが評価される。
 グレイルは5つ以上持つことはできない。5つのグレイルを得たプレイヤーキャラクターは完全な英雄としてリタイヤするか、意図的にグレイルを失うことができる。

通常判定
 冒険の途中、自分のキャラクターに沿うか沿わないかの判定が必要だと感じたら、判定値を使った行為判定をすることができる。
 通常の行為判定は2D6をして適当な判定値以下が出ればプレイヤーの意図に沿うストーリーが展開されたことになる。そうでなければそうでない展開になる。
 通常の行為判定にクリティカルやファンブルは無い。プレイヤーがクリティカルやファンブルを欲するときは常に逆転の判定値を使うことを覚えておくと良い。

クライマックスコンペティション
 ストーリーの大詰めにはたいてい闘争がある。このクライマックスの闘争は情熱の発散であり、イメージの適合を目指すそれまでのストーリーの流れとは異なる作業が必要である。マスターはプレイの終了する予定時間が近づいたら、トランプを取り出して闘争の時間が来たことを宣言する権利を持つ。この宣言以降は通常判定は使わずにクライマックス方式の判定に切り替わる。
 マスターはトランプの山札からプレイヤーの人数と同じ枚数だけ場札として引き展開しておく。

 行動するプレイヤーは最初に表行動か裏行動かを宣言する。

 表行動の場合。まず2D6する。該当の判定値以下であれば「セリフ」が成立する。プレイヤーは場札からカードを一枚引く。これは自分が持っているグレイルに対応するスートでなければならない。このカードの数字とそのスートに相当する判定値と比べて低いほうの数値を「効果値」の初期値とする。
 セリフが成立したプレイヤーはさらに2D6する。今度は該当の判定値以上であれば「行動」が成立する。同様に場札からカードを引き効果値を加える。行動が成立したら「追加行動」としてさらに2D6して判定値以上を出せばさらに効果値を加えられる。以降、判定値以上を2D6で出し続ける限り無限に効果値を加えることができる。
 合計した効果値が敵の判定値のプシュケの量より大きければ、敵のその判定値および対応するグレイルを使用不能にできる。ただしプシュケの量と同じかそれ以下の場合、なんのダメージも与えられない。

 裏行動の場合。表行動と違い、最初の判定の結果がセリフではなく行動になる。また、効果値はカードのスートに対応する敵のプシュケの量を削ることができる。この削った累積によってプシュケの量が0になった判定値および対応するグレイルは使用不能になる。

行動順
 これらの行動の順番はタイプM→S→C→Eである。タイプTはいつでも行動でき、さらに逆転の判定で目標の逆転のプシュケ以上を出せば順番を入れ替えることができる。
 マスターの操る敵は、モンスター型ならタイプM、人間型ならタイプSである。まれにタイプEやTのこともあるが、タイプCであることはない。

ジョーカー
 ジョーカーは普通のプレイヤーキャラクターにとっては、山札のリシャッフルのタイミングを表すカードに過ぎない。ジョーカーが出たら場札を除く捨て札と山札とそのジョーカーを混ぜて再度カットして新しい山札とすること。
 ただし逆転のグレイルを持つ特別なキャラクターにとっては、ジョーカーの出現は大チャンスである。そのプレイヤーキャラクターはジョーカー一枚で任意のグレイルを即座に使用不能にすることができる。

裏行動のオプション
 裏行動を行う際に、下記の6つのスタイルを選択しておくことができる。
@シールド&アタック
 ダイヤとスペードのスートしか効果値として使えなくなる代わりに、ハートの効果値を無効にできる。
Aドッヂ&ブロー
 ハートとクラブのスートしか効果値として使えなくなる代わりに、ダイヤの効果値を無効にできる。
Bホールド&クラッシュ
 スペードとハートのスートしか効果値として使えなくなる代わりに、クラブの効果値を無効にできる。
Cクイック&エンタングル
 スペードとクラブのスートしか効果値として使えなくなる代わりに、必ずイニシアチブを先取できる。
Dマルチアクション
 ダイヤとハートのスートしか効果値として使えなくなる代わりに、ラウンドの最後に追加で1アクション行動できる。
Eエスケープ&トリック
 ダイヤとクラブのスートしか効果値として使えなくなる代わりに、スペードの効果値を無効にできる。

クライマックスのためにできること
 この最後の闘争に備えて、プレイヤーはそれまでの冒険で努力をすることができる。
 まず分かりやすいのは効果値の上限を上げるアイテムを求めることである。空を飛ぶ靴は得失の効果値を上げ、呪われた魔剣は食産の効果値を上げる。古代魔法の書は秘伝の効果値を上げるだろう。逆転は?…バナナの皮があるじゃないか。
 あるいは失ったプシュケを回復させるタリスマンでもよい。ポケットの中のお守りが逆転のプシュケを癒すのはよく知られているし、婚約指輪は得失のプシュケが失われるのを見過ごさないだろう。胸に七つの傷があれば生死のプシュケはいつでも満タンだ。
 これらのアイテムやタリスマンはどこに落ちているのだろうか。おそらくタイプMが作り出したものの在り処をタイプEが知っていて、タイプSが奪ってきたものをタイプTが無くしてしまい、タイプCがそれを拾ってくるのだ。

マイナーグレイル
 多くのグレイルを持つものはそれだけ多種のスートを選ぶことができる。キャラクターのレベルに応じた半永久的なグレイルだけでは足りないと言うのなら、その冒険の間だけ有効な小さな聖杯を冒険の途上で獲得することができる。これをマイナーグレイルと呼ぶ。マイナーグレイルはパーティのみんなで共有した体験では獲得することができない。
 ある意味、プレイヤーの冒険のプロセスとは、このマイナーグレイル獲得の積み重ねと言えるだろう。
 すなわち聖杯のシン話である。

得失のマイナーグレイル
 冒険の途上で重要な戦いに勝ったり、大事な証拠や手がかりやアイテムを手に入れたり、あるいは役に立つ人物と仲良くなったりすると獲得できる。

生死のマイナーグレイル
 練習で技能を向上させたり思索を巡らせて新たな自分に目覚める、あるいは気絶や萎縮や悲哀で精神活動が途切れたりすると獲得できる。

食産のマイナーグレイル
 喜怒哀楽の爆発、特に恐怖や不安を感じたときに獲得できる。

秘伝のマイナーグレイル
 重大なヒントや書物などの知識の源泉を得たときに獲得できる。

逆転のマイナーグレイル
 ズバリ、順調な冒険を窮地に陥れるような大失敗をしたときに獲得できる。

エンディング
 マイナーグレイルとして得た経験を、メジャーなグレイルにできるかどうかはエンディングのロールプレイしだいである。大嵐の中で一夜の宿を貸してくれた美少女との出会いでマイナーグレイルを得たならば、エンディングで得失の判定をして彼女を「実は王国のお姫さま」ということにしてメジャーなグレイルにしてしまえばよい。むろん二人の愛が冷めたときにグレイルは失われてしまうわけだが。

ex
 例をいくつか挙げてみる。
 聖闘士聖矢が分かりやすい。主人公の聖矢は言わずと知れたタイプCである。登場後すぐにペガサスのクロスを獲得しているので得失のグレイルを持っている。氷河はタイプSで食産のグレイルを持ち、紫龍はセッションによってタイプSのときとタイプEの時がある。この二人はよく生死判定に失敗する。瞬もタイプSだがタイプMとしても機能する。ただ、アテナ沙織が絶大なパワーを持つタイプMで食産のグレイルを持っているので目立たないが。一輝はやはりタイプTで生死のグレイルを持つ。
 ママレードボーイを見てみよう。ストーリーの最初はタイプCの光希、タイプMの遊、タイプSの銀太、タイプEorMの茗子、タイプEの三輪、タイプTの亜梨実とバランスが取れている。これが2クール目から光希がタイプCorMに、遊がタイプEに、銀太が一時的にタイプCに、亜梨実がタイプSになる。新キャラの蛍はタイプM、すずがタイプT。
 銀英伝の場合は、ラインハルトは逆転のグレイルを持つタイプMで、能力値が高い分だけヤンとのクライマックスコンペティションに弱い。キルヒアイスはもちろん食産のグレイルを持つタイプS。彼が死ぬことによってラインハルトは生死のグレイルを獲得する。アンネローゼは生死のグレイルを持つタイプM。ヤンは得失と秘伝と逆転のグレイルを持つタイプE。ユリアンはタイプSだが、ヤンの不足分を補う意味でタイプCにもなれる。
 三国志なら、劉備がタイプC。関羽がタイプS。張飛がタイプM。孔明がタイプE。紳々と竜々がタイプTである。

スーパーパワー
 神話や冒険のストーリーに超自然的な力の存在は欠かせない。それは奇跡であったり魔法であったり超能力であったりする。
 これらのスーパーパワーはストーリーの結果から逆説的に必要とされた理不尽な誇張であり、つまりは意味のない(最終結果の出ない)スーパーパワーはあり得ない。
 例えば暗闇で魔法の火を灯す場合には、「欲しい灯」を得るのであれば得失の通常判定に成功すればいいし、火の暖かさを誰かに与えたいのであれば食産の通常判定に成功すればいい。なぜ魔法が使えるのかは後付の説明でいくらでも理由を作ることができる。これらの魔法をスーパーパワーとは言わない。
 物語のエンディングに深く関わることを、意味のある最終結果とみなす。そのため、スーパーパワーには以下のルールを適用する。
1.スーパーパワーはクライマックスコンペティションの表行動でのみ使用可能である。つまり必ず行動に際して台詞を必要とする。
2.スーパーパワーはなんらかのグレイルを所持していなければ使えない。これを原因のグレイルと呼ぶ。
3.スーパーパワーを使う前に原因となる特定のグレイルひとつと、それとは異なりかつ自分のロールが持っていない特定のグレイルひとつ(結果のグレイル)を内容まで詳細に宣言しなくてはならない。
4.スーパーパワーは必ず成功する。得られた効果値はそのクライマックスコンペティションが終わるまで効果値の最低値を底上げする。
5.スーパーパワーを使うと、直後に原因のグレイルが消滅し、クライマックスコンペティション終了後に結果のグレイルを得る。

原因のグレイル
 下記に各グレイルの「原因のグレイル」を列記する。

得失のグレイル:霊
 巨大な精神力、もしくは集合的な意志力によるスーパーパワーの源が、得失のグレイルから発せられる原因グレイル=霊である。
 神霊の啓示や奇跡は民衆の望みと無関係ではあり得ない。傷つき倒れた英雄が何度でも立ち上がるのは仲間の声援や信頼が霊魂に力を与えるからである。
 霊は唯一であり一途であり一方向を向き一度しかないスーパーパワーである。

生死のグレイル:聖
 聖別という言葉がある。現象、行為、存在、ありとあらゆるものを清と不浄に分けて、清いものを聖とし特別な力があるものとみなすことである。この特別な清いもの=聖が、生死のグレイルによって誕生する原因グレイルである。
 生死のグレイルは犠牲と強く結びついている。犠牲によって得られる聖は現実から離れた彼岸にあり、現実のあらゆるものを不浄として削ぎ落としている。だからこそ聖は非現実的で、不可侵不可触のパワーとなる。
 聖は不浄の罪を規定し、現実のあらゆるものを罪によって否定する力を持つ。
 聖は表と裏があり主体と客体があり此岸と彼岸があり始まりと終わりがある。
 
食産のグレイル:魔
 誰から与えられたのでもなく誰にも名づけることができない不可思議な存在。人はそれを魔として恐れた。
 食産のグレイルが湧き出させて飽きぬ原因グレイルであるところの魔は、もっとも力強くもっとも手に負えない厄介なスーパーパワーである。
 魔のパワーは自乗倍の速さで無限に膨張を続け、ついには自らの世界をさえ食い尽くしてしまうほどに驚異的である。

秘伝のグレイル:呪
 言語とは、人の精神の流れを時空間を越えて他の存在に影響を及ぼすという、ある意味ひとつの超能力である。この、言葉、理性、記録、知識によって、人が人を含めた人以外のものを制御しようとする試みであるところの文化的スーパーパワーが呪である。
 呪は三次元のあらゆる存在点を固定し、それは時間と言う概念を超越できる。現在を過去の視点で、また過去を現在の価値観で決め付けることができる。

逆転のグレイル:ゲ
 まったく説明のつかない理不尽な現象に出くわしたときにあなたはこう言うだろう。
 「ゲ!」
 逆転のグレイルは理屈ではないので、原因のグレイルはゲである。外、であり解、でもある。ゲは誰にも説明できない。因果関係を超越した変身である。
 ゲは0から生じて0へと帰る。

結果のグレイル
 下記に各グレイルの「結果のグレイル」を列記する。

得失のグレイル:ステップ
生死のグレイル:アンノウン
食産のグレイル:リボーン
秘伝のグレイル:メモリー
逆転のグレイル:ナンセンス

装備(得失)
 キャラクターはいくつかのアイテムを所有している。聖杯のシン話において何かを装備していることはそのキャラクターの個性のひとつであり、使いすぎてなくなったり、手っ取り早く奪うことはできない。金持ちのキャラクターはいつも金持ちであり、貧乏なキャラクターはどんなに稼いでも高価なものを買うことはできない。
 装備には四つのレベルがある。

ファッション
 キャラクターが常に日々支払い続けていたり身に纏い続けている物についてはいちいち金勘定をする必要はない。ただしその生活水準は得失の判定値より高くすることはできない。これは日々の収入、貯金、衣食住に関係する。自家用車や鎧をこの項目に入れてもよい。

一般装備
 キャラクターは「普通に金を出せば手に入るもの」が欲しいとき、それに見合う代金を支払う必要はない。得失の判定をして成功すればよいのである。但しこの判定に失敗したとき、あなたはなにも得られなかったでは済まない。欲しがっていたものに相当するなにかを失ったり、とんだ紛い物を買って無駄遣いしてしまったりする。得失は失う才能でもあるのだ。

愛用の装備
 キャラクターが特に愛用している装備は普通の装備とは異なり、そのキャラクターの個性や役割と密接な関係がなければならず、その代わりに特別な効果を生む。キャラクターは得失の判定値と同じだけの「愛用ポイント」を持っており、これを消費することで愛用の装備を整えることができる。この愛用の装備は理由なく無くなることはないし、必要なときに常に所有しておくことができる。
 ポイントの消費方法
 愛用の装備を得るごとに1ポイント
 その愛用の装備を使うことで特定判定値のプシュケの量を増減したい場合、追加1点につき1ポイント
 その愛用の装備を使うことで特定判定値そのものを増減したい場合、追加1点につき2ポイント
 その愛用の装備を使うことで特殊な効果を得たい場合、効果ひとつにつき3ポイント
 つまり得失判定値7の庶民が「リッチな貴族服」に愛用ポイント7すべてをつぎ込めば、判定値10レベルのファッションを常時身に纏うことも可能になる。

運命の逸品
 自分自身以外のあらゆるもの(それは時として世界の命運そのもの)に影響するようなドラマ性を内包している特殊なアイテムは、必ずメジャーグレイルとして取得しなければならない。この運命の逸品を使用すれば、そのアイテムのドラマに関連する限りほぼ不可能はないが、グレイルと関連しているために愛用の逸品よりはるかに高い確率でスーパーパワーの犠牲として無くなったり壊れたりする。

貢献(生死)
 キャラクターはドラマ性の高いアクションばかりに時間をかけているわけではない。生活するためや目標を達成するために地味で退屈な作業も時には必要になる。だがその退屈さに耐えて我慢強く裏方的な貢献ができるかどうかはプレイヤーの自由にはならない。飽きっぽいキャラクターの集中力は長続きしないのだ。自己犠牲的なルーチンワークを貢献と呼ぶ。
 貢献には四つのレベルがある。

勤行
 学生なら学業。社会人なら仕事。兵士なら軍務や訓練などの日常的そして継続的な努力は毎日同じように繰り返されなければならない。ただし一日のうちそのような貢献に費やされる集中力は、生死の判定値より長い時間は続かない。さぼったり遊んだり居眠りしてしまったり、とにかく無駄に過ごすことになってしまう。

善行
 キャラクターが過去において「普通にやっておくべきこと」をやっていたかどうか、それはプレイの最中にはわからない。麗らかな春の朝からプレイが始まったのに、昨晩は睡眠時間を犠牲にして数学の宿題をやっていたかどうか?いつもならきちんとやっているだろうが、その日の朝は例外かもしれないのだ。そんなときには生死の判定をする。成功すれば問題なく済ませているだろうが、失敗すればそれは中途半端なやりかけではなく、まったくなんにもしていないことになる。生と死に、中間などないのだから。

誓願

衝撃の体験

欲望(食産)
 プレイヤーはいつだって合理的で冷静だ。しかしキャラクターには理屈では割り切れない生理的な欲がある。

タンマ
 キャラクターは生理的欲求にしたがって、一日のうち何回か集中作業を中断される。どのようなキャラクターでも、睡眠、食事、排便、気分転換のために、一日につき食産の判定値と同じ回数だけ中断が行える。中断によってキャラクターはリフレッシュの機会を得、プシュケを1回復させるか、失敗してしまった、あるいは成功したことに悔いている行為の再ロールをすることができる。タンマの行使は半日で一回以上、一時間で一回以下でなければならない。

抑えられない衝動

掛け替えのない愛

二重人格

学識(秘伝)
 博士は何でも知っている。知らないことが一つでもあると博士はそのドラマに出演する資格はないのだ。しかしさすがの博士も「女の子の一番大事なもの」がなんなのかは知らないかもしれない。いやむしろ知らないでいた方がいい。

登場(逆転)
 パーティがふたつに分かれてしまったとき、一方でクライマックスな戦闘シーンが始まってしまった。他方の探索に行ってその場にいないキャラクターはもはや黙って見ているしかないのだろうか。いやいや、そこはマスターに無理言って登場させてもらおうではないか。

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