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【zero】 Chapter 18
薄闇の中、私はミコと抱き合っていた。
廃業して何年も経っていると思われるガソリンスタンドのピットの中、シャッターを閉じて外部から私たちのピックアップが発見出来ないようにした状態だっ
た。
私は機構に損傷が無ければ不眠不休で活動出来るが、生身の人間はそうはいかない。夜間に軍との戦闘の後で、更にピックアップの運転をし続けていたミコに
は休憩が必要だった。
ピックアップの運転席で簡易食のビスケットとスープを胃に収めたミコは、リクライニングした助手席に横たわって全身の機関のメンテナンスを施していた私
にゆっくりとのしかかって来た。
「何のつもりだ?」
長い口づけの後、頭を持ち上げて私の顔を食い入るように眺めるミコに私は聞いた。
「ねえ、ゼロ。あなた、出来るの?」
ミコの美しい瞳に、今までに見たことの無い光が宿っていた。
「何をだ?」
「セックス。」
ミコはそう言うと、私の戦闘服のズボンのチャックを開き始めた。
「出来ないな。」
私は冷たく言い放つ。
ふと、リック・シティで出会ったアンナの顔がメモリーに浮上する。ストリート・ギャングの凶弾に砕かれる寸前の、凄惨で悲しそうな表情をしていた。
女が私に求めて来るのも、私の機能の一つだった。私は外見上ほっそりとした優男だ。顔も端正に作られていて、最も女の好む造形で完成していた。擬似生体
組織の操作によってどんな顔にも変えられるが、構造上金属骨格との相性がありオリジナルの顔が最も安定している。
何より外観上よりも、身のこなし・仕草・表情といった動作のプログラム加え、擬似生体組織から発生させている人工ホルモンによって、女を惹き付けずには
いられないよう造られているのだ。
これも潜入作戦の為の機能であったのだろうが、逆に私にとっては厄介な事も多い。
実際リック・シティに居た時は、女だけでなくその趣味の男からも追い回された事もある。
「相変わらず冷たい男ね。」
ミコはそう言って、私のズボンの中をまさぐる。
私の擬似生体組織で構成された生殖器を見て、ほぅっと溜息をつく。
生殖器を掴んだミコは、私の顔を覗き込む。
その時だった。
ミコの美しい顔を目の当たりにした時。
私の中に、今までに感じた事のない衝撃が走った。
私の保護すべきものがここにある。
そう感じた瞬間、私の内部で変化が起きた。
「あっ…」
ミコが小さく悲鳴を上げた。
私は負けを認めた。私の意志に反して勃起した生殖器は、私にのしかかっているミコ向いて屹立していたのだ。
ミコは何も言わず、戦闘服を脱ぎ始めた。
狭い車内の薄闇の中で、ミコは下着を外している。
スレンダーで少し筋肉質なボディに、私は視覚センサーの焦点を奪われた。
小振りな胸の隆起が、薄闇のシルエットに浮かび上がり美しい。
私の戦闘服の胸のボタンを外したミコは、私の胸板にその体を静かに横たえる。
「あらっ?」
私の体をまさぐっていたミコは、私の腰のあたりで何かを発見した。
「何よこれ? 女ものじゃないさ。」
ミコは私が腰のベルトに下げていた、クロスの鎖を摘み上げ顔の前にかざす。
薄闇の中で銀のクロスが小さく光る。
「へへ。浮気の証拠、発見。」
クロス越しに、ミコが悪戯っぽく笑った。
「それはアンナのものだった。今は、おれにとっての誓いだ。」
私は言った。
「誓い?…そのアンナって人は?」
ミコは神妙な顔で聞く。
「死んだ。」
「…そうだったの… あたし悪いこと聞いたみたい… その人のこと、好きだった?」
「分からない。」
そう言った私に、ミコは小さく微笑みかける。
私の胸に顔を埋め、舌を這い回させはじめた。
「…ゼロ。あんたはあたしのもんだよ。仮に今だけでもいいから…」
私のズボンを脱がせたミコは、私の生殖器を掴み、そっと自分の中に誘導する。
十分に湿っていたミコの内部に進入した私は、それに応えて腰部をグラインドさせる。
「…うっ、はっ…」
ミコは喘ぎ声を上げ、短くカットした髪を振り乱して首を振る。
私はそのミコの髪をそっと優しく撫でた。
ミコの苦しそうな表情が一瞬和らぎ、私の顔を見て嬉しそうに笑った。
私は一体、何をしているのだ?
このような行為に、一体何の意味がある?
私は両手を伸ばし、私の上に乗ったミコの小振りな胸を掴む。
その柔らかい球体は、自身の弾力で私の掌の中で転がる。
「うぅっ…」
ミコは耐えきれずに、細い肩をすくめ首を傾げながら苦しげな声を上げた。
その時私は、あの視覚としてはっきりと感知した光を思い出した。
暖かい、慈悲に満ちた光。
その光が、大いなる存在が、再び私を包み込んでいた。
神… 神とは何だ?
私はミコの体を抱き寄せる。
体勢を変えて、今度は私がミコの上になる。
「どうしたの?」
動きを停止した私の腕の中で、ミコは瞼を開いて私に聞いた。
「ミコ。お前には何か見えるか?」
「何って?」
「いや、何でもない。」
ミコと一つになった時、あの存在に近づいたのかも知れない。
私にとって今は、この腕の中にいるミコが愛おしいだけだ。
破壊の為のみに造られた戦闘マシーンである筈の私は、求める事と与える事を知った。
これは学習したのではなく、最初から私に備わっていたシステムではなかったか。
「ねえゼロ。来て… もっと。」
ミコは両足を私の腰に回して来る。
ミコにのしかかるようにして、私はさらに激しく腰を突き込んだ。
「あぁん… あっ、あっ、あっ!」
ミコは脱いだ戦闘服の生地を掴み、首を仰け反らせて喘ぎ続けている。
その目にから、塩分を含んだ水分、涙というものが筋を引いて細く流れていた。
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