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【zero】 Chapter 14
傍受した軍の無線は、一斉に私の現在の位置へと向かうように
指示が出されていた。
私は加速装置をオンにした。
仮に通行人がいたとしても、彼らの視覚では認識できない程の超スピードで街中を駆け抜ける。
最初に全滅させた部隊の死体が横たわっている横を通り過ぎ、通常の時間にして5.08秒。瞬時にして私は武器を隠した部屋のベランダに立っていた。
窓を開いて部屋に侵入し、クローゼットから取り出した武器を装備する。
ベランダから飛び降りた私は、再び加速装置を使用して先程全滅させた部隊のあたりまで接近した。
加速装置をオフにして、ビルの物陰に身を滑り込ませる。
予測通り、ヘリの部隊が先行して到着した。
装甲車のエンジンが発する排気音も接近していたが、地上の部隊が集結するまでにはもう暫く時間がかかるだろう。
私は先にヘリの部隊を片付けておく事にした。
地上をサーチライトで舐めるようにして、低空飛行で周回しているヘリの一機に私は対物ライフルの銃口を向ける。
対物ライフルには精度の良いスコープ・サイトが装備されているが、着弾点が調整されている保証はない。
構えた対物ライフルのスコープ・サイトには頼らず、私は腕の中でチェンバーから銃口までの直線のラインを記録し、照準システムは完全に私と対物ライフル
を一体化させた。
後は距離と環境条件による弾道誤差を補正するだけだ。
私は視覚センサーを照準モードに切り替える。
視覚センサーが捉えた対象物は、私の照準システムに投影される。
それは軍の忌々しい攻撃ヘリの腹部だった。
私はビルの物陰から、上空に向けた対物ライフルのトリガーを絞った。
汎用のアサルト・ライフルとは比べのものにならない程の反動と衝撃を、私は肩で受け止めた。
銃口に装備されたマズル・コンペンセーターに発射時のガス圧が掛かり、銃身をショート・リコイルさせロックが解除されたボルトを後退させる。
エジェクション・ポートから巨大なエンプティ・ケースが排出され、地面に音を立てて転がり、マガジン上端のカートリッジを前進したボルトがチェンバーに
装填する。
攻撃ヘリの腹部にぼつりと12.7ミリの穴が開くのを、私の視覚センサーが捉えた。照準システムのレクティルの交点より左上に約2.5センチの誤差が
あった。
私はこの対物ライフルの反動と照準誤差を記録し、次回からの連射時における銃口のハネ上がりと銃が持つ特性を詳細に把握した。
頭上を通過するヘリに向け、もう一発.50口径弾を放った。
今度は正確にレクティルの交点に穴が開く。
そこは、メイン・ローターの逆トルクを押さえるテイル・ローターの中心部だった。
ヘリのテイル・ローターが吹き飛び、制御を失ったヘリの機体はきりきりと回転を始め失速する。
墜落しビルに衝突して炎上するヘリを確認するまでもなく、私は次の行動に移った。
私は建物の隙間を駆け抜け、次の狙撃ポジションに移動する。
隣のビルの非常階段を駈け上った私は、地上3階の踊り場で身を屈める。
ヘリの機体が炎上する明かりの中、もう一機のヘリが旋回してこちらに向かって来ていた。
私は階段の手すりの隙間から、対物ライフルの銃身を突き出す。ヘリの正面を私の視覚センサーが捉えた。
ズームした視覚の中で、一瞬コクピット前席のガナーと視線が合ったような気がした。
もし仮にガナーが私の姿を捉えていたとしたら、それは攻撃目標のZO-2600ではなく、最後に見た死神の姿だったろう。
私の視覚モニターの中で、ガナーの頭部が弾け飛んだ。
続いて貫通した.50口径の徹甲弾は、後部に座るパイロットの胸部を破壊する。
操縦者を失ったヘリが墜落する。私はビルの非常階段を駈け上り屋上に出た。
右前方からヘリの爆音が接近して来る。距離にして1,450メートル。
他に、後方からも二機の反応がある。こちらは3,000メートルと、遠い。
こちらから近い右前方のヘリの左側面が見えた。警戒して、遠巻きに様子を伺っているのだろう。
対物ライフルの有効射程は限界に近いが、私の照準システムでの弾道補正を使用すれば弾頭を届かせる事は可能だ。
だが、ターゲットに到達した時点で弾頭が威力を失っているのは明白であり、十分な破壊力は期待出来ない。
無駄玉となるか、それとも先に攻撃を仕掛けておくか。私が躊躇した時に、そのヘリの機体が小刻みに揺れた。
地上から機銃の攻撃を受けたのだ。
夜間でも弾道確認が容易なように通常弾の4発に1発の割合でセットされた、マグネシウム等の発光物質を含んだ曳光弾の光が次々とヘリの機体に吸い込まれ
る。
エンジン部から黒煙を噴き出し、浮力を失ったヘリが地上に激突した。
私は地上から攻撃した機銃の、曳光弾の弾道の元をズームする。
私から1,220メートルの距離に、ビルの屋上に据えられたヘビィ・マシンガンを確認した。
軍を攻撃しているという事は、ヘビィ・マシンガンの射手はレジスタンスに間違いない。
だがレジスタンスは、セイジの指揮の下で全員が地下道を通り、安全な場所に移動している筈だった。
そうでなければ、私が囮になった意味が無くなる。
そのヘビィ・マシンガンの射手を更にズームする。
黒い戦闘服に身を包み、短くカットされた髪に大きな瞳。
ミコだった。
「God damn!」
反射的に私は俗語を吐き出した。
私はビルの屋上から飛び降りる。
着地するが早いか、すかさず加速装置をオンにした。
私の後方にいた二機のヘリも、ミコのいる方向に向かっている。何より地上の装甲車が一台、ミコがいるビルの近くに接近していたからだ。
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