村はずれの洋館

 
 

 今年は台風の当たり年で、この山村でも古びた家屋はもとよ り、強風で稲は倒され殆どの田は壊滅的な被害を受けていた。
 早くも野原を吹き抜ける秋風を頬に受け、私はこの暑かった夏の終わりを実感した。
 小川を沿って歩き、村のはずれまで来た時の事。
 手を繋いでいた孫が、ふと歩みを止める。
 何かに憑かれたように、ある一点を見つめていた。
 歳の離れた兄の三回忌の法事が終わり、私は懐かしい実家の周りを今年五歳になる孫娘を連れて散策していた時の事だった。
 「おじいちゃん… あのおうち、こわい…」
 孫が指差す先に、すっかり周囲は茂みに覆われた、こんな山村に似つかわしくない洋館が佇んでいた。
 それは半世紀も前に家主を失った、既に屍と化した古い屋敷だった。
 風化した壁は傷みもひどく、先日の台風の爪痕は一層この家主を失って死んでしまった館を打ちのめしていた。
 当時、都市に出てゆけばいくらでも拝める西洋風の建物だが、わざわざこんな田舎に何故建てられたのか。そしてこの館の主の事は、この村では禁忌とされて いた。
 私の脳裏で、忌まわしくも切ない記憶が甦る。
 
 敗戦色はこの田舎をも確実に呑み込んでいた、昭和二十年。
 幼くして両親を失った当時十三歳だった私は、この村で祖母に育てられた。
 歳の離れた兄は志願兵で満州へ行き、元々体の弱かった私は学徒動員からも外されこの村に残っていた。
 遊び相手になる、歳の近い者もいない田舎の山村だ。
 私はセミやトンボを追って、毎日を過ごしていた。
 ある日、空で爆音を聞いた。
 ぽっかりと広がった青空に、銀色に輝く美しい機体が白い尾を引いて飛んでいた。
 「あれは?」
 祖母に聞いたが知らないと言う。
 後日、学校の先生があれはアメリカの新型爆撃機だと教えてくれた。
 村の大人たちが“ビー公”と呼び出したのはそれからだった。
 「こんな山奥にまでアメリカの飛行機が飛ぶようになっちゃ、日本はもうおしまいじゃね。」
 そんな祖母の言葉を、今でもはっきりと憶えている。
 そんな年の夏だった。私はいつものように小川で沢ガニを捕っていた時に、ふと視線に気づいて帽子のつばを指先で持ち上げる。
 小川の堤になった小道に、眩いばかりの白いワンピースを着た少女が立っていた。
 この村に、こんな子がいたかな?
 私と目が合ってもにこりともせず、何の感情も表さない目が真っ直ぐに私を見つめていた。
 好奇心に駆られた私は小川から上がり、はだしのままで彼女に近づこうとした。
 ふいに彼女はくるりと踵を返すや、村のはずれに向けて走り出した。
 年の頃は私より一つか二つ上だろうか。ワンピースと同じ色の白いつば広帽子から流れる黒髪が印象的だった。
 後を追う気もなく、私はただ小さくなるその後ろ姿を眺めていた。
 家に帰っても、あの少女の事を祖母には言わなかった。
 当時の私は彼女が走っていった方角を考慮したうえで、誰にも言わないほうがよいと判断したからだ。
 あの先には、あの洋館があった。
 村の噂によると、当時から二十年ぐらい前に、その周辺の土地を所有していた地主が東京で事業に失敗し、替わりにその土地を買い取った者が建てたという。
 その家主というのが薄気味の悪い老人で、私も何度かその老人が古ぼけた大きなバッグを提げ、町に向かう汽車に乗る姿を見た。
 夏でも黒い背広を着た背の高い老人で、村の誰に会っても挨拶すら交わした事もない。
 噂ではドイツ人だと聞いていた。
 「あのおじいさんの、親戚か何かかなぁ…」
 あの歳で、まさか娘ではないだろう。
 一人部屋にこもって、畳のうえでゴロゴロしながら様々な事を考えていた。
 今思えば、私はその時に彼女に対しての想いを、勝手に募られていたのかも知れない。
 数日後、私は彼女と話すチャンスに恵まれた。
 それは村はずれの、一体の地蔵が立っている前の田んぼのあぜ道を歩いていた時の事だった。
 正面から歩いて来るのは、紛れもなくあの白いワンピースだった。
 正確に言えば、彼女は歩いているという風ではなかった。突然私の視界に現れ、ふわふわと地面を滑るようにこちらに向かって来ていた。
 きっとそれは、戦争がひどくなる前の町のお金持ちの娘しか持っていなかった筈の洋服が、真夏の陽光に照らし出された結果の幻影を私に見せたのだろう。
 彼女はちらりと私と目を合わせ、声もなくすっと私の側を通り過ぎようとした。
 美しい少女だった。
 白い肌に端正な顔立ちは、一瞬にして私の胸を鷲掴みにしてしまった。
 今思えば、あれが私の初恋だったのかも知れない。
 私は思いきって彼女に声をかけた。
 きっと声はうわずり、脂汗を滴らせていた私は滑稽だったに違いない。
 「あの… 君は?」
 彼女は無言で振り返る。
 “何故私に話しかけるの?”とでも言いたげな不思議な表情をしていた。その表情がまた可愛らしかった。
 「君、君は… 何処から来たの?」
 私は上がってしまい、言葉にもろれつが回らない。
 彼女は黙ってあの洋館が建っている方角を指差した。
 袖無しのワンピースから伸びる白い腕が、きらきらと艶めかしく輝いていた。
 「ひとりでいるの?」
 彼女は首を横に振った。
 「いいえ。おじいさまと二人。」
 初めて彼女の声を聞いた。それは涼やかな風のようだった。
 せっかく声をかけたのに、何を話してよいかわからず、何か話題を探そうとして私はズボンのポケットに手を突っ込む。
 ポケットの中で丸く堅いものに手が触れた。
 何か彼女を繋ぎとめるものが欲しかった。
 何でも良かった。それはきっと、初めて言葉を交わした私との絆を、形として彼女に押しつけたかっただけかも知れない。
 私はポケットの中の物を掴み出し、彼女の前で手の平を広げてみせる。
 「これ、あげる。」
 それは私にとって、とっておきのビー玉だった。特に大きなもので遊びに使わず、いつも大事にポケットの中に仕舞い込んでいたものだった。
 透き通ったガラスの中のマーブル模様が、陽の光を受けてきらきらと輝いた。
 「きれい…」
 彼女は私の差し出したビー玉に見とれている。
 ビー玉というものを、彼女は生まれて初めて見たのだろうか?
 私はそっと彼女に向けて、ビー玉を載せた手を押し出す。
 「いいの?」
 彼女は私の手の平からビー玉をつまみ上げた。
 そっと手の平に触れた指先の感触に、私の全身に電気が走ったような気がした。
 「うん。」
 「ありがとう。」
 彼女はビー玉を大事そうに両手に包み込むと、田んぼのあぜ道を小走りに駈けて行った。
 彼女の後ろ姿を目で追いながら、私は小躍りしたい程の抑揚を押さえつつ、意気揚々と家路についたものだった。
 次の日も、そしてその次の日も彼女と会った。
 私は彼女を小川に誘う。
 ワンピースの裾をまくり上げ、冷たいと言って喜ぶ彼女がとても眩しかった。
 そして、一緒に遊ぶ約束をしたその次の日、彼女の姿が見えなかった。
 約束の地蔵の前で、私は待った。
 夏の陽は高いが、春ならば既に辺りは夕闇に包まれている時間である。
 業を煮やした私は何を考えたか、彼女が住んでいるというあの洋館に足が向いていた。
 今思えば彼女恋しさのあまり、あの薄気味悪い老人の事も忘れていたのだろう。
 蝉の鳴く声の中、私はそっと村はずれの洋館に近づいていた。
 外に人の気配はしない。
 私はろくに手入れをされていない中庭を突っ切り、その洋館の玄関に立つ。
 重厚な木製のドアにノックをしようとして、館の中から聞こえる人の声に耳をそばだてる。
 どうやら玄関の隣にある広間から、その声が聞こえるようだ。
 私は足音を忍ばせて、その広間の窓に近づいた。
 部屋の中を覗き込む。
 私はあっと声を上げそうになるのを必死になって堪えた。
 白いレースのカーテンの隙間から、その光景が私の目に飛び込んで来る。
 私に背を向け、あの老人が立っていた。
 その老人の前には、床に描かれた奇妙な図形。
 その図形を囲むようにして規則正しく立てられたロウソクが、ゆらゆらと炎を上げていた。
 そしてその図形の中心に、白いものがうごめいていた。
 黒く長い髪と、白く透き通るような肌。
 それは、紛れもなく女の裸体だった。
 女と呼ぶにはまだ未成熟な、細く清楚な体つきをした裸体。
 老人はロウソクの一本を取り上げ、何やら外国の言葉を呟きながら奇妙な図形の中に踏み込む。
 縄で後ろ手に縛られた女の裸体の上に、炎で熱せられたロウソクのロウが滴る。
 ぽつりぽつりとその白い肌にロウが落ち、急速に熱を失って固まってゆく。
 その哀れな犠牲者は、紛れもなく彼女だった。
 彼女は苦痛に顔を歪め、その白い裸体を震わせる。
 「ん… んんっ…」
 彼女のうめき声が聞こえた。
 なんて酷い事だ。折檻にしては度が過ぎている。
 私の中で義憤がわき上がってくる。
 このまま窓をぶち破って部屋に侵入し、老人を殴りつけてやりたかった。
 そんな衝動を抑えつけ、私は部屋の中で展開されているその異常な光景を食い入るように見つめていた。
 苦痛に歪めていた彼女の美しい顔に、ふと歓喜の表情が浮かぶ。
 自ら仰向けになり、まだ熟れていない果実のようなその胸を、進んで老人の前に突き出す。
 ロウソクのロウが、ぽたりぽたりと彼女の胸に落ちる。
 彼女は白い身を震わせて、全身でその加虐を喜んでいた。
 何という事だろう。
 その異常な光景よりも、自分自身の中でわき上がってくる激しい欲情に、私自身が驚いていた。
 少女は自らが俯せになり、奇妙な図形が描かれた床に顔を押しつけ、高く腰を上げていた。
 私のいる位置から角度的に、彼女の股間がはっきりと見えた。
 ぬらぬらと濡れて光る無毛の裂け目と肛門が、別の生物のように蠢動していた。
 老人はその裂け目に、火のついたロウソクの尻を突き刺す。
 老人はそのまま彼女から離れ、図形の外に立つと再び外国の言葉を呟き始める。
 彼女は床の上で身じろぎをしながら、流れ落ちるロウソクのロウの熱に歓喜の声を立てていた。
 私はもう、居ても立ってもいられなかった。
 あの地獄のような光景を映し出していた窓から離れ、一目散に草むらへと駆け込む。
 ズボンを降ろし、最近憶えたばかりの手淫にふける。
 数秒と保たずに私は果てた。
 茅にたっぷりと白濁したものをふりかけ、私は大きく溜息をついた。
 果てた後、耐え難い悲しみが私の胸を洪水のように襲って来た。
 しくしくと泣きながら家に帰り、心配する祖母を無視して部屋に籠もってしまった。
 次の日、私は家から一歩も出なかった。
 頭の中をあの光景がかすめるたび、無駄に精を放って一日を過ごした。地獄のような光景だと思っていたが、それは私の中で妖しくも甘美な性倒錯へと変わっ ていたのだ。
 翌日の昼、私を心配した祖母が作ってくれた冷たいカルピスを飲みながら、私は急に彼女に会いたくなった。
 このカルピスは当時としては貴重なもので、戦地の兄が私の為にと送ってくれたものだった。
 私はあの地蔵の前で待った。
 彼女はもう現れないかも知れない。
 いや、私はどんな顔をして彼女に会えばいいか分からない。
 でも、よかった。構わなかった。
 彼女にもう一度会いたいという願望が全てだった。
 私は照りつける日差しの中、彼女を待ち続けた。
 田んぼのあぜ道の向こうに白いワンピースが見えた時、私はもう死んでもいいと思った程だった。
 「ごめんなさい。約束を守れなくて…」
 彼女はうつむき静かに詫びる。
 「いいんだ、僕こそ昨日はごめん。」
 返すように詫びた私に、彼女はにっこりと微笑んだ。
 「歩こうか。」
 「うん。」
 私は彼女と並んで歩いた。
 そっと彼女の手を握ったが、彼女は拒否しなかった。
 私の胆は決まっていた。
 きっと彼女も私の意図を読み、受け入れようとしていたに違いない。
 廃屋の納屋の中で、私と彼女は腰を下ろす。
 夏の日差しが壁板の隙間から差し込んでいた。
 もう既に、彼女と交わす言葉はなかった。
 重ねた唇は柔らかかった。
 彼女の舌が私の口の中で蠢いている。大人の接吻とはこうするものなのかと初めて知った。
 私は彼女が欲しかった。ただひたすら、あの老人から奪ってやりたかった。
 ワンピースの襟元から手を差し入れた時、彼女の吐息が私の頬を柔らかく撫でてゆく。
 「待って…」
 彼女はそう言って、私から離れる。
 私の目の前で、私に背を向け白いワンピースを脱いだ。
 最後に身に付けていた一枚を脱ぎ捨てると、ゆっくりと私の方に振り返る。
 あの時に盗み見た、白い裸体が私の目の前にあった。
 ロウソクでつけられた筈の火傷の痕もなく、無垢の少女の美しい体があった。
 彼女は私に覆い被さり、私の首筋を舐めている。
 私は汗を吸ったランニングシャツを脱がされ、胸板に舌を這わせている彼女の黒い髪を眺めていた。
 乳首を舐められた時、私は脳髄までとろけてしまうような快感に身を委ねる。
 私はもう堪らずズボンと下着を脱ぎ、彼女の体を押し敷いた。
 彼女は親指の爪を噛みながら、その白い両足を広げる。
 期待に体を震わせていた。
 今考えれば、彼女はあの老人に調教された、野卑な言い方をすれば“好き者”だったのかも知れない。
 私はその日、何度も何度も彼女の体を貪った。
 私の精を全身に受け、それでも彼女は私を放そうとしなかった。
 私たちはさすがに尽き果て、数十分間廃屋の納屋の中で気絶したように眠った。
 どちらかが先という事もなく目を覚ました。
 私はおずおずと服を身につける。
 私に背を向けてワンピースを着る彼女が愛おしく、背後から抱きしめて再び唇を吸った。
 長い接吻の後、私たちは無言で別れた。
 夕日が赤く空を染め上げていた。
 次の日、昼に大事な放送があるからラジオを聞くようにと、村の駐在さんから通達があった。
 私は祖母と一緒に、学校の校庭に行った。
 そこには村人全員が集合していた。当然だが、あの洋館に住む老人と少女の姿は無かった。
 正午。聞き慣れない声がラジオのスピーカーを通して流れて来た。
 玉音放送。
 当時の私には意味が分からず、きょとんとして周囲の大人達を見回していた。
 大人達は目をつむって聞き入っていた。どこからか嗚咽を漏らす大人もいた。
 初めて聞いた天皇の声。そして、難しい言葉に意味が分からない私でさえ、その雰囲気は読みとれた。
 日本は負けたのだ。
 そう思った。
 食べ物もロクに手に入らない。各都市では大規模な爆撃の被害を人づてに聞き、更に広島と長崎に落とされた新型爆弾の話も聞いた。
 なんとなく、当時の子供だった私でさえ分かっていた。
 やっと終わったのだ。
 そう思った。
 
 だからと言って私の中で何が変わった訳でもなく、私の興味の対象は彼女だけだった。
 彼女に会いたい。
 昨日の初めてのセックス以来、私の中で彼女の存在が全てだった。
 来る日も来る日も、あの地蔵の前で彼女を待った。
 結局あの白いワンピースを見る事もなく、何日かが経った。
 とはいえ、もうあの館をのぞき見する勇気は私にはなかった。
 ある日、村全体が騒然とした雰囲気に包まれていた。
 警察官が私に家にもやって来て、祖母に何やら話を聞いていた。
 後で祖母に聞くと、あの村はずれの洋館に住んでいた老人がピストル自殺をしたらしかった。
 私は家を飛び出し、走ってあの村はずれの洋館に向かう。
 多くの警察官と村の野次馬で、洋館の周囲はごった返していた。
 多数の警官の手で、洋館の中にあったものが運び出されていた。
 多くは外国語で書かれた古ぼけた書籍らしく、その中には奇妙な形をした釜や、ガラス細工の大きな器や管が含まれていた。
 私は周囲の大人に必死になって、他に誰かいなかったかを聞いたが、老人以外にこの館に住んでいたものはいなかったらしい。
 私は焦りで目眩を覚え、その場にしゃがみ込んでしまった。
 側にいた隣のおばさんに助け起こされ、何とか立ち上がる。
 洋館の玄関から、警察官の一団が現れた。
 その先頭の警官の手に、一体の、木で作られた等身大の関節人形が抱き抱えられていた。
 私の頭の中は真っ白になった。
 その人形の頭部に植え込まれた黒く長い髪。
 そして、その人形に着せられていた白いワンピースと、その端正な顔立ちには見覚えがあったからだ。
 その時、私は見た。
 人形に着せられていた白いワンピースの裾から、一個のビー玉がころころと転がり落ちるのを。
 それは紛れもなく、初めて彼女と言葉を交わした日、私が彼女にプレゼントした品だった。
 私は全身の力が抜け、ふらふらと野次馬の群れを後にする。
 彼女と一緒に遊んだ小川にさしかかった。
 悲しみが胸を押さえつけ、私はその場で嘔吐した。
 胃の中のものを全て吐き出した後、私はいつまでもいつまでも小川に向かって泣きじゃくっていた。
 
 「行こう。おばあちゃんがおはぎを作って待っているよ。」
 私は孫の手を引き、急かすようにしてその場を立ち去った。
 あの時、私は見てはならない世界の一端を垣間見てしまったのだ。
 あの物言わぬ人形に生命を与え、あまつさえ精巧なセックスマシーンとして造り上げていた秘術は、一体何だったのだろう?
 あの老人は一体、ここで何をしようとしていたのか?
 そして何も知らない私は、彼女を抱いて体を貪った。いや、体だけでなく、彼女に恋慕までしていた。
 今考えれば、子供心に恐怖は無かった。当時を思い出す度に、後悔の念と深い悲しみ、そして少しだけ甘酸っぱい思春期に誰もが体感する、あの感覚だけが、 今でもじわりと胸に拡がって来る。
 この館と共に封印した、私のあの夏の体験。
 今となっては、もう誰に話す気も無いし、話したところで絶対に誰も信じない筈だ。
 事実この館の事を憶えている者は、もう私一人ぐらいなものだろう。
 そして、あの白いワンピースの少女を知っているのは、きっと私だけだろう。
 私を最後に、この洋館の事は人々の記憶から消滅する。
 私は、そう願っている。
 

 

終