the scenery2

 
「はい。」
「…」
「もしもし?」
「ヒロ?」
「えっ?」
「ヒロでしょ、あたし…」
「誰?」
「どうして…」
「…」
「…いいわ。声聞けたから…」
「どなたですか?」
「えっ?」
「何処にかけたの?」
「あっ!」
「番号間違えたの?」
「…ごめんなさい。間違えました…」
「いいよ。」
「夜中なのに… すみません。」
「どうしたの?」
「えっ?」
「何だか、何て言うか…」
「…」
「彼氏?」
「はい…」
「そうか…」
「…」
「彼氏、捕まらないんだ?」
「連絡無くって…」
「また、かけ直しなよ。」
「いえ…」
「ん?」
「何度かけてもダメ。」
「なぜ?」
「ずっと留守電…」
「…」
「もうダメかな… あたし…」
「どうして?」
「あっ!ごめんなさい。何言ってんだか…」
「駄目って事、無いだろ。」
「…」
「なぜ、駄目って?」
「本当にダメなの。今日で最後にしようと思ったの。」
「彼の事?」
「ええ… あきらめるわ。」
「あきらめられるの?」
「辛いの… 居留守は分かってるわ。もう…冷たいし。」
「ふられるより、辛いね。」
「今日は、公衆電話からかけたの。だから間違えちゃって…」
「そうだったのか。」
「一人で部屋にいたら、気が変になりそうで…」
「何処かでかけてるの?」
「旅館。いい所よ。」
「旅先かい?」
「そんなとこ。傷心旅行かな?」
「楽しんで、忘れるといいさ。」
「あたしね… 死のうと思ったの…」
「…」
「終わりにしようかなって…」
「死ななくてもいいよ。」
「どうして?」
「君の事、きっと他の誰かが待ってると思うよ。」
「そんな甘いものじゃないわ。」
「そうかな?死んで精算するほうが甘いんじゃない?」
「…」
「急がなくても、人間いつか死ねるって。」
「フフ… 面白い事言うわね。」
「面白いかな?のんびり生きたほうが楽ってこと。」
「…ウソよ。そんなに思いつめてないわ。」
「だろ?」
「いいの?話してて?」
「いいよ。暇だったし。」
「結局、遊ばれたんだよね… あたし。」
「世の中そんな男、ゴマンといるさ。」
「あなたは?」
「俺もその一人。」
「やだな。」
「だから、気を付けなって。」
「公衆だから、あたしの番号判んないよだ。」
「そうだね。残念…」
「温泉、いいわよ。」
「俺も行きたいな。」
「やっぱ、懐石料理よね。」
「美味しかったかい?」
「うん。 何だか…」
「どうしたの?」
「話してると、楽しくて…」
「良かったね。」
「間違えて、よかったのかな?」
「だと、いいね。」
「ありがとう。話をしてくれて。」
「いいえ。もう、大丈夫かな?」
「うん。もう遅いから、これで… 間違えてごめんなさい。」
「はい。また歓迎するよ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」

 

END