こちら、桐生探偵事務所。異聞
〜女豹忍法帖〜
Villain Heaven
壱の巻
辺りは既に夜のとばりが降り、未だ人が賑わう大坂の町を、その人混みをかき分けるようにしてひた走る、一人の少女の姿があった。
住み込みの侍女と思しき着物を纏っているが、その抜けるような白い肌と清楚で可憐な美貌は、町行く誰もが振り返る程である。
人混みをかき分けると言ったが、少女の動きは一切の無駄のないもので、人混みをすり抜けると表現すべき見事な歩法は、彼女の抜群の反射神経と運動神経を物語っていた。
地面を滑るような足運びに加え、既に長いこと走っているにかかわらずその呼吸に乱れすらない。
それに何より、彼女は足音を立てずに走っているのだ。
何者かに追われているようであるが、その形のよい唇に刻んだ笑みは余裕すら感じられる。
彼女の名は香織といった。
慶長元年、大坂の町。
栄華を極める太閤秀吉の政権の元、この町はその繁栄を享受していた。
大坂城に侍女に扮して潜入した香織は、作戦通りの工作を終えて脱出を果たした。
既に追っ手の侍の一団を巻いた後である。
それでも香織は走りながら、左右に鋭い視線を配る。
「ひとり… ふたり… いや、三人か…」
先程から、影のように付かず離れず香織の後を追う気配があった。常人ならば全く気が付かないであろう。
呟きながら香織は、右手を左袖に差し入れる
突然、片足で地面を踏みしめ、くるんと身を翻した。
着物の裾と長い黒髪が、ふわりと宙に舞った。
香織の足下の先に、無数のマキビシが地面に突き刺さる。
身を翻した香織の右手から銀色の閃光が飛び、道端に建つ商家の二階の軒下で影となった薄闇に吸い込まれた。
宙に身を躍らせた香織は、地面に突き刺さったマキビシを飛び越え、間髪入れず左手を右袖から抜き出す。
その掌に、三本の棒手裏剣が並んでいた。
更に体を捻る様にして回転し、反対側の軒下に棒手裏剣を放つ。
それは傍目から見れば、少女の優雅な舞いのようでもあった。
一足飛びで商家の軒下に置いてあった樽に飛び乗ると、一気に屋根まで駆け上がる。
二階の軒下では黒装束姿の男が一人、香織の放った棒手裏剣に衣服を縫い止められてもがいていた。
二階の屋根にするりと登ると、屋根にいた残りの黒装束姿の男と正面から対峙した。
男は慌てて刀を抜こうとする。
「ふっ…」
香織の唇から小さく息が飛んだ。
黒装束の男は刀を抜くのも間に合わず、額を押さえながらごろごろと屋根を転がり落ちていった。
香織の唇から飛んだ、含み針に仕込まれたしびれ薬は即効性だ。
「やはり、忍者…」
その時、どんという大音響が町中に響き渡り、香織の呟きはかき消された。
香織は音のした方角を振り返る。
続いて爆発音が数回。
町の商家の屋根から望めば、その煌びやかな権力の象徴は怪物のようでもある大坂城。
それが、数回の爆発で一瞬揺らいだように見えた。
二の丸に続いて、本丸の下からもごうと火の手が上がる。
計画通り、香織が大坂城の随所に仕掛けた爆薬が爆発した。
香織は屋根伝いに走り、軒から音もなく着地する。
「後は頼んだわよ、沙織お姉さま。」
香織は願いを込めて呟くと、再び走り始めた。
川に掛かった橋を中程まで渡った香織は、橋の欄干から川面を覗き込む。
川面に天空の満月が映っている。その満月がざわざわと崩れ始めた。
暗い川面にぬっと大きな影が浮かび上がり、それは水面を静かに割ってその全貌を表した。
「忍法、竜宮の使い。」
香織は橋の欄干に登り、その上に立つ。
川面から現れたそれは、巨大な樽を横に寝かせたような形状のものだった。
その樽は下半分を川の水に浸かりながら、上半分を川面から浮き上がらせていた。
そして、その上部の中心部が観音開きの扉となって開く。
香織は橋の欄干から川面に向かって、ひらりと身を躍らせた。
淡い色の着物と黒髪が、樽の開いた扉に吸い込まれる。
香織は木製の床に音もなく着地する。
端から見れば全く意味不明な歯車や軸が乱立する樽の内部は、燃料を一切使用しない明かりによって照らし出されていた。
「おっかえりなさ〜い♪香織おねーちゃん!」
操縦席と思しき機械に付いていた少女が、香織を振り返り嬉しそうに笑った。
端正な顔立ちに何処か浮世離れした雰囲気を持つこの美少女の側に、香織は静かに近寄る。
「待たせたわね、詩織。陽動作戦の首尾は上々よ。後は沙織お姉さまに懸かっているわ。」
詩織と呼ばれた少女は操縦桿らしき木の棒を手放し、側に立つ香織に抱き付く。
「う〜ん… 香織おねーちゃんだぁ。五日も留守にしてぇ… 詩織は寂しかったんだから。」
香織に抱きすがった詩織は、香織の着物に顔を埋めてうっとりと瞼を閉じる。
「詩織、挨拶はあとで。それより早く橋の下に移動して。」
「ラジャー!沙織おねーちゃんが帰って来たら、久しぶりにみんなで晩ご飯にしようね♪」
上部のハッチを開いたまま、『竜宮の使い』と呼ばれた木製の小型潜水艇は、人目に付かないよう橋の下に静かに移動する。
「どけどけどけぇっ!」
長い回廊を走り抜ける、一人の女。
未だ少女と女の中間に位置する歳だろう、黒装束に包んだそのすらりとした体躯はしなやかで均整が取れていた。
抜群の美形フェイスと、精悍な光を放つ瞳がアンバランスでありながら、それが彼女の美しさの根元であった。
黒装束から覗く白いうなじの上で、栗色の髪が揺れる。
長い足を素早く回転させ、大坂城本丸の回廊を大股で走り抜ける彼女の姿は当に女豹。
彼女の名は、沙織。
「こらぁ!どかねえと叩っ切るぞっ!」
沙織は腰の刀を抜き放って振り回す。
刀身は短めで反りの無い、実用本位の忍者刀だ。
城の警備は先程の爆発に手を取られてしまい、手薄となった本丸上層階には使用侍や侍女の姿しか見えなかった。
絢爛たる贅を尽くした回廊を、慌てふためき逃げまどう人々をかき分け、沙織は天守閣目がけて突っ走る。
それでも沙織の前方に、数人の侍が立ちはだかった。
めいめいが刀を抜いて身構える。
沙織は懐から取り出した物を、彼らに向けて投げつけた。
ぼんという爆発音とともに、白い煙が一面に舞い上がる。
沙織を待ち受けていた侍たちは、一斉に咳き込み目を押さえる。
それは爆発と同時に、催涙ガスを巻き上げる煙玉だった。
堪らず板の間に蹲る侍たちの上を、沙織は目をつぶり息を止めて飛び越える。
板の間に着地した沙織は更に走り続け、階段を一足飛びで駆け上がる。
そこは天守閣最上階。
沙織は刀を鞘に納め、腰に巻き付けた縄を解き、先端の鈎爪を回して勢いを付け窓から放り投げる。
鈎爪が屋根に掛かったのを確認し、窓から縄を伝って屋根に登る。
天守閣の屋根に登った沙織の眼前に、夜の大坂の町がパノラマの如くに広がっていた。
夜空にはぽっかりと満月が浮かび、眼下では先程の爆破による消火活動で、大勢の人々が騒ぎ立てている。
天守閣を渡る夜風が、そっと沙織の栗色の髪をなぶる。
絶景かな、絶景かな
春の眺めは値千金とは、ちいせえ、ちいせえ
この五右衛門が目からは値万両
もはや陽も西に傾き、まことに春の夕暮れに
花の盛りのまた一入
はて、麗らかな眺めじゃなぁ
沙織は懐に手を差し込み、いつも後生大事に携えている長さ一尺余りの真鍮手綱太煙管をぐっと握りしめた。
その時、瓦敷きの上に数人の影が現れたのを、沙織は視界の隅に捉えて振り返る。
その連中は、侍の格好をしてはいたが、明らかに普通の侍とは異種の気配を放っていた。
侍の中を割って、一人の老人が前に出る。
小柄で枯れ枝のような老人だが、その眼光の鋭さは尋常ではない。
「娘、ここまでだ。敵ながらあっぱれと褒めてやろう。名は、名はなんという?」
沙織はにっと笑って答えた。
「あたしの名は、石川五右衛門。爺さんこそ名乗りな。」
「ほほう… これは驚いた。石川は一族もろとも、三条河原で釜茹でになったと聞いておる… これは失礼仕った、儂は名乗る程のものでは無いよ。」
「やれやれ。近頃の年寄りは礼儀を知らねぇから困ったもんだぜ。」
「これから死に行く者に、名乗る必要なぞかなろう。うぬは袋の鼠であることが判らぬか?」
「へへ、試してみるかい?」
沙織は背中に背負っていた包みから腰に伸びた取っ手を握り、勢いよく引っぱり上げる。
沙織の背中の包みが開き、ぱたんぱたんとバネ仕掛けで竹製の骨格が開く。
竹で出来た骨格には黒い幕が張られており、その形は大きな西洋凧に似たものが沙織の背中に出現した。
「忍法、鴉天狗!」
沙織は天守閣の屋根を一気に駆け下りる。
「でやあああああああああっ!」
たんっと沙織は屋根の端を蹴った。
沙織が背負っている折り畳み式のハングライダーは風を受け、ふわりと大坂城の空中を滑空した。
天守閣の屋根の上で、驚きながら手も足も出ない老人の一味を後目に、沙織の体は優雅に空中を飛んでいた。
「へんっだ、あばよ!」
振り向けば、大坂城の天守閣がどんどん小さくなってゆく。
沙織は人差し指を舐めてかざし、風の向きを確認する。
月明かりで照らし出された眼下に広がる大坂の町は、地図とは少し異なっていた。
沙織は大きく深呼吸をする。
顔からは今までの緊張が解け、その安らかな表情は本来の美少女の顔を取り戻していた。
安土桃山時代を騒がせた盗賊の頭目、石川五右衛門は、河内石川村で生まれた。幼名は五郎吉。
十七歳で伊賀に渡って南蛮僧に忍術を習い、その後百地三太夫の家に奉公する時、名を石川文吾と改める。
ところが百地三太夫の若妻と不義密通の挙げ句、金子を盗みその女と駆け落ちしたうえに、後にその女を捨てる。
その後、名を石川五右衛門と改め、大盗賊として名を馳せる。
文禄三年、伏見城に忍び込んだ所を取り押さえられ、京都三条河原で釜茹での極刑に処せられるまでの悪行三昧。
この刑罰は手下・家族を含めて釜茹でにされたと言われているが、生前の五右衛門の放蕩の中で、それぞれ腹違いの娘が三人いたのだが、当時の調査の手から抜け落ちていた。
その名はすなわち、
沙織
香織
詩織
これは決して、正史に登場する事はない。
沙織の眼下に長く淀川の流れが横たわっていた。
その時、ぼきんという異音が沙織の背中に伝わる。
「いっ!?」
沙織は顔を引きつらせ、恐る恐る異音のした翼の方を見る。
折れた骨格が元で全体のバランスが崩れ、折り畳み式のハングライダーの翼は、めきめきと音を立てて崩壊していた。
「ちょ… ちょっと待て!待ってったらあ!」
「わぁ!飛んでる飛んでる!沙織おねーちゃん、かぁっこいい〜!私の設計は完璧っ!」
満月の月明かり越しに見えるシルエットを眺めながら、詩織は木製の小型潜水艇の開いたハッチから身を乗り出してはしゃぎまくっていた。
「ねえ、詩織… あれって、落ちてるんじゃない?」
香織は見たままの不安を口に出す。
「あ、重量オーバー…」
詩織は静かに呟いた。
沙織の視界の中で、大坂の町がぐるぐると廻る。
偶に夜空の満月が迫って来たかと思うと、今度は炎上する大阪城の赤い炎が見える。
既に三半規管は悲鳴を上げている。沙織は気を失いそうになりながらも歯を食いしばって耐える。
「詩織の… ばかあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「まずい!急速潜行!詩織、沙織お姉さまの落下予測地点から一番近い場所に急いで!」
急いでハッチを閉めた小型潜水艇に潜り込んだ香織は指示を下す。
「イエッサー!潜望鏡深度でよぉ〜そろぉ〜!」
小型潜水艇はバラストタンクに注水され、潜望鏡とシュノーケルの先端のみが浮かび上がった状態まで水面に潜る。
未知の動力原によってスクリューが回転し、『竜宮の使い』は本流の淀川へと進路を取る。
沙織は背中に背負ったハングライダーの基盤を外す。
既に形が崩壊した凧は、沙織の背中から離れて明後日の方角に飛んでゆく。
沙織は腰に付けた緊急用の落下傘の紐を、勢いよく引いた。
ばんっという音と共に、沙織の体が一瞬持ち上がった。
「し、死ぬるかと思った…」
沙織はその美しい顔を蒼白にして呟く。
ふわりと風を受け、沙織を吊った落下傘は静かに降下してゆく。
その時、淀川の川面からしゅんと小さな花火が上がり、それはしゅしゅっと赤い光の放物線を描きながら消えた。
人気のない大通りに着地した沙織は、腰から紐を外し落下傘を捨てる。
先程の信号弾の発射地点に近い川縁まで走り、川面に飛び込む。
月明かりで金色に輝く水面を泳いでいると、前方に巨大な樽の姿が見えた。
樽を這い登り、上部に開いたハッチに滑り込む。
どたっと水に濡れた黒装束が重い音を立て、衝撃で樽の船体が僅かに揺れた。
「おっかえりなさ〜い、沙織おねーちゃん!」
樽の船体内部で、二人の腹違いの妹が沙織を出迎える。
「いてて… 詩織っ!てめーのお陰でなぁ、あたしゃマジで寿命が縮んだぜ!」
尻餅をついた沙織は、立ち上がりながら詩織に向けてがなり立てる。
「沙織おねーちゃん、少し太った?」
「うるせえ!えっくしっ!」
「沙織お姉さま、ほら早く着替えないと。」
香織は着替えの着物を抱え、沙織に手渡す。
上部のハッチを閉めた木製の小型潜水艇は、静かに潜行を始めた。
沙織は濡れて重く垂れ下がった黒装束を脱ぐ。潜水艇内部を照らし出す明かりの中、白くしなやかな体を惜しげもなくさらけ出し、香織に手渡された着物に着替える。
「で、首尾は?」
声のトーンを下げ、香織は聞く。
「まぁな、ざっとこんなもんよ。」
沙織は未だ帯を巻いていない着物の前を片手で摘みながら、大きな紫色の巾着を香織の前に突き出す。
「お疲れさま。お父様が欲していたのは、決して“千鳥の香炉”でも“楊貴妃の鈴”でもないの。これでお父様も喜ばれるわ。」
香織は巾着袋を受け取る。それはずしりとした重量感があった。
「へへっ、あのエテ公の慌てたツラが目に浮かぶぜ。」
沙織は着物の前を合わせ、腰帯をきゅっと巻く。
手ぬぐいで濡れた髪を拭こうとした時だった。
「あ、待って。沙織お姉さま。」
香織は沙織の髪に手を伸ばす。
「ん?どうした、香織?」
「忍びの者… 忍者がいなかった?」
「ああ、礼儀をわきまえねぇジジイがいたぜ。」
「そう、私も追跡されていた…」
香織は沙織の髪に付いていた、小さなイノコヅチの種子を指先に摘み、しげしげと眺めている。
「香織… それ、まさか…」
「ここまで追って来るとは見事ね… 相手は一筋縄ではいかないわよ。」
「シット!あたしとした事が迂闊だったぜ。」
沙織は香織の指先からイノコヅチの種子を取り上げ、爪の先を使ってぷちんと捻り潰す。
「なに?“ギギの腕輪”が?…」
静かな茶室にざわりと動揺の気配が走り、燭台の炎が揺れた。
「はっ、守衛の言によれば、下手人は大坂の城に火を放ち、天守閣より大凧に乗って飛んだと。」
燭台の明かりに照らし出された男は、学者のように聡明で品格のある顔を思案にしかめていた。
「それは何者じゃ?」
「石川五右衛門を名乗ったとか。まことに不埒な…」
茶器を挟んで男の向かいに座る侍姿の男が答えた。
「ふむ。そう言えば、ぬしは先代の石川とは面識があったと聞くが?」
「左様。一度術を交えた事がございますが、此度の盗賊はあの石川とはほど遠い小娘であったと耳にしてございます。」
「石川の血を継ぐ者が残っていたとて、なんの不思議はなかろう。」
正面に座った男はずいと膝を寄せる。
「殿、“ギギの腕輪”とは如何なる宝でございますか?」
侍姿の男の問いに、殿と呼ばれた男はゆっくりと口を開く。
「わしとて、詳しくは知らされていない。何でも異国から持ち込まれたもので、対となる“ガガの腕輪”と合わされば、天下を手にする力を授かると言う。但しその片割れの所在は判らぬらしい。」
「何にせよ捨て置けぬ。このわしと才蔵で取り戻して参ります。」
「まて、佐助。ぬしらは今は動くでない。景雲斎を呼べ。」
「景雲斎を…」
佐助と呼ばれた男は首を傾げる。
「此度の件、景雲斎に任せる。確か太閤さまの身辺に忍んでおったと聞いたが…」
「ここに控えております… 左衛門佐さま。」
隅の闇からふっと声が流れた。
燭台の僅かな明かりが及ばない茶室の隅、闇と同化した黒い影がゆらりと明かりの前に現れた。
何時からそこにいたのか。それは枯れ枝のような小柄な老人だった。
佐助は老人を睨みつける。
「景雲斎、いつ城から帰って来た?」
老人の突然の出現に動揺する風もなく、佐助が殿と呼び、老人が左衛門佐(さえもんのすけ)と呼ぶ、この聡明で品格のある顔立ちをした男は静かに聞いた。
「先程でございます。幸いにして、その下手人とやらに会うて参りました。まさか大凧で飛ぶとは、このわしでさえ思いの外でしたが…」
「顔は、見たのか?」
従五位下左衛門佐。すなわち、戦国の智将真田幸村は錆を含んだ声で聞く。
「しかと。城に爆薬を仕掛けた娘も。その大凧で飛んだ娘は途中まで追うてはいたのですが、感づかれたようでございます。」
老人は指先に小さなイノコヅチの種子を摘んでいた。
この景雲斎という老人は、自らの気を込めたこの小さなイノコヅチの種子を相手に飛ばし、衣服等に付着させて何処までも相手の気配を追う術を使うという。
噂は本当だった。同じ甲賀の出身である佐助ですら、初めて目の当たりにした術だった。
その時、景雲斎の背後の闇に、幽鬼のように四人の影が湧いた。
「里より精鋭を連れて参りました。我ら五人にお任せ下さい。必ずや太閤様の御宝と、きゃつらの首をここに並べて進ぜましょうぞ。ふふ… 美しい娘たちであった。殺めるにはちと惜しい気もしますがな… ふふふ…」
景雲斎の含み笑いが茶室に響く。
…相変わらず、薄気味悪い奴らよ…
佐助は胸の中で呟くと、小さく舌打ちをした。
To be continued …
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